論より証拠
文字数 1,414文字
言いよどむ彰。
とりあえず、呼ばれた理由はこれではっきりした。
しかし、果たして期待に応えるような能力を発揮できるのだろうか? 仮に彼女の言う通り理想の心拍を自分が持っていたとして、それだけでイチニノサンと催眠術をかけられるわけでもあるまい。
とはいえ、何もしないというのも……。
とりあえず、呼ばれた理由はこれではっきりした。
しかし、果たして期待に応えるような能力を発揮できるのだろうか? 仮に彼女の言う通り理想の心拍を自分が持っていたとして、それだけでイチニノサンと催眠術をかけられるわけでもあるまい。
とはいえ、何もしないというのも……。
ってか、フツーかかるわけないんだから、間抜けに決まってる……。
役者のオーディションの方がまだマシかもしれない。
ところが……!
役者のオーディションの方がまだマシかもしれない。
ところが……!
さっきまで輝いていた鏡花の瞳がいきなりトロンと混濁し、次の瞬間にはガクリと首が落ちた。
彰の胸に伸ばしていた腕もズルリと学生服の中から抜け落ち、その拍子に彼女が座っていたパイプ椅子の横の所にガツンッと当たる。
彰の胸に伸ばしていた腕もズルリと学生服の中から抜け落ち、その拍子に彼女が座っていたパイプ椅子の横の所にガツンッと当たる。
腕が当たったときの音からしてかなり痛い打ち方をしたような? しかし、鏡花は無反応でそのままだらりんぶらんと力なく腕を垂らして身動きひとつしない。
慌てて揺さぶろうとした瞬間、鏡花の顔が跳ね上がった。
何事もなかったかのように笑顔を見せる彼女に、何が何やらわけがわからず鳩が豆鉄砲の彰。そして、その様子に鏡花もまたキョトンとした顔になる。
と言いかけて、しかしさすがは才女、事の次第をあっという間に推測する。
鏡花のほうも目を輝かせる。紅潮した頬がうっすらとしたピンクに色づいていた。
早口でそう言って再び彰の胸に手を当てる。
半信半疑の口調。
しかし、先ほど目の当たりにした現象が少しだけ彰の口調を強いものにする。
果たして鏡花はもう一度、さっきと同じように目つきをトロリとさせ……
しかし、先ほど目の当たりにした現象が少しだけ彰の口調を強いものにする。
果たして鏡花はもう一度、さっきと同じように目つきをトロリとさせ……
ズルリと落ちそうになった彼女の腕を支えて、自分の胸に当てさせ続ける。
ドクッ……ドクンッ……ドクンッ!
ドクッ……ドクンッ……ドクンッ!
静まり返った二人きりの空間で、異性から触れられている……。
学園内でこんなことをしていていいのかという背徳感。
学園内でこんなことをしていていいのかという背徳感。
さっきはドタバタしてしまって必死だった為にそんな余裕はなかったが、凛々しく生き生きとした顔つきだった鏡花の、トランス状態特有の無表情、そして女のきめ細かな肌、長い睫毛、ぷるんとした唇、細いうなじ……。
普段ならジロジロ見るのは憚られる魅力的な情景が、今度は向かい合ってほんの目と鼻の先に……!
普段ならジロジロ見るのは憚られる魅力的な情景が、今度は向かい合ってほんの目と鼻の先に……!