第21話  兄弟(姉妹)の絆 1

エピソード文字数 4,221文字


 ※


 本日土曜日。高校生活最初の休日である。

 休日といっても、今日は聖奈が家に来るし、夜はバイトなのであまりゆっくり出来ないが。


 明日は何の予定も無いので、明日ゆっくりすればいいだろう。


 

 本来なら、入れ替わり人間にとって休日はマジで休日なのである。


 この日だけはサイクルを計画的に行うことで、朝に女になったり、ある程度自由に入れ替わる事が出来る。


 つまり、男で学校に行かなければならない縛りが無い分、時間的にも余裕があるわけだ。


 なので平日よりもリラックスしたペース配分が出来るので、学校の休みは俺達にとって貴重な時間なのである。


う~ぬ

 俺は朝からずっとパソコンと睨めっこしていた。


 その画面は、ゆーちゅーぶの作業用BGMと、テキスト画面。そして某サイトに載せてある自作小説のページを開いていた。



 何を隠そう。俺は自称小説書きである。

 

 と言っても、駆け出し感半端無い雑魚レベルだ。

 それはアクセス数やポイントが物語っており、家族にも見せられる内容ではない。


何が悪いんだろうか……

 やっぱり文章力というか、表現力不足なのは分かってるが、ジャンルもかなり特殊だし。

 超純愛SFモノなど……受けないのだろうな。


 書いてる俺自身はとても楽しいし、ワクワクしてるし、書いてて自分で泣けるシーンまであるし、詰め込みすぎなのも分かってるが……




 あぁダメだ。筆が止まっちまった。

 こういう時は無理に書かないこと。  


 

 ちなみに俺がこんな小説を書いてるなんて誰も知らない。

 ある意味、入れ替わり体質よりも人に知られてはならないトップシークレット。


 俺の心の奥底にある最後のフロンティア。

 そこは俺だけのワンダーワールド。 


 

 こんな内容の恋愛小説など……誰にも知られてたまるか!



 さて、リビングに行くと凛が一人でソシャゲーをしている。


 俺はカップラーメンを食べた後、凛と一緒にゲームを始めるのだった。

あぁ~~! もうヘタクソだよこのメンバー
また二人で討伐かよ。時間かかるんだよな
突っ込みすぎなんだよ。お兄ちゃんの回復範囲で戦えば大丈夫なのにぃ~~

 

 こういう時の凛の口は非常に悪い。まぁお前の気持ちも分からんでもないけど。


 ちなみにどんなゲームかというと、他のプレイヤーと協力してボスをやっつける的なファンタジーゲームだな。そんなソシャゲーに夢中になってると、インターホンが鳴る。 



 時間を見るとまだ午後一時だったので、聖奈ではないと思った。まだ早いからな。

 郵便か? 何かの荷物だろうか。親父が何か頼んだのかな? 

一回やめようぜ。時間かかりすぎる。一回クリアしたからいいだろ?
でも~もっと周回したいよぉ!
はいはい



 玄関のドアを開けると、そこには聖奈が立っていた。

 ってかちょっと待てよ。早すぎねーか?

あれ? 何で男なのよ

 第一声がこれだった。

 笑顔だったのは一瞬で、不満顔を見せられても困るぜ。

いやいや。待てよ。入れ替わるにはまだ早すぎるんだよ。


今日もバイトがあるからな。ってか来るの三時頃って言ってなかったか?

用事が早く終わったからよ。お邪魔するね

 勝手に俺の家に侵入するのは昔と変わらない。

 

 しかし聖奈が俺の前を通り過ぎるとき、微かな香水の匂いが漂ってくるので、少し驚いた。



 あぁそうか。聖奈も俺も高校生だからな。外に行くならそ~いうのも付けるってか。

 高校ではもっとナチュラルな匂いだったので、あえて何も言わなかったが。


 それにファッションだって昔とは全然違い(当たり前だが)大人びたような白のワンピースはやたら胸が大きく見えるような感じで、スカートの丈もかなり短いぞ。



 あぁ。こういう露出の多い服は俺は絶対着れない。

 とは言うものの、俺もそんな服を着なければいけない年頃なのだろうか。そう思うと気分が滅入ってくる。



 などと聖奈ウォッチングをしながらリビングに案内すると、凛が元気に挨拶する。



聖奈お姉ちゃん。久しぶりっ!
……凛ちゃん?

 今日。聖奈が来るのは凛にも言ってある。

 そして記憶が無いのも伝えてあるから安心しろ。

僕の事。覚えてない?
 暫く凛をじっと見る聖奈だったが……
……ごめん。私……

 やっぱダメだったか。

 聖奈は断片的に覚えてるかも知れないと言ったが、本人を見てもダメなら絶望的か。


 まぁ人を見て思い出すとか、どこかの小説みたいな奇跡は起こらなかったらしい。

気にしないでね。僕は聖奈お姉ちゃんの事。ちゃ~んと覚えてるからね
ありがとう。凛ちゃん……
まぁしょうがない。これからの事はちゃんと……覚えておけばいいだけだ
うん……
 前向きに行こう。俺達が言えることはそれだけだ。 





 ※


  

 

 今日聖奈が来た理由とは、以前車の中で話をした時にショックのあまりギブアップした、過去のお前がやった悪事についてだった。



 平八さんの夢物語と、真実とのギャップにダウンした聖奈は、数日でこれを克服し、全てを知りたいと再びリングに上がったのだ。



 それに証言が俺だけじゃ不満らしい。

 じゃあウチの凛に聞けばいいだろうという結論に達し、家に来た訳だ。

本当。なの……?

うん! すっごいおちんちん好きだったよ。ずーっと見てたもん。


それにきんきんをねスリスリして引っ張ったり、翼みたいにパタパタするのが凄い好きだったんだ

そんな……

 既に凛の猛ラッシュを受けてグロッキーな聖奈だった。


 ちなみにこの話は俺も伝えたんだが、頑として「信じられない」と認めなかった。

 私がそんな事をするはずが無いと、そんな態度だったからな。

な? 本当だろ? だから言ったのに
…………

 おっと。こういう時の聖奈は弄らない方が良い。


 何言っても難癖付けられてキレるからな。余計なことはこれ以上言わないが吉。

あとね。女の子の時、おっぱいいっぱい吸われた。ちゅーちゅーされた

 一応聖奈にも言っておいた。俺よりも凛の方が容赦ねぇと。



 俺は聖奈に気を使うようにオブラートに包む感じで教えてやってるが、凛は剛速球のストレートで攻めてくる。まぁつまり正直でピュアって事だ。

あぅ……うぐっ……

 聖奈はもうヘロヘロだ。既に顔は地に落ち、縦線だらけである。


 こりゃもうリタイアだろ? 

 

 そう思っていると、パッと顔を上げる聖奈は、まだ食い下がるのだった。

待って凛ちゃん。あのね。お姉ちゃんと遊んでて……楽しかった思い出とか、ない?
う~ん。平八おじさんに色々連れてってもらったくらいかな

 それはもう俺が教えてやった。貴重な聖奈との良い想い出だからな。


 平八さんに色々な場所に連れて行ってもらった記憶がある。遊園地。海。山。買い物とか、あと、ゲームを沢山やらしてもらった。


 今思えばお前の家は金持ちだったから、そういう意味では俺達はとても幸せ者だったのかもしれない。


そ、そう。じゃあ……他に遊んでて何か……ある?
えっとぉ……

 凛は考えながら俺の膝に座ると、聖奈に向き直った。


 顔を左右に揺らし考え込んでいるようだったが、出した結論は……

う~ん。ないかな?
だろ?


 俺は凛に同調すると、聖奈はガクっと顔を落としてしまう。

 いや。マジで無いんだよ。


 もしあったとしても、お前がやった悪事で俺達の記憶が上書きされちまってるんだよ。

でも。良いお姉ちゃんだったよ。僕達の事内緒にしてくれてて、遊んでくれたし
そうだな。俺達は普通に遊べないから。そういう意味ではとてもありがたかった
…………

 正直な気持ちだ。


 入れ替わり体質を知り、内緒にしてくれて遊んでくれる。


 聖奈が海外に転校してから俺は、お前の存在が如何に大きかったのかと、痛感させられたものだ。

お兄ちゃん。そろそろいい?
そうだな。お前はこの時間からでも大丈夫だろ

 凛は俺の方に向き直ると、俺の身体を抱きしめて目を閉じ、動かなくなってしまう。やがて目の前に見える凛の髪の毛が徐々に伸びてくると、抱きしめる身体が変化していくのが分かった。





凛ちゃん……

 そう。凛は聖奈の目の前で入れ替わりを行ったのだ。

 女性の姿になった凛は聖奈に向き直り、笑顔を見せる。

お姉ちゃん。華凛だよ。久しぶり

華凛ちゃん。私……


やっぱり思い出せないけど、妙に胸騒ぎがする。楓蓮の時みたいに

そっか。俺達が女の時に何かあるかもしれないな。


まぁいい。これから仲良くすればいいだけだ

うん……ありがと

 これは俺達が一緒にいる事で、聖奈の力になれるかもしれない。

お兄ちゃん……んっ
華凛が俺の頬にキスすると「えっ?」と聖奈が驚く。
あんたたち……兄妹でしょ? 何で……
え~? キスするよ。男の子だとしないけど、女の子だとするよ
聖奈と同じく、華凛までハテナマークを出してやがる。
まぁそれだけ仲が良いって事だよ
 俺だって華凛には頬キスはするぞ。ただし楓蓮の時に限るが。
ちょ。こら。やめろ
あはっ!

 華凛のキスが止まらん。


 まぁ今やってるのは、聖奈が驚いてるのを面白がってやってるに過ぎない。

 いつもはこんな風にじゃれあったりしないぞ。

仲がいいのね。良い事だわっ

そう解釈してくれるとありがたい。


確かに他の家族はここまでのスキンシップはしないだろうけど。それも分かってる


 俺と華凛は生まれた時からずっと……入れ替わり人間として過ごした強い絆があると思ってる。

 頬にキスするのも兄弟としてのスキンシップの延長線上だ。



 唯一の兄弟。世界でただ一人。

 入れ替わりの苦悩を分かってくれる。唯一の理解者でもあるのだから。





 そして聖奈。お前も……

 俺達の正体を知る唯一の人間。それがどういう事なのか。


 今日はお前にちゃんと話さないといけない。

ちょい洗濯する。華凛。お姉ちゃんと話してやれ
うんっ!

 まぁその話は最後でいいや。

 今は、華凛の話を聞いてやってくれ。

 



 俺は洗濯物を取り入れようとベランダに出ると、下に黒塗り高級車が見える。


 あっ。そういえば……

平八さんも呼べよ。ずっと待たせるのは可哀想じゃない?
いいの?
もちろんだって。あの人も……俺達も知ってるんだから
わかった。ちょっと呼ぶね
平八おじさん? うわぁ懐かしいな
あんま変わってないからビックリするぞ

 さぁて。家の事を色々やってる間に、三時くらいになりそうかな。部屋の中を見ると華凛も楽しそうに喋ってやがる。


 

 うん。良い感じだ。

 引っ越す前とは全然違う環境に、俺は心底良かったと、そう思った。



 願わくは、こんな生活をずっと続けていきたい。

 そう思いながら、俺は洗濯物を取り込むのだった。



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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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