「じゃんけんに対する嫌な思い出」

文字数 1,401文字

 私はじゃんけんに対して嫌な思い出がある。じゃんけんに嫌な思い出とは奇っ怪な話だが、というのも、十代後半にバイトしていた職場で、“じゃんけんで私と休憩に入る人間を決める”ということをされたからだ。
 そのとき、じゃんけんをしていたのは、私より年上の男性のバイト三人。ちょうど私が休憩に入るときに、その三人は全員、私と一緒に休憩に入りたくないからと、罰ゲーム的なじゃんけんをしたのだ。

 負けたのは、その中でも比較的私と会話をしている男性だった。
「あーあ、負けちゃいましたよ」
 なので、そんなことを半笑いで言われて休憩に入られた。私はあまりにもショックで、小・中学生時代のいじめも思い出したこともあり、その場で号泣してしまった

 それから私は、バイト先で極力誰とも口を聞かないようになり、その三人の誰かと一緒に休憩に入るときは、いわゆるトイレ飯をするなど、とことん避けた。
 そうしていたら、私の様子がおかしいということで、主に女性陣から、心配と同時に、注意までされるようになった。

 とくに、私に声をかけてきたのが、当時四十代後半〜五十代前半ぐらいの女性だった。その人とは家も近かったので、帰りに追いかけてこられた。
「最近のMariちゃんは変だよ。元の明るいMariちゃんに戻って」
 まず、そんなことから言われたと思う。私は、はあ、とそっけない態度をとることしかできなかった。すると、こんな耳を疑うことを言われた。

「まあ、Mariちゃんにも悪いところはあるしね……」
 どうしていきなり、明るい私に戻れという話が、私が悪いという話になるのか。頭の中が???となっている私に、その女性は自分語りをはじめた。
「あのね、Mariちゃんは男子三人にいじめられたと思ってるかもしれないけど、私からしてみれば、あんなのいじめのうちに入らないから。私は早番の人に嫌がらせを受けてて(以下、延々と嫌がらせとやらの内容)、これがいじめだから」
 ……これを聞かされて、いったい私はどうすればよかったのだろうか。どうすればいいのかわからなかった私は、なんだかすごくモヤモヤしながら、いわゆる“明るいMariちゃん”で話を聞いた覚えがある

 誤解を生まないように言っておくが、私はじゃんけんの件でいじめられたとは、一言も言っていない。
 むしろ、いじめと認めてしまっては、自分があまりにも情けないので、そのことに関しては、誰にも何も話さなかった。

「あいつ、俺らにいじめられたって被害妄想してるんですよ〜」
 おそらく、その女性に対して、男性三人のうちの誰かが、そんなふうに言ったのかな、とも思う。
 現に、その女性には、男性三人と“仲直り”することを強要された。仲直りも何も、最初から私は険悪な雰囲気を作ろうとはしていないのに、である。

 男性三人と私は、過去に親しい時期もあったのだが、その後はほぼ口を聞かなかった。
 結局、この件が理由ではないが、男性三人のうち、一人はバイトをクビになり、あとの二人も、上司から勤務態度に関して注意を受けていた。
 そしてその後、私はまたさらに別件でこのバイト先を辞め、今ではこの店自体が閉店している。

 なんだかもう書いているだけで胸クソ悪い話なのだが、正直、この話にオチはない。
 ただ、私はもし、そんなくだらないじゃんけんをされてしまっている人がいるなら、全面的にその人の味方になりたい。それだけの話である。
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