2日目―4

文字数 1,040文字

 家に帰ると居間で両親がなんだか不穏な会話をしていた。
「おいおい、ここって隣町じゃないか?」
「やあねえ、こんな近くで…」
 会話の内容と雰囲気から良い話ではないことはすぐに察した。
「達海、なんだ帰ってたのか。」
 (こっちの)父さんが言った。
「どうしたんだい?二人とも。」
「なんでも隣町で高校生が自殺していたらしいのよ。」
 母親がそう返してきた。高校生の自殺…まさか、達海じゃないよな!?僕があいつから一時的とはいえ間宮さんを、全てを奪わおうとしたせいで…いいや、落ち着け、もし達海が自殺していたら違う宇宙の同一人物である僕だって何らかの形で死ぬはずだ。つまり達海はまだ生きている。そう、生きているはずなんだ…
「…嫌な事件だね。」
 僕はそう言って部屋に籠った。そして達海の部屋のCDを漁った。
「あった、『THE FRUSTRATED』、これが『南東風』の収録されているCDか。」

―楽園よりも あなたがいるこの地上から 風を運んで世界一のI love you―

 軽快なイントロから始まる非常にポップなナンバー。歌詞も明るくキャッチーで文句なしの名曲と言えるだろう。夏希がこの歌が好きだと言うのもわかる気がする。GLAYはそこまで聴かない僕でもそう思えてくる。
「『楽園よりもあなたがいるこの地上から』か…僕はいつまで『楽園』に入り浸っているつもりなんだ?」
 僕(達海)が夏希と付き合っている『楽園』よりも、僕が本当に好きなナツキのいる『地上』で生きるべきだ。そんなことは初めから分かっている!!いいや、わかっていたらこんなことしないよな…

―ごめんね、広瀬くん。私、すでに付き合っている人がいるの―

『ま、間宮さん?』

―今日未明、○○公園で高校生と見られる男子生徒が首を吊った状態で発見されました。男子生徒は発見時にはすでに意識がなく、搬送先の病院で死亡が確認されました。なお警察の調べによりますと、男子生徒は○○市に住む広瀬達海くんとのことです―

『噓だろ…達海…』

―あんたのせいよ!!あんたのせいで達海は…―

『ち、違うんだ!夏希、僕はそんなつもりじゃ…』

―いいや、お前のせいだ。お前がこんなことしなかったら俺は自殺なんてしなかった―

『た、達海!?本当にすまなかった!!だから、もう…』

―お前のせいだ―

―あんたのせいよ―

―君のせいだよ―

「うわあああぁぁぁ!!!!!」
 ゆ、夢か…いつの間にか寝てしまっていたようだ。随分と嫌な夢を見てしまった。時間は…夜の9時か…気晴らしにコンビニでも行こう。
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