セックスすると密室になる部屋

文字数 2,128文字

ジンさん凄いですよ!無事にここまでたどり着けたなんて、信じられない!
…チクショウ
ジンさん?
まさか!服を引っ張られた時に噛まれにゃんじゃ!
お前が噛んでんじゃねえよ
ほら?問題ねぇだろ?


とジンさんは体をゆっくりと一回転させる。


小さなかすり傷はあるが、噛まれたような傷は無い。

(よかった…。しかし、力のある人だと思っていたけど、筋肉ってこんなに割れるのか。きっと堅いんだろうな)
じゃぁ、”チクショウ”って言ったのは?
言わせんなよ。ゾンビに背中を向けたのはヤバかったってだけだ。


こんなショッパイ失敗するなんて、俺も慌ててたのかと思ったらイラッときてな

いつも危険な役割を引き受けてもらってすみません。僕が言える立場じゃないですが…危機を脱した時に、振り返りができるのは凄いですよ!
僕なんてドア開けただけなのに浮かれちゃって…って、本当に言える立場じゃないですね。
ふっ。浮かれる奴がいなけりゃ、頑張りがいがないだろ?

ジンさんは僕にちょっとだけ笑顔を向けると、そのまま室内を見渡す。

なんつーか、何もねぇ。ただのコンクリートビルだな。頑丈そうだけど。
元々は商業ビルだったそうです
で、今は違うんだ。


ユウちゃんよ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねぇ?俺達がここに来た理由。

(そう。僕はここに来れば助かるとしか説明していない。”ここに着いたら打ち明けるんだ”と頑張った気持ちを勇気に変える時だ)

ここは、僕の姉が有り余る特許使用料を使って買い取ったビルの一つです
お前の姉ちゃん、何者だよ?

陳腐ですが、一言で言えば天才です

てことは、ここに天才博士の必殺兵器があるんだな?
ここにあるのは、矛ではなく盾と言いますか
メギ!メギ!
はぁ~ つぁ~
おいおい。このビル大丈夫かよ。
ジンさん、こっちです。


話の続きは最上階にあるたった1つの部屋…。本当に安全な場所でしましょう

◇ ◇ ◇


その部屋に入ったジンはラブホを思い出した。


淡い暖色の間接照明。


ガラス張りの浴槽に小さなソファ。


部屋の奥にはキングサイズのベッド。

(枕元に置いてあるカゴの中には0.02mm)

なぁ?ここは何処だ
セックスすると密室になる部屋です
は?お前は行ったことないかもしれないが、これラブホだぜ
セックスすると密室になる部屋です
お前…そんな顔できたんだな。
ジンさん。僕とセックスしてください
ユウ…。自分が何を言っているのかわかっているか?


俺はお前が言っていることがわからない。

そ、そうですよね。ジンさんはラブホ行ったことあるんですよね。彼女いますよね。僕となんて
聞きたいのは、それじゃねぇ。


俺は話についていけていない。だからちゃんと説明してくれってことだ。

セックスすると密室になる部屋って何だ?普通に鍵を閉めればいいじゃねぇか。つうか、ラブホなら勝手に鍵は閉まるだろ
だ、だから、ラブホじゃなくてセックスすると密室になる部屋です。


姉が言うには、セックスを感知すると完全なシェルターになるんです。ミサイルが飛んできても絶対に開かない。100年分の完全栄養食品が解き放たれて、有料チャンネルも見放題になる。


未来へのタイムカプセルとか、方舟とも言っていました。

スゲェ部屋だというのは受け入れたとしてだ。なぜセックスする?普通のシェルターでいいだろ
…天才の考えることはわかりません。


ただ、部屋の広さには限りがあります。”繁殖の意図がある人間が生き延びるべき”と考えたのかも。

あー!僕達は駄目だ!男同士だ。すみません、全部忘れてください。
お前がそんなんじゃ、頑張りがいがねぇだろ。


繁殖が目的なら0.02mmはいらねぇだろ?天才ってのは、メッセージには気を使うと思うぜ

たしかに!

それにもう一つ説明が足りねぇんだよ。


ここにいない誰かの意図なんてどうでもいい。俺が知りたいのはお前が何を考えているかだ。お前はシェルターのために体を売るのか?

違います!この部屋をキッカケにすればOKして貰えるかもという期待はありましたが、ジンさんとしたいのは本当です!
なら、この部屋の外。例えば、屋上でセックスすると言ったら?
行きましょう。屋上。
だって、ジンさんが好きだから。


僕は部屋の扉に手をかける。

ガチャガチャガチャガチャ
(あれ?扉が開かない?鍵が閉まってる?密室になってるぅーーー???)
………
(これは「ラブホってどう出ればいいんでしょうか?」て言えば和むだろうか…。


いや、そうじゃない。それだとさっきと同じだ。攻めろ、僕)

密室になっているということは、僕達のセックスはすでに始まっていたということですね。ジンさん。言葉の愛撫では終われないですよね?最後まで付き合ってもらいますよ。

今のは痺れたぜ。だがな!
ドン!
攻めるのは俺だ

(獣だ)


ほぐすって何?


ジンさんの右指は、そう言わんがばかりに僕の臀部の割れ目をドリルする。

(イッ!)
たまらず肛門がキュッと締まる。
(やばい…。指を拒んだように思われたかな)
ユウ
は、はい
深呼吸だ
はい!

すー はー すー はー すーーー

はぁ………
ぬぽん(メタファー的扉が開く音)
◇ ◇ ◇


さてさて、この後は二人の世界。


私達は退場としましょう。



あ、最後に一つだけ。


ゾンビも人間も、お姉ちゃんが作ったワクチンで皆助かりましたとさ。


めでたしめでたし。

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登場人物紹介

@ユウ

あわあわしている

@ジン

ナイスガイ

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