第4話 あんたの方がマシだよ

文字数 2,343文字

授業中…無愛想な冬月さんが笑顔でこっちを見ている…


(なんだよ…嫌な予感しかしないよ…)

なんすか?
恐る恐る聞いた…
教科書ない…見せろ
(見せろって…お願いする立場だよね…)
わかりましたよ…
恐る恐る、机を近づけていく…


無事に何も冷たいことを言われずに机をくっつけることが出来た。


(こいつ、まさかの神様のことすらキザやろうキモとか言うくらいだからな…)

机をくっつけ終わり椅子を移動しようとすると冬月さんに言われた…
お前はこっち来んなよ。そこにいろよ。


あんま近づいてくんな。

(え?何それ…?んなことしたら、ノートも取れないし、教科書見えないし、机なくて、椅子だけに座ってここにいるの変じゃね?)
冬月さん。そんなことしたら、俺がノート取れないし、教科書見えないし、ここに椅子に座って虚しいんですけど…
友達にでも後でノート見せてもらえばいいだろ。
(次の時間からは見せるのやめよう…)


そう思って今回は我慢した…


でも、結局次の時間からも同じ目に合され続けた…


待ちに待ったお昼休み。


俺は明と学食に来た…

冬月さんどうなんだよ?


なんか喋った?

あんなの喋るもんじゃねーよ(汗)
どうしてだよ?


スッゲーみんなお前のこと羨ましがってるぞ?


冬月さん、笹川の言ってた通り、白石 千春にめっちゃ似てるよな?


可愛いよな?

席交換できるものなら、してもらいたいくらいだよ…
え?何で?さっそく嫌われたのか?(笑)
俺は何もしてないよ…


そんな度胸、俺にあると思うか?


勝手に嫌われてんだよ(笑)

そうか。ドンマイ。
テキトーに流すなよ(汗)


お前だけには言うぞ。他のやつに言うなよ。俺が殺されるから…


冬月さんはめちゃくちゃ性格が悪い!


あり得ないくらい性格が悪い女だ。

ん?冬月さんが?俺、これからよろしくねって笑顔で言われたけど?


そりゃあ金髪だし、偏見持つかも知んないけどいい子だろ?

(どこがいい子なんだよ…もしかしてあいつ人によって態度変えてんのか?笹川には馴れ馴れしくすんなとか言ってなかったっけ?もしかして近距離に来るやつが嫌いなのか?)
そ、そうだな…
明の言うことが信じられなかったが、話は合わせておいた…
お昼休みが終わりが近づき教室に戻ると、隣の席の冬月さんがいない…
周りを見渡すと、笹川や女子の目立つグループの人間もいないのがわかった。


(転校してきたばっかの冬月さんが一人でうろちょろするとは思えない…あんだけ二重人格なんだから、誰かと一緒に行動するわけもないと思う…)

俺はとっさに教室を出た。


走ってトイレの前を通るけど姿は見えない…


とりあえず階段を登って屋上へ出た。

すると冬月さんは目立つグループの女子と笹川達に囲まれていた…


屋上のドアを開けた俺に全員視線を向ける…

あ〜お前なんつったっけ?


帰れよ。

何してたん…ですか?(汗)
見ればわかんだろ。冬月と話ししてんだよ。
どんな、お話ですか?
うぜーな。帰れよ。お前。
正直帰ったほうがいいかと思ったけど、一人で不安そうな冬月さんの表情を見たら、置いていけないって、この時思ってしまったんだ…
冬月さん行こう。
そう言って俺は囲まれていた冬月さんのもとへ近づいた。
帰れって言っただろ。お前みたいなのは、こういう場所似合わねーんだよ。
色々他にも罵声を浴びせられたけど、冬月さんの元へ行くと、手を引いた、
触んなよ。
冬月さんは俺が掴んだ手を振り払った…
ここにいても良いことないよ。
お前何いってんの?(笑)ここにいても、良いことないよって、そんなのわかんねーだろ、笹川こいつ邪魔なんだけど。
ハイハイ。んじゃお前は消えろ。
そう言って笹川は俺に殴りかかってきた…


振りかぶったそのパンチを俺はよけて腕を掴むとそのままの勢いのまま屋上のコンクリートに笹川を背負投で叩きつけた…

他の男子の取り巻き達が何人か向かってきたけど、全員倒した…
お前何なんだよ…
そう言って目立つグループ女子達は逃げていった…
何であんた強いのに、そんな雑魚そうなふりしてたの?
冬月さんが初めてまともに話しかけてきた気がする…
ただ昔、柔道とか空手とか習ってたことがある。それだけですよ。


こいつらは冬月さんに何の用だったんすか? 


お友達みんなで楽しそうとかな雰囲気には見えなかったんですけど?

まぁお友達ではないね。


何されそうになってたと思う?

絡まれてたとかじゃないんすか?
私の上の制服を脱がせて白石 千春かどうかの確認だよ。


白石 千春だったら胸元にホクロがあるからだってさ…


くだらねーって思わない?

そんなの最悪じゃないすか(汗)


んなことされる前でよかった。

私が白石 千春だったら何か変わんの?


元アイドルでしょ?今はアイドルでも何でもない。


それにこんなのが白石 千春だったら幻滅しない?(笑)

そうですね。くだらねーって思います。そんなことどうでもいいんじゃないですか?


調べようとかすること自体間違ってると思います。

タメなんだから、タメ口で喋ればいいじゃん。


あんた強いんだし、私に本当はビビってねーんだろ?

(いえ、俺は派手めの子は苦手です…怖いです…)
じゃ、じゃあタメ口で(笑)
あんたには言うよ。私が白石 千春だよ。


親が離婚したから、冬月 千春になっただけ。


でも、中学時代も、その前も記憶がないの…


だから、白石 千春だけど、アイドルとか言われてもわかんないの…

え?マジで?でも、何でそんなこと俺に言うの?(汗)


スゲーなんてこたえていいか返答困るんですけど…


冬月さんが元アイドルでも、そうじゃなくても、冬月さんは冬月さんなんじゃない?


冬月さんのことよく知らないけど(笑)

こいつらよりも、キザやろうよりも、あんたの方がマシだと思ったから言った。


それだけ。

そう言って、他の奴らが倒れている屋上で、無愛想な態度しか取らなかった、冬月さんが、初めて俺に微笑んだ…
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登場人物紹介

上田 龍一(うえだ りゅういち)

城西高等学校2年生

成績、スポーツ、容姿全てが平均的男子。同級生で同じ高校で同じクラスの坂木 愛(さかき あい)に恋をしている。

冬月 千春(ふゆつき ちはる)龍一のクラスへの転校生。

両親離婚前は白石 千春(しらいし ちはる)

元アイドル。そして記憶を失くしている。

坂木 愛(さかき あい)城西高等学校2年生。龍一と同じクラス。


目立つタイプではなく、あんまり人の輪に入ることが得意ではないが、容姿が良いため男子から密かに人気がある。

酒井 真美(さかい まみ)。龍一のクラスメイトで、愛の親友。

佐藤 明(さとう あきら)。龍一のクラスメイトで親友。

神谷 俊(かみや しゅん)。龍一と同じクラスで学年一のモテ男。性格もイケメン。

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