詩小説『横浜ふーこ』3分でリアルが見える。全ての女性へ。

エピソード文字数 1,120文字

横浜ふーこ

ヴァージンは汚れない?

なにそれ笑える。おんなじモン食べてんのに。おんなじ標的狙ってんのに。私が売るのは身体だけ、心じゃない。

冷たいタイルへ、肌寒い身体乗せて、見上げたの、星の王子様。ゴムを躊躇なく摘めるようになった自分。少しだけ、怖いだけ、それだけ。

普通の女の子だと思ってる私が、「普通の女の子って逆になに?」ってムキになってる。だって普通の女の子だったはず。

十七で制服を脱ぎ捨てた私が、家出した夜に迷い込んだ歓楽街で、見つけた唯一の居場所はネオン、たったひとつの天職がこれ。

「いい仕事あるわよ」なんて開いた扉はオートロック。千と千尋の神隠し、私の名前は神隠し、たった三文字、今日から私の名はふーこ。

若さだとか、素人っぽさだとか、その美しさで客がつくのも、ほんの一瞬。横浜のサイクルは目まぐるしい。横浜の女神は飽きっぽい、流行は廻り続ける。

かつての嬢王は言った。「ふーの世界は旬が二十三まで。あっという間に忘れられる。私という女が居たことも」

そんな言葉も、排水口に溜まる髪の毛をすり抜けて、流してしまった。脱いでは着るを繰り返す間に、濡れては拭くを繰り返す間に。

私は知っている。身体が満たされればそれで満足ではないことを。リアルでは癒すことの出来ないリアルを癒すべく。トトロも見えなくなった大人が最後に見る最終形態の夢物語がここだということを。

散りゆく花、枯れゆく花を見届けて。水も滴る、まだ青い果実を迎え入れて。成り上がったわ、ドブ川の月。そして今夜から私が嬢王。横浜ふーこは伝説となった。

横浜の歓楽街、そこが私の住所で、そこが私の庭となった。弱さを見せた時に私は終わる。

そして、横浜ふーこは消えた。客の男の女になるのだ。

「なぁ、なぁ、横浜ふーこって今、町外れの裏通りでスナックやってんだって」

「あ? 誰だっけそいつ」

「お前よく指名してたじゃんよ」

「あぁ、そうだっけ?」

「なんでも、男に店出すとかで金を預けて、経営が上手くいかずに火の車よ。負債だけが膨れ上がってよ。仕舞いには借金残してトンズラされる始末でさ」

「そんなことより、遊び行くか。ナンバーワンのさ、芹華なんてどうよ?」

「お前、ほんと看板娘好きな」

横浜を抜け、町外れの裏通り。『スナック 文』。

「あら、お嬢ちゃん。見かけない顔だね」

「ここで、働かせてください。何でもしますから。私、家を出て来ました」

「見かけない顔だね。訳アリかい?」

「母は男作って家に帰って来なくて、父は私に暴力を」

「あんた、いい目をしてるね。それよりも」

「えっ?」

「良い仕事あるわよ」
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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