文字数 744文字

 ふいに、足元の道路から呼びかけられて目を向けると、懐かしい面々が三人、俺たちを見上げて手を振っている。子供の頃から社会人になるまで、いつもつるんでいた仲間だ。

「お、来たか」

 煌月(こうが)は玄関を開けるために、ベランダから部屋にひょいと戻って行く。

 久しぶりに、奴らに会えるのは嬉しい。ビールを片手に花火を一緒に見るのも楽しいに決まってる。

だけどちょっとだけ寂しいような気がするのは、二人で話した時間が心地よかったからか……。

 でも一人だけ感傷に浸るなんてカッコ悪いから、「なんだよ、あいつら、遅刻か? ずいぶん遅かったじゃないか」なんて言いながら、一足遅れて追いかける。

「時間通りだよ」煌月が振り返る。
「ん? だって」
「うん、お前も時間通りに来たな」
「お? おう……」

 なるほど。ちょっとした、多分ちょうどいい時間差。

 じんわり嬉しさがこみあげて、ニマッと笑みを返すと、煌月は俺の嬉しさも自分の照れくささも、ひっくり返すみたいに、悪い顔で笑ってみせた。

「このビール、あいつらに見せたら秒で消えるからな」と手に持った缶を持ち上げて振ると、小さなチャポンというビールの水音ごと、グッと飲み干した。

「一本くらい、悠翔(はると)とゆっくり飲みたいし?」とひとり言みたいに付け足して、「証拠隠滅だ」と空き缶をゴミ箱に放り投げた。

 缶がゴミ箱にあたった、カンッという音を合図に、「来たぞー!」と、あいつらが部屋に上がり込んできた。

さっきまでのふたりだけの空気はあっという間にかき消され、それぞれ持参した食べ物でベランダに敷いたシートがいっぱいになる。

 ドンッ! 音が体の中に響き、気持ちが浮き立つ。煌月が俺の肩に腕をグッと絡ませた。

「始まったー!」
「かんぱーい!」

 手に持った缶を打ち付け、俺たちは光る空を見上げた。
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