【第24話】コージの挑戦。

文字数 1,474文字


【2034年、モンガル『ホビロン』。飼葉タタミ】

 フォーチュンは四散した。

 粉のような形状を取ったフォーチュンにわたしは勝ちを信じた。

 けれど砕け散ったソレは、灰色の世界の終りに、





 ――言葉を吐いた。

わ、私ha死なない。大地と同化する。私が、私こそが『チキュウ』となるのだ!

 先生はもう動けない。息も弱く衰弱しきっている。それはわたし達も同じ。全てにおいてわたし達はチカラを使い果たしていた。
私はお前らの主人となり、その全てwoヒトチリ残さず、子子孫孫まで搾取してヤロウ♪
 のたまう『フォーチュン』も、敵キメラも、倒す手段は残っていなかった。『ホーム・ホルダー』の兵士が次々と両手を上げる。

 そこに聞こえたのは『ブラック・ダド』の宣誓だった。
来い。王留(おうる)。
『ブラック・ダド』が構え振り放った金色の刃は、天から地に撃ちおろされた。天を割く雷(いかずち)は、先生のソレと比較にもならない。

『ブラック・ダド』の振り下ろした一撃で、フォーチュンは灰?と成った。圧倒的な光の渦はフォーチュンのキメラもわたし達のキメラも、全てを呑み込んでいく。
ば、万能細胞『マイティ』を? 万能再生機構『ノルン』を朽ちさせるのか? オマエはバカか? この化学の申し子を殺す事が、お前たち地球の民にどれだけの損失を与――
黙れフォーチュン。
へげ?
『ブラック・ダド』が歩んだ一踏みは、『フォーチュン』の眼球を粉にした。
 あの『フォーチュン』が、あまりにもあっさりその身を失う。
そして朽ちるのはお前だけではない。
『ブラック・ダド』はわたし達へその革靴の角度を向けた。
緋色くん、キミもだ。そしてキミに触れた全ての生き物も、だ。
 陽の緋(あか)を背負った『ブラック・ダド』はわたし達へ、その歩みを近づけてくる。
キミ達は滅ばなければならない。我が家族の為に全ての『ペスト』は死滅させる。

 背後からわたしの前に飛び出し、盾になろうとした男の子が居た。



『ブラック・ダド』! 僕と勝負しろ! 僕が負けたらおとなしく死んでやる! そして三種の神器もくれてやる!
『化け物クリエイターズ』の1人、『スズキコージ』だった。楽々が『コージ』の暴挙に悲鳴を上げる。
コージ! あんた何を言って!
 最下級貧民『ジャンク』の『スズキコージ』が最強の剣士であり、世界の支配者である『ブラック・ダド』に勝負を挑んだ。

 事の動きについていけない。
その代わり、僕が勝ったら、僕達から手を引け! 2度と僕達に干渉するな! 緋色さんを殺すことも許さない!
コージくん、だったか?
そうだ!
『ブラック・ダド』が『コージ』を前に怯む事は無かった。
いったいナニで私と勝負をする気だい? どんな手段でも、私は負ける気がしないのだが?
 ただ、『コージ』を信じてしまったのがわたし達『ジャンク』だ。楽々も「やれやれ。だよ」とブラック・ダドへでは無く『コージ』へ両手を上げる。
10分で勝負を付けてやる! 勝負方法は、

『コージ』は『ブラック・ダド』を指差した。




貴方が考えたというゲーム、『ネーム・ポーカー』!
 その提言に『ブラック・ダド』は口を閉ざした。
ただ、僕に時間は5分も要らないけどね! この勝負受けるかい? 世界の支配者『ブラック・ダド』。いや、最強の手札『ジョーカー』!
……。
『ブラック・ダド』は『コージ』をただただ見つめていた。やがて、無言で顎を振り下ろす。

 わたし達『ジャンク』最後の勝負はヒトの娯楽『ポーカー』に決まった。わたし達はその全てを『コージ』の示す札に委ねたんだ。
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登場人物紹介

『ヒト腹創』(ひとはら つくる)


168センチ、60キロ。

18歳。男性。


体細胞クローンを、ほぼ完璧に生み出す事が出来る「クリエイター」。

理知的だが、高慢な性格の持ち主。

チーム「化け物クリエイターズ」のリーダーを務める。

『言霊みれい』(ことだま みれい)


170センチ、56キロ。

18歳。女性。


チーム『化け物クリエイターズ』の副隊長。創の造り出した生き物に知識を与える『エンチャンター』。

『独りの戦士』という作品を執筆している。

『泉緋色』(いずみ ひいろ)


192センチ、82キロ。

18歳。男性。


創、みれいの幼馴染。いつも笑顔で『化け物クリエイターズ』の皆に振る舞っている。6年前に『ペスト』で右腕を失った。

『飼葉タタミ』(かいば たたみ)


144センチ、38キロ。

13歳。女性。


『化け物クリエイターズ』の飼育兼お茶汲み隊長。調教技能に長け『化けクリ』のキメラを鍛えている。緋色の事を『先生』と呼び慕っている。

『楽々』(らら)


155センチ、45キロ

16歳。女性。


チーム『化け物クリエイターズ』の諜報兼採取担当。タタミの親友的な存在。何事にも直感で動くタイプ。

『ジョーカー』


190センチ、88キロ。

52歳。男性。


謎の戦士。片腕を失っており義手を付けている。その剣の技術に並ぶ者は居ない。

『歯車フォーチュン』


178センチ、68キロ。

50歳。男性。


鳥形の仮面を付けた男。6年前、奈久留を死に追いやった男でもある。チーム『化け物クリエイターズ』の永遠の宿敵。

『スズキコージ』


152センチ、61キロ。

13歳。男性。


タタミに名を与えられた男の子。『コブタ』と呼ばれ茨城を彷徨っていた際、『化け物クリエイターズ』に保護される事となった。

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