第4幕
文字数 1,513文字
「右に同じ」
竹光はそう同意して、真澄の左肩に右手を添えると、軽く頷いてみせた。
そうして三人の責めるような眼差しが、蔦彦一人に集約されていく。
すると、蔦彦は堪り兼ねたように、両手を軽く挙げてみせた。
「頼むから、三人で束になって、僕を睨むのは止めてくれないか。
勿論、晶には、何から何まで包み隠さず、話そうと思ってたよ。
だけど、僕らの同盟に加入するかどうかは、最終的には、晶自身が決めるべきだと思ったんだ。
晶をここに連れてくる前に、僕から全て打ち明けてしまったら、晶と僕との間の合意になってしまうだろう?
それだとフェアじゃない気がしたんだ。
やっぱり、四人で顔を合わせた上で、話し合うべきなんじゃないかって、そういう結論に達したんだ」
「…‥それでも、僕には話の十分の一も見えて来ないんだけど。
そもそも、『銀の翼秘密同盟』って、一体何の集合体なのさ?」
晶の声音には、自分一人だけ事情が呑み込めていないもどかしさが、苛立ちとして滲んでいた。
三人のうち、一番手で説明を買って出たのは真澄だった。
「『銀の翼秘密同盟』っていうのはね、簡単に言ってしまえば、物語をリレーしていくサークルなんだ。
一人目が着想した物語を、引き継いだ二人目が、そこに色々と好き勝手な肉付けを加えて、三人目に引き渡す。
そうしたら、また色々と好き勝手に膨らませた物語を、四人目に引き継いでいく。
そうやって、四人で順繰りに回していって、一つの壮大な物語を創り上げていくんだ。
ところで、僕らのこの同盟は、一年半前に発足したんだけど、発足当時のメンバーの一人が、父親の仕事の都合で、遠方に転校することになったんだ。
それが半年くらい前のことかな。
ともかくそんな理由で、欠員が出てしまったものだから、僕達は新たなメンバーを補充するか、それとも三人で続行するか、選択の淵に立たされた形になったんだ」
真澄はそこで話を区切ると、選手交替とばかりに、竹光の右肩にタッチした。
竹光は心得顔で頷くと、話を続けた。
「そこで僕達は試しに、三人でも物語が編めるかどうか、やってみた。
ところが、実際にやってみて分かったことだけど、一人が抜けた穴というのは、思っていた以上に大きいものだったんだ。
だけど考えてみれば、それまで四人掛かりで回していたサイズの輪を、三人で回すことになったんだから、途中で頓挫するのも無理はないんだよね。
それで、やっぱり欠員を補充しようということになって、新たなメンバーを募ることになった。
だけど、当然のことながら、誰でもいいってわけにはいかない。
そこで、僕らの同盟に相応しい人物を見付けるためには、どうすればいいのかを話し合って、幾つかの条件を設定することにしたんだ」
竹光はそこまで話し終えると、蔦彦に向かって、優雅に一礼してみせた。
まるで、高貴な姫君にダンスを申し込む際の、貴公子のような身振りで。
蔦彦は、苦笑しながらそれを受け、頷きながら、口を開いた。
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・・・ 少年宇宙へようこそ~ハーモニーが奏でる宇宙〈全10幕~第5幕~〉~へと続く ・・・
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