第5話(8)

エピソード文字数 1,930文字

「よっ、ミラルぅ。久し振りだなぁ」
「た、タナキに、リョウスケ……。魂を失ったキミたちが、どうして……」
「オレたちゃ、保険――ワケあって、一時的に魂が復活したんだよぉ。こんなユニークな術を持ってるヤツがいるとは、夢にも思わなかったぜぇ」

 術? この二人は、怒りと怨みをもとにして降臨していなかったのか。

「……そんなコトが、可能でしたのね。誰がかけてくれたんですの?」
「そこは、禁則事項だぁ。それだけは言えない約束なんだよぉ」
「まっ、その話は置いておいてだ。ついにやったな、ミラ」

 リョウスケと呼ばれたロン毛さんは、もう一度ガレにヒップドロップをしてから麗平さんの肩を叩く。
 記録読者ガレ、もう虫の息。元セブンナイツ、気持ちは分かるが容赦ないっス。

「みんなが土台を作ってくれて、新しい仲間が力を貸してくれたからですわよ。タナキ、リョウスケ、センキュですわ」
「ははっ、そう言って貰えると嬉しいぞ。なあタナ?」
「ああまったくだぁ。その台詞と笑顔で、苦労が吹っ飛んだぜぇ」

 タナキさんはガレの額に踵落としを叩き込んでから舞い戻り、堀の深い顔に笑みを浮かべる。
 元セブンアイツ、気持ちは分かるが以下略。

「いや~、満足満足。終わりよければ全てよしだ」
「何もかも、スッキリしたぜぇ。ミラル、オレらの分まで人生を謳歌してくれよなぁ」
「うん……っ それが何よりの手向けになるのなら、ウチは精一杯生きますわ……!」

 麗平さんは二人と抱き合い、感泣する。
 これは――俺の記憶に一生涯残しておきたい、感動的なシーンだな。背後でガレが、ビクンビクンしていなければ。

「………………ふぅ、さて、と。お別れの時間だな」
「短い間だったが、やりたかったことが全部できたぁ。今度は、心置きなく消滅できるぜぇ」

 彼らは晴れやかに頷き、唸っているガレをうつ伏せにする。そしてリョウスケさんは両脚を取ってプロレス技のサソリ固めを決め、タナキさんは顎を取って上半身を反らせるキャメルクラッチを決めた。

「ぁべ……。べべ……。びへ……」

 アンタら、もうそろそろヤメなよ。ホント気持ちは分かるんだけど、ソイツもう瀕死だから。

「おっとそうだ。そこの男子くん」

 ぁべぁべ言ってる神様を眺めていたら、リョウスケさんに声をかけられた。
 はい? なにかな?

「悪いんだけどね。キミに、伝えておいて欲しいメッセージがあるんだよ」
「お、俺ですか? なんでしょう?」

 初対面の戦士から、伝言かぁ。誰に、なんて言うんだろう。

「明日の午前8時半ごろに、その時立っている場所で叫んで――ああいや、なんでもないぜぇ。やっぱりメッセージはなしでいぃ。リョウスケ、ぼちぼちお暇しようかねぇ」
「そうだな。…………もしも聞こえてたら、受け取ってくれ。わざわざオレらを選んでくれて、ありがとうな」

 二人は上空に向かって謝意を示し、光の粒子となってふわりと霧散。最後にベキベキ、ボキボキという不思議な音(なんの音なのかな? わかんなーい)を残し、無に還った。

「……うーむ、リョウスケさん達は何を言いかけてたんだろ。俺に、伝言能力はないんだがなぁ?」
「その時間従兄くんの身近に居る人が、復活の術を使ったのかしら……? 思い当たる人物は居ない?」
「ううん、そんなのいるワケないでしょ。全員フツーだよ」

 友人プラス親戚知人ご近所さんにも、特殊な方はいない。兎瑠ちゃんや育月など、少々変わってる人はいるけどね。

「じゃーじゃー、どーしてゆーせー君だったのかなー? 気になるよーっ」
「俺もそうだが、このお話はここでお仕舞いにしましょうや。ボロ雑巾――じゃなくて、ガレが消滅するからね」

 ヤツの頭上にある球体が粉々になり、彼の身体が下半身から消えていっている。知らない間に死んでたってのは可哀想なんで、みんなで知ってあげよう。

「ひ、ひぶ……。ぉ、べ……。に、ん、げん…………くん……」

 とりあえずジーッと見つめていたら、非常にゆっくりと口を動かしだした。
 おっ。最期になにか言いたいらしい。

「はいよ。なーに?」
「ボ、ク……。は、ね……」
「ほい」
「恨みを、買う、こ、と、は、したら、ダメ、だと、き、づい、た……。君たち、は、おなじてつ、を、ふま、ない、よう、に、してね…………」

 複数の時代で猛威を振るった、『記録読者』ガレ。彼は千悔万悔の念を抱き、消滅したのだった。


 ――8月17日午後7時59分、任務完了――。
 俺達は世界を救い、改めて悪事を働いてはいけないと思いました。
 いやホント、ロクなことにならないね。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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