とぐろを巻くな!

文字数 1,036文字



:@_run_desuwa





 私たちはドリンクバーが大好きだ。
 ソフトクリームの機械が置いてあったら、ほぼ狂乱といってもいいはしゃぎ方になる。
 だけど今日は、ドリンクバーコーナーに駆け寄ったりせずに「おっ、アイスもあるじゃん」なんてすましている。
 なぜなら、このメンバーで初めてのお出かけだからだ。
 厳しい受験を耐え抜いて入学した高校は、地域の優秀な生徒が集められただけあって、不思議と自分より大人びて見えた。
 私と同じ中学から進学した美咲が、せっかくの連休だからどこかに遊びに行こうと誘ってくれ、男女六名で遊びに行くことになった。
 そこには私が気になっているハルトくんも含まれていた。
 行き先は最近新しくできたアミューズメントセンターだ。ゲームセンターやボーリング、フットサル場など、様々なアトラクションが揃っている。
 時間内にバスケのシュートを何回決められるかというゲームを全員で遊んで、汗をかいた後にドリンクバーコーナーに来た。みんなはジュースよりもソフトクリームに食いついた。私も熱くなった身体を冷ますのに、どうしてもチョコアイスを食べたいと思った。
 ソフトクリームの機械には、レバーが三つついている。ひとつはバニラ、ひとつはチョコ、そしてミックスだ。
 バニラはあの甘いにおいが苦手なので、食べるとしたらチョコ一択なのだけど、ひとつ問題があった。
 チョコでとぐろを巻けば、うんちみたいになってしまう。
 朝から一緒に遊んで、みんなの人となりも少しずつわかってきた。お調子者のケンスケは、絶対にとぐろを見逃さない。
 あいつに見つかったら「うんこみたい」だと、はやし立てられるに違いない。
 ケンスケには何を言われてもいいのだけど、そんな姿をハルトくんに見られると思うとたまらない。
 怒って冗談も通じないやつだと思われなくない。かといってケンスケのイジりに乗っかって楽しげにするのも嫌だ。
 巻かずに一本にする手もある。
 でも、にゅるんと一本太いのをコーンのうえに乗せるのも嫌だ。
 コーンを動かす手に、全神経を集中する。
 いったりきたり、なるべく巻かないように気をつけながら、とぐろでも一本でもない複雑な形に仕上げていく。
 私のアイスを見たケンスケは「巻くの下手だなあ」と笑っていたが、お前のコメントなんてどうでもいい。
「何言ってんの、うまいでしょ」
 満面の笑みで答えた。
 あんたたちは知らないかもしれないけど、女の子はかわいくみられるために、いろんな努力をしている。
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