櫛笥の館

文字数 585文字

ようこそおいでくださいました…。

わたくしは、旅人様のお世話を務めさせていただきます、櫛笥緋稲と申します。

ふつつか者ながら、どうぞよろしくお願いいたします。

いえ、そんな。

それに私は、ただの迷子ですよ。

ふふ、わたくしどもにとっては大切なお客様なのです。

訪れていただいた方には最善を尽くしておもてなしするのが慣習なんです。

う…、慣習と言われてしまうと…。
それに、これは…その、堅苦しくなってしまうのは私の性分なんですよ。
そうなんですか。

それなら、自然にお話いただいて構いませんよ。

客人以前に、人間として、相手を気遣うのは普通のことですからね。
あら、ふふふ…。

痛み入ります。

それで、この建物は水晶館といって、お客様をお泊めするだけでなく、資料館としての役割も担っております。
え?

資料館?

不思議に思いますでしょう。不思議なのですから。

実はあちらの…見えますでしょうか、通路の奥です。

あの扉の先は洞窟になっていて、大きな本館に繋がっているんです。

へえー、すごいですね…。

でも、なんで本館は洞窟の先に…?

もともと里は山の上にあったのですが、いつしかこの今の場所に移動したんです。

その理由は…わかりやすく話すと長くなってしまいますね。

ぜひ!ぜひ聞きたいです!
まあ、そうですか?

それでしたら…、先にお部屋へご案内いたします。お茶を淹れますので、その間は寛いでいてくださいな。

わかりました!
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登場人物紹介

櫛笥 緋稲(くしげ ひいな)

水晶館を管理する少女。

少女といっても、十八歳らしい。

おっとりのんびりふわふわとしていて、よくドジをする。

しかし、何事にも真摯に取り組もうとする真面目さん。

近衛 戌宮(このえ いぬみや)

巫女を務める少女。十六歳。

フレンドリーで、特に沙耶と仲が良い。

少し自由奔放なところがあり、世話係の八文を困らせることもある。

冷泉 沙耶(れいぜい さや)

うつほの周りに迷い込んだ人がいないか見回っているのが冷泉家。その長女が沙耶。

しっかりしていているが、少し素直になれない十六歳。

思いやりの心は強い。

西園寺 八文(さいおんじ やぶみ)

近衛家に仕える侍女。二十八歳。

昔から戌宮の世話係を任されており、信頼が厚い。

決して甘くはないが、優しい。

瑠乃(るの)

うつほに迷い込んだ少女。十五歳。

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