第4話
文字数 628文字
琴美さんは兄貴の後輩だ。俺の成績が悪いと心配する母親に、いい家庭教師になりそうな後輩がいるからと兄の真治 が連れてきたのだ。兄貴の後輩だと言うから絶対男だと思っていたのに、やってきたのは中学生みたいな顔をした女子大生の琴美さんだった。真治は国立大理工の大学院生。琴美さんは同じ理工の学部生でゼミの後輩だから、中学生みたいな顔をしていても優秀なのは間違いない。
だけど彼女が別の意味で手強いのもすぐわかった。俺の愛想笑いもこの人には通用しなかったのだ。しかもつぶらな瞳をぎゅっとこちらに向けてまっすぐ見てくる感じに、いままで感じたことのない、おかしな感覚を覚えるようになっていた。表面上の俺ではなく、心の内側まで見通そうとするようなその瞳。そんな目でみつめられていると、落ち着かなくなるのに、もっと見ていてほしいと思わせる何かがあった。
訳のわからないこの感覚。俺はずっとモヤモヤさせられているのに、琴美さんはどこまでも自然体。だからそれを崩してやりたくて仕方ない。
「ねえ、勉強の前にひとつ質問いい?」
琴美さんが椅子にすわり、コップにはいった緑茶を口につけて首をかしげた。
「うん? なに?」
「兄貴のこと、好きなの?」
琴美さんは飲んでいたお茶をぶーっと吹き出した。
「うわ、きたねー」
予想以上の手応えにこみ上げてくる笑いを堪えながら、ティッシュケースを前に押し出す。勢いよくニ枚引き抜いて、ゲホゲホいいながら顔や服を拭く琴美さんをワクワクしながら見つめた。
だけど彼女が別の意味で手強いのもすぐわかった。俺の愛想笑いもこの人には通用しなかったのだ。しかもつぶらな瞳をぎゅっとこちらに向けてまっすぐ見てくる感じに、いままで感じたことのない、おかしな感覚を覚えるようになっていた。表面上の俺ではなく、心の内側まで見通そうとするようなその瞳。そんな目でみつめられていると、落ち着かなくなるのに、もっと見ていてほしいと思わせる何かがあった。
訳のわからないこの感覚。俺はずっとモヤモヤさせられているのに、琴美さんはどこまでも自然体。だからそれを崩してやりたくて仕方ない。
「ねえ、勉強の前にひとつ質問いい?」
琴美さんが椅子にすわり、コップにはいった緑茶を口につけて首をかしげた。
「うん? なに?」
「兄貴のこと、好きなの?」
琴美さんは飲んでいたお茶をぶーっと吹き出した。
「うわ、きたねー」
予想以上の手応えにこみ上げてくる笑いを堪えながら、ティッシュケースを前に押し出す。勢いよくニ枚引き抜いて、ゲホゲホいいながら顔や服を拭く琴美さんをワクワクしながら見つめた。