7日目

文字数 838文字

「評価を下すのは夜七時。思う存分、今日を楽しんでね」

そう言われても、起床したのが昼下がり。今更どうこうする気もないので、普段通りに過ごすことにする。

窓を開ければ舞い込む涼しい風。青空が綺麗だ。水道をひねって喉を潤す。染み渡る水の味。シャワーを浴び汗を流す。爽やかで気持ちいい。お気に入りの板チョコを割り、彼とシェアする。甘くて美味しい。彼に誘われ、ベッドにカラダを埋める。ああ、よかった。彼との出会いが人生失敗の結果であるなら、失敗も悪くない。



僕は無事に一週間を生ききった。

あっという間に夜の七時を迎えた。



「キミの評定を言い渡すね。この結果に対し異論は認めず、変更も取消も受け付けないよ」

「はい」

「では。キミを有用な研究対象に認定する。よって、特別に選択肢をあげよう」

「え……」

「キミは例外の宝庫だ。このまま評価を延長する事により、91.3%の確率で評価精度の向上が望める。であれば、キミを生かしてそばに置き、評価を継続することは、ボクの、ひいては国の財産になり得るとの結論に至った」

僕を思っての延命ではないし、正面切って「例外」認定されるのは手放しで喜べるものではなかったけれど、彼を止めずに続きを聞くことにした。

「けれど、キミが望むなら、このまま天国に導いてあげることもできる。どちらを選ぶもキミ次第。キミは、自由。そうだろう?」

僕は言葉に詰まる。今日という終わりの日を見据え、覚悟は決まっていたはずだ。しかし、降って湧いた選択肢が纏う困惑の渦に巻き込まれた。

「ああ、そうだ。キミが後者を選んだときのために、一言伝えておくね」

「はい」

「ボクはキミといて楽しかったよ。それと、ボクは知ってるよ。大きな世界に貢献するより、隣にいる大切な人を幸せにすることのほうが難しいことを」

「………………」

「さあ、教えて。キミはどんなキミを選ぶの?」





「僕は」





僕は決して後悔しない。他の誰でもない自分の意思で決断したのだから。

僕は自由だ。

自由。それはこのどうしようもない世界への、反逆の狼煙。

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