第1話 母上の言葉

文字数 1,037文字

私は、この世にただ一人の神の使い手だっ!
アール民族の危機を救うべく、今日も私は立ち上がる!

〜第1話 母上の言葉〜
母上に言われた最後の言葉。
それは、当時10歳の私にとって、(いや、10歳じゃなくても)衝撃的だった。
「いい、よく聞きなさい。」
「はい。」
「あなたは、神の使い手よ。私には、視えるわ。」
母上は青白い顔をのまま、くすりと笑った。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ん、今、なんて言った?
聞き返そうとしたときには、もう、事切れていた。
「はーーーーーーはーーーーーーうーーーーーーえ!ねえ、、どういうこと?ねえ、ねえ、もうっ、お母上ったら。」
きっと、私の叫び声を聞いた人は母を亡くして悲しがっているのだと思っただろう。
そうじゃない。
私は、意味深な言葉を残して逝ってしまった母上に、半ば嘆いていたのであった。

亡くなった母の体を日なたへ寝かせて成仏の舞を踊り、日が沈んでから土に還して埋葬し一連の儀式が終わると、あの意味深な言葉の意味を知るため、私は即座に父のもとを訪ねた。
さっさっさ。部屋の前で印を組み、ひざまずく。
「こんばんは、父上。夜遅くに失礼致します。サナです。相談したい事がございます。入ってもよろしいですか。」
「サナか。入れ。」
「はい。ありがとうございます。」
許しが出たので、そっと入る。
「どうした。何かあったのか。」
「はい。母上のことで、相談に来ました。」
「ほう、ほう。」
「母上が亡くなる時、こっそりと私だけに伝えてくれたことなのですが、その。。。。。。。」
「なんだ。ぐずぐずせんで、話してみろ。」
「、、私が神の使い手だというのです。」
さっと、父上の顔が変わった。
私、変なこと言っちゃった?
「いやいやいやいや、あの、私の聞き違いかもしれないですし、あの」
「いや。とても稀なことではあるが。やはり、うむ。そうなのだな。となると。ああ、そうか。」
ぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそ。
「父、上?」
「お前が、神の使い手なのは、リシャが言ったのなら、間違いはない。ただ、我自身、詳しいことはよくわからないから、明日、長老様のところに行くと良い。答えられなくて悪いが、もう、寝ろ。」
「はい。」
印を組み、おやすみなさいの挨拶をすると、私は静かに部屋を出て、今では1人になった寝室に閉じこもった。
「はああああああああああああああ。」
大きなため息が出る。
結局、あまり謎は解決しなかった。
父上もよく分からないことだったみたい。
もやもやを抱えたまま、私は眠りに落ちた。











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