孤羊閣 導入フェイズ

文字数 3,354文字

・シーン1 孤羊閣

 この導入は、マスターシーンになります。

 GMは次のナレーションを読み上げてください。

「どこかでキーボードの音が鳴っている。プログラムが組み上げられていく」

「林の中に洋館がひっそりとたたずんでいる。孤羊閣。それがこの館の名前。そこには(PC人数+3)人の男女が暮らしていた。彼らは館の中でただ生活し、ただ笑いあい、特に大きな事件もなく、外からの仕事もなく、ただ生きていた」

「どこかで誰かが皆の寝顔を画面越しに覗いている」

「そして今、孤羊閣は全く新しい朝を迎える」

「時は平成。日本のどこか。閉鎖された屋敷「孤羊閣」。お互いを「家族」と誤認させられていた我々。その状況がどうあれ。それは屋敷の祟りか?実体を持った何者かの陰謀か?その事実がどうあれ。所詮、群れから外れた羊喰いの羊どもの行く末は、地獄だ。では皆様、さよなら。マルチジャンル・ホラーRPG インセイン「孤羊閣」 誰もが心に狂気(インセイン)を抱えている……」

 ここでGMは「孤羊閣」のハンドアウトを公開してください。

・シーン2 目覚め

 PC全員の導入シーンになります。

 PCたちは自室で目を覚まします。その際、PCたちが今まで「家族」だと思い、お互いに助け合って暮らしていた人々が、本来ならば見ず知らずの他人であったという考えが唐突にPCたちの頭をよぎります。彼らとどんな経緯で知り合ったのか、どのくらいの期間を孤羊閣で過ごしてきたのかは全く思い出せません。孤羊閣で暮らす以前の記憶は存在していますが、ところどころ思い出せない部分はあるかもしれません。孤羊閣で過ごしていた時も以前の記憶はあるにはありましたが、当初は気にも留めていませんでした。PC全員、《愛》で恐怖判定を行ってください。

 窓から外に出ようとした場合、窓は完全に閉まっておりびくともしません。ガラスも堅固で、割ることができません(現段階で説明してはいけませんが、強化ガラスなのです)。窓に執拗な攻撃を加えた場合、突如腕に強烈な痛みを感じます(これも説明してはいけませんが、窓枠に電流を流す装置が付いているのです)。そのPCは《痛み》で恐怖判定を行ってください。

 各PCの部屋にパソコン、スマートフォン、タブレットがあるかどうかは、PCが決めて構いません。ただし、電話にもインターネットにもつながりません。しかし、他のキャラクターのパソコンと家庭内LANでつながっています。

 部屋を出ると、園田みんとが廊下に立っており、PCたちに声をかけます。「あなた達は……誰?っていう言い方もおかしいか、昨日まで一緒に笑いあって、お互いの趣味まで知ってるんだからね。やっぱり、みんなも洗脳が解けたの?さなえちゃんも、大ちゃんもそうだったからね。とりあえず、大ちゃんが食堂に集合だって。とにかく状況を確認しておきたいって」

 PC②は、園田に自分と元々知り合いだったか尋ねるかもしれません。その場合、園田はこう返します。「もちろん。PC②でしょ?屋敷に来る前から仲のいい友達だったからアタシちゃんと覚えてるよ!え?PC③?どうだったかなあ……友達の友達?かなあ」

 食堂に行くまでに玄関ホールを通ります。この時、玄関ホールから外に出ようとするPCもいるかもしれません。その場合、園田は「無理だったよ。窓も勝手口も全然開かない。電話も通じないし」と告げます。園田の言葉に嘘はありません。実際玄関ドアは開きません。それでも玄関ドアに執拗な攻撃を加えた場合、扉の上からギロチンの刃が落ちてきます(間一髪、PCには当たりません)。そのPCは《切断》で恐怖判定を行ってください。

・シーン3 いつもの食事、いつもと違う食卓

 素直に食堂についてきた場合、谷崎大悟郎が席についており、月本紗那恵が食事の支度をしています。今日の朝食はバタール(バゲットより短くやや太いフランスパン)とハーブオムレツと、レタスとからし菜のサラダ、えんどう豆のポタージュです。能動的にPCに伝えてはいけませんが、毒はありません。PCが疑うようなら、《薬品》で判定させてください。NPC3人は特に気にせず食べ始めます。

 PCたちはNPC3人、そしてPCたちに次々と質問を浴びせかけるはずです。その時、谷崎は「まあ、一人ずつ話していこうや」と皆をなだめます。現段階で3人から共通して得られる情報は以下の通りです。

・自分たちもPCたちをずっと「家族」だと思い込んで暮らしてきた。皆とどんな経緯で知り合ったのか、どのくらいの期間を一緒に過ごしてきたのかは全く思い出せない。

・孤羊閣に来る前は、3人ともそれぞれの生活があり、一人暮らしだった。

・自分たちがまだ気づいていないだけで、他にも記憶の欠落があるかもしれない。

・洗脳が解けたのは、谷崎曰く午前5時11分(谷崎は徹夜でコンピューターゲームをやっていたと主張します)。園田と月本は、目覚めたら洗脳が解けていたらしい。

・谷崎はその時、皆を起こさなかった。その理由は後述する。

・この一件とは関係ないかもしれないが、洗脳が解ける以前、“当代きっての怪盗”シャドウレスから屋敷に飾ってあるマイセンの壺(時価700万円以上)を盗むという予告状が送られてきている。予告状は園田が全員に見せる。

 ここでGMは「マイセンの壺」のハンドアウトを公開してください。

 そして、月本は自発的に自分の【居所】をPC全員に配布します。谷崎もPCとの【居所】の交換に応じます(一方的に渡すことはしません)。園田は【居所】を渡しません。

 園田はこう続けます。

「アタシは『出たい』っていうより『なぜ』って気持ちの方が強い、かな。誰が、何の目的で自分たちをここで生活させたのか……それが知りたい」

「うーん、アタシ自身は元の暮らしにはそんなに未練はないし、ひょっとしたらアタシたち能動的にここに来たのかもしれないし……でもやっぱり危険なら出たほうがいいよね、絶対」

「とにかく情報が欲しい!何もわからないんじゃみんな怖いでしょ?アタシも頑張るからさ、わかったことがあったらどんどん情報交換しようよ!メタ的に言うとアタシに【秘密】くれ!故あって【居所】は渡せん!」

 ここでGMは「園田みんと」のハンドアウトを公開してください。

 谷崎の意見はこうです。

「っていうかさ、外に本当の家族とかいない限り、ここ出る必要なくね?実際安全だったし、楽しかったろ」

「い、いや違う、そうじゃない俺が閉じ込めたわけじゃない。ただ暮らしてる分には不自由はなかったから、残りたい奴は残りゃいいって話で」

「オカルトめいた話になるけどさ、仮に俺たちを洗脳して閉じ込めたのが幽霊だったり屋敷そのものだったりしたら、下手なことすると手も足も出ずに殺されんのがオチだ」

「ただアレだ、ここでニートしてるのにも金がいるし、屋敷に金とか預金通帳があれば、それは押さえておきたいなー、なんて……いやひとり占めとかそんなつもりはねーけど」

「とにかく、屋敷の中でなんかあったらとりあえずここ集合な!危険なもんとかあったらできるだけ共有すべきだし」

「そうだ。コンピューターをいじる場面があれば俺に任せてくれ。俺に任せとけば確実だから、な?得意なんだよ、俺は」

 ここでGMは「谷崎大悟郎」と「大金」のハンドアウトを公開してください。

 月本の意見はこうです。

「……とりあえず死ななきゃどうだっていい」

「確かに正直、ここで朽ちるのも悪くないなって思ってる。でもここで下手な破壊活動をしたり、仲間割れしたりして死ぬのって正直バカらしいじゃない!」

「出るにしろ残るにしろ生きてこそでしょ。でも……あたしの高望みだってわかってるけど、生きるにも死ぬにも、誰かがそばにいてくれないと、やっぱり淋しい」

「ふと思ったけど、シャドウレス。明らかに外部から人が来るんなら、その人に助けてもらえばいいんじゃない?あ、でもすでに洗脳されてこの中にいたりして……」

「それでもみんな出る意欲はあるのよね、じゃあ、あたしもついて行って、いいかな……」

 ここでGMは「月本紗那恵」のハンドアウトを公開してください。

 その後できるだけPC全員を交流させて、このシーンを終えると導入フェイズは終了になります。

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