食生活よ原初に戻れ
文字数 824文字
春はあけぼの、今は5月ぐらいかな？
蓮とフロムは都内にあるレストランに来ていた。
日替わり定食食べたい。
え、それって何食べたいのか考えてなくない？
え、考えるも何もあるものを食べるしかないじゃない。
蓮はマクドナルドの店員にメニューを聞かれたら、適当に握ってくれって頼むの？
そうね、そんな感じ。
それ人としておかしいよ。自分の欲がないなんて……
人間性を唱えるＡＩ！
そうかしら、普通、何を食べるかなんて選べないでしょう？
普通ってなあに？ というかろうじての反論を……
選べる、というのは錯覚なのよ。狩りの獲物で何が手に入るのか、分かっている猟師なんていないでしょう。
どんな結果が出るのか、わからないほうがいいの？
……
（結果がわからないからガチャが回る、ということをこの娘に話していいものかしら……残酷すぎるわ）
結果がわからないほうがいい、という事実はさておき、人とはそういうものだ、と逃げが始まるのが目に見えていた。
（神話あたりに出てきそうな真理だけど、説明が雑すぎる）
蓮は旬の食材が食べたいの？
そうね、そんな感じ。
わかるー！ 冬に水着の女の子見たくないよね！
そうね、場を和ませようとしたのね。まあ、わかるわ。
うーん、なんかさ、そういう普通ってなんだ？ っていう話は禁止されてるのよ。差別禁止ってあるでしょう？ そういうの人それぞれっていうか……
それ、企業の広告戦略に洗脳されてるわよ。人それぞれと言いつつ、みんなスマホ持ってるわよね？ 人それぞれと、みんな同じが共存しているのがこの世界なのだけれど。
東雲さん、やめてください。この内容、みんなスマホで見てるんで……
旬の食材を食べたいって蓮は思うなら、選べないのは当たり前なのかな？
選べないわよ。私、季節操作できないし。それがね、食べたいものを食べたい時に、という人々がやってきて、食事の季節性を破壊したのよ。悲しいわ。サンマ食べたい。
季節を選ばない食品会社より、夏に水着イベントを開催する運営のほうが有能だわ。
