カエリミチ
文字数 638文字
教会でつかの間祈った帰り道、大きな男たちによって順番待ちの列に誘導された。男たちの油をかぶったようなつやつやした肌に恐れをなして、声ひとつあげずにおとなしく並んだ。前方では地面に数人が仰臥して、その手足を例の男たちに人形をあつかうように動かされている。何かを念入りに調べているらしいが、いったい何事があったのだろう。となりの人が言うには、狂犬の生まれかわりのごとく滅法おそろしい奴がいて、世界地図に穴をあけるための凶器を持ってうろついているらしい。ああ、それはわたしのことだと直感した。調べられたら簡単ににわかってしまう。すぐに何食わぬ顔で捨ててしまおうと思ったが、自分のどこにそんなおそろしい物があるのかわからない。どんどんわたしの順番がせまってくる。発見したらきっと男たちは小学生のように大きな声で言うだろう、あーッ、こいつ※※を持ってるぞ! ぞっとする考えにふるえた。とんでもない、すぐに捨てなくちゃ、とあわてて自分の身体のあちこちをさわる。凶器だなどと言われているが、わたしにとってそれはだいじな物である気がした。だけど大勢のなかで指をさされてさらし者になるくらいなら捨てることを選ぶつもりになった。たぶんそれが悪かったのだ、わたしの中にあった物が身を潜めるのをやめてしまった。辺りが静かになったので顔をあげると、人々が輪をつくりわたしをとり囲んでいた。そして皆がわたしを凝視して、指さしている。彼らの口が大きな声をあげるべく開かれていく。あーッ、こいつ※※を――
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