第10話 プッツン少女かよ - 5

文字数 3,491文字

 くそっ、偶然とは言え、ササラのお子様パンツを拝まされる事になろうとは夢にも思わなかった! 一生の不覚だ! だが、ロ×コ×では無いこの俺に対してのそんなお子様パンツ攻撃など、まったくもって全然完璧に通用しない! ノーダメージだ! 残念だったな、ササラ! ふははははっ。
 しかし、どうせ拝むのなら、上空のミリアのおパンツをなんとか拝みたい! ぜひ拝みたい!!
 レオタードっぽいあのコスプレ制服でも下からのアングルならば十分に堪能は出来たであろうが、如何せん今は鋼鉄の装甲服の中だ。この双眼鏡って装甲服も透視出来るような凄い機能って付いて無いんだろうか?
 双眼鏡の表面には色々と宇宙文字っぽい説明らしき物が書かれているのだが、残念ながら俺に読める筈も無い。しかし図形っぽい物が描かれているので何となく理解は出来る。いじくり回してみたが、どうやらこの双眼鏡には透視機能は搭載されていないようだ。
 どっかの星の双眼鏡メーカーめ、機能不足な役立たずを作りやがって! ……あ、いやしかし、スゲー科学技術を持つ宇宙人の事だから、もうちょっと大型の双眼鏡とかならば装甲のその向こう、もうちょっと先のその向こうの隠された禁断の花園までもが見通せる、そんな夢の双眼鏡を作っている可能性も有る! きっと有る! 一般に市販されていないとしても軍事用とか、もしかして法律に触れる違法な奴とかな!
 あああっ、手に入れてえー! そんなの有ったら絶対手に入れてえーーーっ!!
 何とか手に入れる方法はないものだろうか。ミリアには頼めないよな。何に使うのかと問い詰められても答えられない。いや、そんなの答える前から使用目的など気が付かれて変態呼ばわりされるに決まっている。なんとか別の宇宙人と知り合えたらなあ。
 あ、宇宙科学じゃなくても魔法なら同じような効果のある魔道具とか有るかもしれない。これは有る! 絶対有る! なんせ魔法だからな。宇宙の超科学と同じで、何でも有りな気がするからな!
 と、思うんだがササラには頼めないよな。お菓子の山でも与えてやれば、ホイホイと差し出してくれそうな気がするんだが、この状況じゃあな。なんとかササラと和解出来るとか、違う魔法の国の異世界人と知り合うとかじゃなければ絶対に無理な夢物語に終わるよな。うん、無理だな。

 だがしかーし! 俺には脳内変換能力がある! 今まで誰にも明かした事の無かったこの俺の隠された秘密の特殊能力を使えば、そのような道具を使わずとも同等の効果は得られる!! いや、同等以上だっ!
「見よ! この俺の必殺能力! 超絶脳内変換能力の凄まじさを!」
 この能力にかかればたとえどんなに厚着をしていようとも、女子は全員全裸に変わる!
 俺は双眼鏡で空中の装甲戦闘服を探し求める。見つけた! ロックオン!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーっ!!!!!!」
 湧き上がれ! 湧き上がるんだ、俺の魂のオーラよ!
 俺は意識を装甲戦闘服の下半身に集中させ、全能力をリミッターが焼き切れるまで解放する。
「ふはっ、ふははははははははははははははははははははははははっ」
 見える! 見えるぞ、その分厚い装甲板の中、その更に奥のその向こう! あと少しだ! あと少しで秘密の……。
【『罰野君、さっきから何大声出してるの? どうかした?』】
「ミ、ミリアしゃんっ!」
 俺はインカムからのミリアの声にビクっと驚いて声が裏返る。巨大に膨れ上がった俺の特殊能力は跡形も無く一瞬で霧散する。
「あ、いや、別に全然何でもないですよっ。ちょっと足を滑らせて転んじゃって声が出ちゃっただけですよっ」
【『そうなの? なんだかブツブツ言ってたり、笑っているような声が聞こえた気がしたんだけれど』】
「気のせい気のせい。それはミリアの気のせいだよ」
【『そうかしら? まあいいけど』】
「それよりも戦況はどうなんだ? ササラはどうした?」
【『ササラちゃんの操る武器類は粗方撃破したけれど、まだ抵抗をやめないわ』】
 へー、スマホもどきの銃で俺の足元を狙った時には危なっかしかったけれど、装甲戦闘服だとそんなに命中するんだな。自動照準とかなのかな?
 それにしても何だかさっきからミリアが喋っているバックから音楽が聞こえて来るなあ。えっと、これはなんだっけ? ……そうか!
「ミリア、ひょっとしてアニソン掛けながら戦ってる?」
【『あら、聞こえちゃった? 燃えるアニソンをガンガン掛けて戦うと、アドレナリンがドバドバと大量分泌されて超絶ハイな気分になるから調子がいいのよ』】
 オタ宇宙人だ。
「あ、じゃあミリア、あまり話をしていると気が散るだろうから、これで会話は終了するよ。怪我しない程度に頑張ってくれ。出来ればササラを大人しくさせて貰えるとありがたい」
【『分かったわ。曲が五月蠅いだろうから、こちらからの音声は切っておくわね。何か有ったら何時でも声を掛けて来てね』】
「ああ、じゃあ健闘を祈ってる」

 やっべー、インカムの事すっかり忘れてたぜっ! 変な事口に出してなかったか? 俺。
 しかし、脳内変換能力で、あともうちょっとでミリアの奥の奥まで見られたというのに惜しい事をした。最大出力でのこの能力の解放は一日一回が限度だ。残念だが今回は諦めよう。



 俺は双眼鏡で異世界魔法対宇宙超科学の二人の戦いを見守る。今度はズームの倍率を下げたから、たとえパンチラが見えようともさほど気にはならない。
 ササラの魔導兵器がブンブンと飛び回ってビームやミサイルを撃ち出している。あれ? さっきミリアは粗方撃破したって言っていたが、最初の時とそれほど変わらない武器の数じゃないか? ササラが新しいのを出したのか?
 どっから沸いて出て来るんだっ、そんなに大量の武器が!

 しかし、ササラの武器も凄いが、ササラ自身の生身の攻撃能力も凄い。装甲服に集中砲火を浴びせた後、ミリアの攻撃を躱しながら空中を縦横無尽にくるくると素早く飛び回ってミリアの後方に回り込み、装甲戦闘服の頭にキックをぶちかました。ササラは蹴り上げた勢いでそのままくるっと後方に一回転の宙返りをしてその場に静止する。装甲服は前方にガクンと大きく傾き、一瞬失速して墜落するのかと思って肝を冷やした。
 スゲーなササラ! なんちゅーアクロバティックな動きをするんだ。
 だが、さっきのキックは小学生の力で打ち込めるような生ぬるいお子様キックとは訳が違うぞ。蹴り込む瞬間にでかい魔法陣が浮かび上がったから、強烈な魔力か何かを込めた必殺の一撃だったのだろう。
 ミリアも負けてはいない。瞬時に態勢を整えると、装甲戦闘服の右腕に持った機関砲と左手に持ったビーム砲を同時にササラに向けて連射する。いわゆるタミネ撃ちって奴だ。
 ミリア、いくら何でも小学生のササラの生身の身体に向かってそんな攻撃しちゃ駄目だろう! 肉片も残さずにバラバラの塵になって消滅しちまうぞっ!
 と思ったが、ササラは全方位に幾つもの魔法陣のバリアを張って連射の爆発を受け止めている。
 スゲーっ、スゲーぞササラ! 今の連射で完全にササラは天国へ旅立ったと思ったぞ!

 いくら俺の中の大魔王を消滅させようと思って俺を狙っているとは言え、小学生の小さな女の子が消滅して死ぬ瞬間なんて俺は絶対見たくは無い! どうにかして和解出来ればそれに越した事は無い。どうにかならん物だろうか。
 俺は二人の戦いの最初の方は見て無かったから、ミリアはササラが魔法陣バリアで防御出来るのを知ってて連射を撃ち込んだんだろうな。一瞬、ミリアはトリガーハッピーなヤバすぎる奴だったのかと勘違いしちまったよ。ごめんな、ミリア……。


 それにしても凄いな、ササラの魔法陣バリア。あんな凄まじい連射の猛攻撃を余裕で受け止めていやがる。ササラって本当に千年に一人の天才魔法使いなのかも知れないな……。
 ん? あれ? 魔法陣……。魔法陣って魔法だったっけか? あれ? 魔法って名前が付いちゃいるが、あれって魔術じゃなかったっけ? どうだったっけ?
 そんなのは俺にとっちゃ、どっちでもとんでもない脅威だと言う事には変わりは無いけれど。
 俺の認識では魔法ってのは何の儀式も道具も用いずに、物理法則とか自然の摂理とかあらゆるものを全て無視して発動する、神の奇跡のような超常現象の事だと思っているんだが。
 ササラの使っているはどっちなんだ?




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み