第16話:福島第一原子炉事故

文字数 1,679文字

 そして、建屋内に充満して発生した水素のガス爆発であり原子炉格納容器の損傷もないという見解が発表された。1時23分、3月12日22時15分から中断されていた1号機への海水の注入作業が、津波の恐れが去ったと判断されたため再開された。使用する海水には、中性子を吸収し核分裂反応を抑える作用のあるホウ酸が添加されている。

 1時50分、東北電力女川原子力発電所のモニタリングポストが21マイクロシーベルト/時間を観測。同発電所では震災対応の真っただ中であったが、炉心温度100℃未満の「冷温停止」状態にあった。加えて一部電源の破壊・停止もあったものの多重系により全原子炉の冷却系は稼働中であり、同発電所の原子炉からの放射性物質の大気放出を疑う要素は何らなかった。

 原子力安全・保安院は、検出された放射線は前日の福島第一原子力発電所1号機の水素爆発の際に放出された放射性物質による物と判断。2時44分、3号機の非常用炉心冷却装置の高圧注水系が停止。冷却水が沸騰して水位が下がり4時15分から燃料棒が露出し始めた。5時10分に非常用炉心冷却装置の原子炉隔離時冷却系「RCIC系」による注水を試みたが起動せず。

 そのため東京電力は、5時38分に「冷却装置注水不能」として原子力災害対策特別措置法15条に基づく通報を行った。12日に爆発が起きた同原発1号機と同様に、格納容器内の圧力が高まるため、東京電力は放射性物質が混じった蒸気を外部に放出する準備を進め、海水注入も検討し始めた。

 8時41分、3号機の格納容器内の蒸気を排出し、内部の圧力を下げる弁を開けることに成功した。8時56分、放射線量の値が再び上昇し、制限値の0.5ミリシーベルト/時を超えたため、原子力災害対策特別措置法に基づく「緊急事態」の通報を行った。午前、福島県が合わせて22人の被曝を確認したと発表した。

 敷地正門付近で中性子が検出されていた午前の段階で、3号機が炉心溶融に至っていた。午前の記者会見で、枝野官房長官は、1号機の原子炉圧力容器内部が海水で満たされていると判断されると述べた。1号機の水位計は正確に計測できない状態となっているため、ポンプの能力どおりに海水が供給されていることから判断したという。

 また、3号機については、9時5分に安全弁を開いたことで原子炉圧力容器内部の圧力が低下し、9時8分に真水の注入を開始したと述べた。9時20分には格納容器の排気が開始され、9時25分にはホウ酸の混入が開始された。12時55分には、燃料棒の上部1.9mが冷却水から露出したため、海水注入に踏み切った。

 水位低下で核燃料が露出して溶融する恐れが出たため13時12分から3号機の原子炉に海水の注入を開始。13時52分に第一原発の周辺でmこれ迄で最も多い1.56ミリシーベルト/時を観測したが2時42分に0.184ミリシーベルト/時に低下。枝野さんは午後の記者会見で、「爆発的な事が万一生じても避難してる周辺の皆様に影響を及ぼす状況は生じない」と述べた。

しかし、1号機と3号機は依然として十分な水位が確保できず、燃料が露出した状態になっており、海水注入後も水位に大きな変化が見られない。2011年3月14日1時10分、汲み上げ場所の海水が少なくなり1号機と3号機への海水の注水を停止。7時50分、3号機の「冷却機能喪失」により原子力災害対策特別措置法第15条に基づく特定事象の通報を行った。

 11時1分に3号機の建屋が爆発し、大量の煙が上がった。この煙は灰褐色で、1号機のものと比べるとより高くまで上がり炎が上がる様子も見られた。枝野官房長官は1号機と同様の水素ガス爆発であると発表。この爆発で建屋は骨組だけになり作業をしていた東京電力と協力企業の作業員、および自衛隊員の合わせて11人が怪我をした。

 のうち重傷を負った東京電力の作業員1人は被曝した。さらに、3月27日付の英テレグラフ電子版では、3号機が爆発した時現場に居合わせた陸上自衛隊中央特殊武器防護隊の6人が、爆発に巻き込まれ死亡したと報じた。
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