第二章 IN THE BOX(8)
文字数 4,240文字
Wの質問が上がった。
と、思ったらすぐに消えた。
えっ? どういうこと?
沙織が戸惑っていると主催者からのコメントが表示された。
《主催者》 その質問は他のプレイヤーが特許取得したものと同質のものです。質問を変
えてください。
主催者からコメントが入ったのには正直驚いた。
おそらくはWは特許侵害をしてまで、何かをしようとしていたのだ。
その何かとは、間違いなく私を陥れる何かであったに違いない。
私の息の根を絶つ、核心を突く何か。
主催者が見ていてくれて助かった。
沙織はほっと胸を撫でおろした。
でも、やっぱり気になる。
Wは一体何をしようとしていたというの?
考えているうちにWの質問が飛んできた。
《 W 》 玄! てめえだけは絶対許さない。どんなことをしてでもお前が勝ち残ることを阻止してやるからな。覚えてろよ!
Bに白は入れたか?
沙織はハッと思いついた。
そうだ、あれがあるじゃない。
あれで、Wが何をしようとしていたのか、確認できるじゃない。
質問の回答時間5分を利用して、スマートフォンの録画で先程一瞬映ったWの質問を確認した。
Wは、Cの白をブロックすることをGOGOGOに指示しようとしていた。
主催者は、これを玄が取得した「質問内で他のプレイヤーに投入方法を指示する」という特許の侵害にあたると判断してくれたようだ。
Wとしてはプレイヤー全員への指示ではなく1人への指示であるため特許侵害とはならない、とでも言いたかったのかもしれないが、主催者は認めてくれなかった。
いや、そんな道理は通らないことぐらいWも承知だったはずだ。
だから彼の真の狙いは、質問が削除される前にGOGOGOが見てくれればCの白に投入してくれる、と計算した上でのラフプレーだ。
私には録画があるからこうして質問内容を確認できたけど、果たしてGOGOGOはあの一瞬でWのコメントを見ることができたのかどうか?
沙織は質問の回答を書き入れた。
《 玄 》 はい。
一見、ただ怒っているだけに見えるWの質問文だけど、私が赤の次に多く持っている白をちゃんと潰しにきているところにWの抜け目なさを感じる。
8人全員の質問が終わった。
結局、質問によって投入が見つかってしまったのは、Aの赤とBの白のみだった。
普通の相手なら、残りのカードを藪の中に隠すことができた、と十分な手ごたえを感じられるはずの結果だ。
だけど相手はW。
Wならこれだけの情報から私の投入パターンを2パターンに絞り込んでいるでしょう。
その証拠にWはGOGOGOにCの白を投入するよう、指示しようとしていた。
それをされたらどちらのパターンも潰されてしまっていた。
あとは私の運次第。
私の悪運が勝つか、Wや他のプレイヤーたちの読みが勝つか。
運が尽きれば投入カードはブロックされ、海の藻屑と消えてしまう。
いざ、勝負!
沙織は大きな目をさらに大きく見開いた。
『子』の投入結果が発表された。
A→赤1枚
B→青2枚 黄3枚 緑1枚 白1枚
質問されなかった色も含めてBにはきっちり4色、『子』の投入は投げ分けられていた。
もっと重複して、投入漏れになる色が1、2色はあるという予測だったけど、さすがにプレイヤーたちの執念か、見事に分散している。
沙織の右頬を一筋の汗がすっと垂れた。
玄の投入結果が発表された。
A→赤1枚
B→白1枚
C→赤4枚 青1枚 緑2枚 白3枚
ここからブロックされたカードが消え、Cに投じた10枚のカードが残った。
【玄(10点 0)】
沙織はふーっと息を吐きだした。
私の悪運の勝ち。
勝負の分岐点は、一番最初にあった。
最初の質問者さっちんが沙織が仕掛けた魔法に掛からなければそれで終わりだった。
でも彼女もセカンドステージまで進出したプレイヤー。きっと気付いてくれると信じて沙織は魔法を掛けた。
さっちんの質問を見た時、沙織が思わずふーっと重たい溜息を漏らしたのは、ちゃんと気付いてくれたという安堵からだった。
さっちんの質問「投入したカードを誰にもブロックされなかった場合、AとBどちらの合計得点が高くなるか?」は、玄の投入パターンを絞り込むかなり効果的な質問に見えるけど、実はこの質問を沙織は言わせたかったのだ。
ただ、この質問自体の威力も恐ろしい。
この質問のせいで、6人目の質問者が終った時点で、BよりAの方が合計得点が高いこと、且つAには赤しか入っていないことが知られてしまう。
すると、もしここから10点以上に到達する可能性があるとするならば、パターンは2つしか残らないのだ。
そのことに聡明なWが気付かないはずがない。
その2つのパターンとは……。
パターン①
Aに赤を複数枚投入し、BにはAより合計得点は上回らないが枚数は上回る量を投入する作戦。
沙織の手持ちカードで例を挙げれば、Aに赤を3枚を投入し、Bに青1枚、緑1枚、白2枚の合計4枚の投入をするパターンだ。(残りのカードはCに投入する。)
投入がブロックされなければAは3点×3枚=9点、Bは2点×4枚=8点となるためさっちんの質問「AとBどちらの合計得点が高くなるか」の回答は「A」となる。
このパターンの狙いはAで質問を空振りさせ、BとCの合計で10点に届かせようというものだ。
最初に沙織が考えたのがこのパターンだった。
条件が何もないならこの投入方法で10点獲得することは十分可能だと計算した。
たとえAの赤の3枚がブロックされても、Bの白の2枚さえすり抜けることができれば、あとは『子』の投入が重複してBとCに投入したカードがブロックを搔い潜り10点に届くのではないかと計算した。
勿論『子』の投入が重複せず分散してBのカードがブロックされてしまえばそれまでだけど、どうせ通常の投入方法では10点に届かないのだから、一か八かの勝負に出るしかないと考えていた。
だけど、すぐにこの投入方法では勝つ見込みがまったくないことが分かった。
何故ならWはファーストステージで玄と対戦しているため、白を4枚以上持っていることを知っているからだ。
よってWに確実にBの白を潰されてしまうため、この投入方法は採用できなかった。
ではどうすればいいか?
他に10点に届く方法はないのか?
沙織が思考に思考を重ねた結果辿りついたのが、シンが考案したお馴染みの「質問空振り、投入重複作戦」の模倣だった。
それが2つめのパターンだ。
パターン②
シンのように全てのカードをCへ投入して質問を空振りさせるという作戦も考えられるけど、赤がAにもBにもないと分かった時点で、何人かのプレイヤーは当然Cの赤をブロックしに来てしまう。それでは10点の夢は潰えてしまう。
そこで1枚囮を出すことを考えた。
Aに赤1枚だけを投入し、プレイヤー1人をまずここに釘付けにする。
すると、もし最初の5人が順番にAの5色を訊いてきた場合、赤を訊いてきたプレイヤー以外の4人はブロックすべきカードが特定できないという状況となる。
質問者の残りは3人。
仮にそのAの赤1枚以外のカードが全てCに投入してあった場合、残り3人の質問者がBを順番に質問すると全て空振りとなり、その結果、『子』8人の内、実に7人ものプレイヤーがブロックすべきカードが見つかっていないという理想的な状況が完成する。
と、一見安易に思ってしまうけど、事はそう単純にはいかない。
残りの質問者の中にWが含まれているからだ。
玄が白を複数枚所持していることを知っているWはBの白を質問し、そこになければ間違いなくCの白をブロックしに来てしまう。
白4枚と赤1枚がブロックされれば、Cの残りカード7枚では得点は7点しか奪えない。
Wに次ぐ2位での予選通過でよければその手もあるのだろうけど、あくまでもWを予選敗退させる狙いなら、更に上をいく投入が求められる。
そこでWが白をブロックしにくることを予想した上であえて白を差し出す、第2の囮作戦が浮かび上がった。
Wが質問してくるであろうBに白を1枚入れておく。
WはCにも白があるんじゃないかという疑念を抱いても、Bに入っていると分かった以上Bの白をブロックしないわけにはいかない。
だからWは特許侵害をしてでもGOGOGOにCの白をブロックさせようとしていた。
GOGOGOはあの一瞬で指示が見えなかったのか、見えたけどあえて投入しないでくれたのかは分からないけど、幸いにもCの白はブロックされなかった。
白1枚を捨てることによりWをBに釘付けでき、これで『子』8人中6人がブロックすべき箇所か特定できていないという理想的状況が作り出せた。
これがパターン②の投入方法、
「Aに赤1枚、Bに白1枚だけを投入しておき、残り10枚をCでパスさせる」という作戦だ。
投入方法としてはこれしかない。
だけど、作戦としては完璧ではない。
普通に、「Aに赤は入っていますか?」のようにAから順番に色を訊かれた場合、質問者は8人いるためBも3色が質問されて、質問されないBの色は2色しか残らないことになる。
対してブロックすべきカードが特定できていないプレイヤーは、Aの赤とBの白を見つけた以外の6人がいる。
するとBの2色は誰かがブロックしてくれるだろと、Cをブロックしに行くプレイヤーが現れるかもしれない。
Cをブロックされると10点が見込めなくなる。
この作戦はBで投入を重複させなければならないのだ。
だけど、もしBの質問されていない色が3色あればどうだろうか?
すると急にBのブロック漏れの懸念の方が強くなり、みんながBをブロックに行きたくなる。Bのパスは何としてでも阻止しなければいけない、という心理が働くのだ。
質問されていないBが2色なのか3色なのか、このたった1枚が命運を分ける。
何とかBに3色残せないかなあ……。
沙織は天井を見上げて考える。
そんな魔法みたいな話、あるわけないか……。
それは突然、聞こえてきた。
神の囁き。
——具体的ではなく、抽象的な質問をさせればいいじゃない。
いきなり聞こえてきた声に沙織は最初戸惑った。
何?
抽象的?
何のことを言っているの?
何かが頭にひっかかる。
「抽象的な質問?」とあえて声に出して呟いてみた。
沙織はハッと閃いた。
そうか!
その手があったか!
と、思ったらすぐに消えた。
えっ? どういうこと?
沙織が戸惑っていると主催者からのコメントが表示された。
《主催者》 その質問は他のプレイヤーが特許取得したものと同質のものです。質問を変
えてください。
主催者からコメントが入ったのには正直驚いた。
おそらくはWは特許侵害をしてまで、何かをしようとしていたのだ。
その何かとは、間違いなく私を陥れる何かであったに違いない。
私の息の根を絶つ、核心を突く何か。
主催者が見ていてくれて助かった。
沙織はほっと胸を撫でおろした。
でも、やっぱり気になる。
Wは一体何をしようとしていたというの?
考えているうちにWの質問が飛んできた。
《 W 》 玄! てめえだけは絶対許さない。どんなことをしてでもお前が勝ち残ることを阻止してやるからな。覚えてろよ!
Bに白は入れたか?
沙織はハッと思いついた。
そうだ、あれがあるじゃない。
あれで、Wが何をしようとしていたのか、確認できるじゃない。
質問の回答時間5分を利用して、スマートフォンの録画で先程一瞬映ったWの質問を確認した。
Wは、Cの白をブロックすることをGOGOGOに指示しようとしていた。
主催者は、これを玄が取得した「質問内で他のプレイヤーに投入方法を指示する」という特許の侵害にあたると判断してくれたようだ。
Wとしてはプレイヤー全員への指示ではなく1人への指示であるため特許侵害とはならない、とでも言いたかったのかもしれないが、主催者は認めてくれなかった。
いや、そんな道理は通らないことぐらいWも承知だったはずだ。
だから彼の真の狙いは、質問が削除される前にGOGOGOが見てくれればCの白に投入してくれる、と計算した上でのラフプレーだ。
私には録画があるからこうして質問内容を確認できたけど、果たしてGOGOGOはあの一瞬でWのコメントを見ることができたのかどうか?
沙織は質問の回答を書き入れた。
《 玄 》 はい。
一見、ただ怒っているだけに見えるWの質問文だけど、私が赤の次に多く持っている白をちゃんと潰しにきているところにWの抜け目なさを感じる。
8人全員の質問が終わった。
結局、質問によって投入が見つかってしまったのは、Aの赤とBの白のみだった。
普通の相手なら、残りのカードを藪の中に隠すことができた、と十分な手ごたえを感じられるはずの結果だ。
だけど相手はW。
Wならこれだけの情報から私の投入パターンを2パターンに絞り込んでいるでしょう。
その証拠にWはGOGOGOにCの白を投入するよう、指示しようとしていた。
それをされたらどちらのパターンも潰されてしまっていた。
あとは私の運次第。
私の悪運が勝つか、Wや他のプレイヤーたちの読みが勝つか。
運が尽きれば投入カードはブロックされ、海の藻屑と消えてしまう。
いざ、勝負!
沙織は大きな目をさらに大きく見開いた。
『子』の投入結果が発表された。
A→赤1枚
B→青2枚 黄3枚 緑1枚 白1枚
質問されなかった色も含めてBにはきっちり4色、『子』の投入は投げ分けられていた。
もっと重複して、投入漏れになる色が1、2色はあるという予測だったけど、さすがにプレイヤーたちの執念か、見事に分散している。
沙織の右頬を一筋の汗がすっと垂れた。
玄の投入結果が発表された。
A→赤1枚
B→白1枚
C→赤4枚 青1枚 緑2枚 白3枚
ここからブロックされたカードが消え、Cに投じた10枚のカードが残った。
【玄(10点 0)】
沙織はふーっと息を吐きだした。
私の悪運の勝ち。
勝負の分岐点は、一番最初にあった。
最初の質問者さっちんが沙織が仕掛けた魔法に掛からなければそれで終わりだった。
でも彼女もセカンドステージまで進出したプレイヤー。きっと気付いてくれると信じて沙織は魔法を掛けた。
さっちんの質問を見た時、沙織が思わずふーっと重たい溜息を漏らしたのは、ちゃんと気付いてくれたという安堵からだった。
さっちんの質問「投入したカードを誰にもブロックされなかった場合、AとBどちらの合計得点が高くなるか?」は、玄の投入パターンを絞り込むかなり効果的な質問に見えるけど、実はこの質問を沙織は言わせたかったのだ。
ただ、この質問自体の威力も恐ろしい。
この質問のせいで、6人目の質問者が終った時点で、BよりAの方が合計得点が高いこと、且つAには赤しか入っていないことが知られてしまう。
すると、もしここから10点以上に到達する可能性があるとするならば、パターンは2つしか残らないのだ。
そのことに聡明なWが気付かないはずがない。
その2つのパターンとは……。
パターン①
Aに赤を複数枚投入し、BにはAより合計得点は上回らないが枚数は上回る量を投入する作戦。
沙織の手持ちカードで例を挙げれば、Aに赤を3枚を投入し、Bに青1枚、緑1枚、白2枚の合計4枚の投入をするパターンだ。(残りのカードはCに投入する。)
投入がブロックされなければAは3点×3枚=9点、Bは2点×4枚=8点となるためさっちんの質問「AとBどちらの合計得点が高くなるか」の回答は「A」となる。
このパターンの狙いはAで質問を空振りさせ、BとCの合計で10点に届かせようというものだ。
最初に沙織が考えたのがこのパターンだった。
条件が何もないならこの投入方法で10点獲得することは十分可能だと計算した。
たとえAの赤の3枚がブロックされても、Bの白の2枚さえすり抜けることができれば、あとは『子』の投入が重複してBとCに投入したカードがブロックを搔い潜り10点に届くのではないかと計算した。
勿論『子』の投入が重複せず分散してBのカードがブロックされてしまえばそれまでだけど、どうせ通常の投入方法では10点に届かないのだから、一か八かの勝負に出るしかないと考えていた。
だけど、すぐにこの投入方法では勝つ見込みがまったくないことが分かった。
何故ならWはファーストステージで玄と対戦しているため、白を4枚以上持っていることを知っているからだ。
よってWに確実にBの白を潰されてしまうため、この投入方法は採用できなかった。
ではどうすればいいか?
他に10点に届く方法はないのか?
沙織が思考に思考を重ねた結果辿りついたのが、シンが考案したお馴染みの「質問空振り、投入重複作戦」の模倣だった。
それが2つめのパターンだ。
パターン②
シンのように全てのカードをCへ投入して質問を空振りさせるという作戦も考えられるけど、赤がAにもBにもないと分かった時点で、何人かのプレイヤーは当然Cの赤をブロックしに来てしまう。それでは10点の夢は潰えてしまう。
そこで1枚囮を出すことを考えた。
Aに赤1枚だけを投入し、プレイヤー1人をまずここに釘付けにする。
すると、もし最初の5人が順番にAの5色を訊いてきた場合、赤を訊いてきたプレイヤー以外の4人はブロックすべきカードが特定できないという状況となる。
質問者の残りは3人。
仮にそのAの赤1枚以外のカードが全てCに投入してあった場合、残り3人の質問者がBを順番に質問すると全て空振りとなり、その結果、『子』8人の内、実に7人ものプレイヤーがブロックすべきカードが見つかっていないという理想的な状況が完成する。
と、一見安易に思ってしまうけど、事はそう単純にはいかない。
残りの質問者の中にWが含まれているからだ。
玄が白を複数枚所持していることを知っているWはBの白を質問し、そこになければ間違いなくCの白をブロックしに来てしまう。
白4枚と赤1枚がブロックされれば、Cの残りカード7枚では得点は7点しか奪えない。
Wに次ぐ2位での予選通過でよければその手もあるのだろうけど、あくまでもWを予選敗退させる狙いなら、更に上をいく投入が求められる。
そこでWが白をブロックしにくることを予想した上であえて白を差し出す、第2の囮作戦が浮かび上がった。
Wが質問してくるであろうBに白を1枚入れておく。
WはCにも白があるんじゃないかという疑念を抱いても、Bに入っていると分かった以上Bの白をブロックしないわけにはいかない。
だからWは特許侵害をしてでもGOGOGOにCの白をブロックさせようとしていた。
GOGOGOはあの一瞬で指示が見えなかったのか、見えたけどあえて投入しないでくれたのかは分からないけど、幸いにもCの白はブロックされなかった。
白1枚を捨てることによりWをBに釘付けでき、これで『子』8人中6人がブロックすべき箇所か特定できていないという理想的状況が作り出せた。
これがパターン②の投入方法、
「Aに赤1枚、Bに白1枚だけを投入しておき、残り10枚をCでパスさせる」という作戦だ。
投入方法としてはこれしかない。
だけど、作戦としては完璧ではない。
普通に、「Aに赤は入っていますか?」のようにAから順番に色を訊かれた場合、質問者は8人いるためBも3色が質問されて、質問されないBの色は2色しか残らないことになる。
対してブロックすべきカードが特定できていないプレイヤーは、Aの赤とBの白を見つけた以外の6人がいる。
するとBの2色は誰かがブロックしてくれるだろと、Cをブロックしに行くプレイヤーが現れるかもしれない。
Cをブロックされると10点が見込めなくなる。
この作戦はBで投入を重複させなければならないのだ。
だけど、もしBの質問されていない色が3色あればどうだろうか?
すると急にBのブロック漏れの懸念の方が強くなり、みんながBをブロックに行きたくなる。Bのパスは何としてでも阻止しなければいけない、という心理が働くのだ。
質問されていないBが2色なのか3色なのか、このたった1枚が命運を分ける。
何とかBに3色残せないかなあ……。
沙織は天井を見上げて考える。
そんな魔法みたいな話、あるわけないか……。
それは突然、聞こえてきた。
神の囁き。
——具体的ではなく、抽象的な質問をさせればいいじゃない。
いきなり聞こえてきた声に沙織は最初戸惑った。
何?
抽象的?
何のことを言っているの?
何かが頭にひっかかる。
「抽象的な質問?」とあえて声に出して呟いてみた。
沙織はハッと閃いた。
そうか!
その手があったか!