第58話  白竹美優視点 ツンデレ魔優

エピソード文字数 5,795文字

 白竹美優視点です。



 ※


 黒澤くんと別れて家の中に入ると、広間のソファーに横たわる魔優はスマホを見ていました。

 私を見るなり座り直します。


おかえり。黒澤は何て言ってた?
魔優……お願いだから、黒澤くんと仲良くしてください!

 私の大声にも動じない魔優でしたが、今日の私はもうキレッキレです。


 めちゃくちゃ怒ってます!

 こんなにエキサイトしたのはちっちゃい頃以来なのです!

黒澤くんも魔樹と仲良くしたいって言ってたのです! だからもう……ケンカしないで!
分かってるわよ
 そんな風に投げやりっぽく言わないでください!

 許せない美優は、掴みかかりました。

分かってない! じゃあ何であんな態度をとるのですか!
分かってるって言ってるでしょう?

あうっ! 魔優まで怒ったさんになってしまいます。

武力では絶対に勝ち目はありませぬ。そう思ってると……すぐに穏やかな顔に戻りました。

黒澤は良い奴だわ。分かってるって
 あれ? 魔優?

黒澤は美優と一緒になった経緯も正直に喋ってくれた。


同人が趣味だなんて……きっと私に言いにくかったと思うけど……

それよりも黒澤は、私に誤解されないよう正直に喋るのを優先した。


そうでしょう?

ま、魔優……

 あうっ……魔優はやっぱり分かってくれてたのです。


 ま、まゆぅ~~!


 そう聞いた私はあまりにも嬉しくて、思わず抱きついてしまいました。

じゃあじゃあじゃあ……早速ごめんなさいして。仲良くしよっ! ね?
それは無理
へ? な、なんでですか?

今更無理よ。黒澤だってきっと「ごめんなさい。仲良くしよう」とか絶対言わないだろうし……

私もそんなこと言うのヤダ

えぇ~~~! 何でですか!

だから今のような関係でいいの。向こうもそう思ってるんじゃないかな?

それに私は今のままの方が楽で楽しいし

そ、そんな……魔樹は悪魔なのでし!

違うわよ。面と向かっては黒澤だってツンツンしてるし、それならこっちも同じような態度でいるだけよ。私だけにぶっきらぼうな口調だしね。そういう関係でもいいじゃない


だけどね。私は黒澤を信じてあげようと思ってるから。

あふっ。ちょっと恥ずかしそうな魔優を見て、私はほっこりしちゃいました。
あはっ! やっぱり魔優はツンデレなのです

違います。それにデレてないし。


でもね……いい奴なのは今日話してて、何となく分かった気がするから

 魔優……
きっと美優を心配してくれてるんだろうなって思った。それは凄く感じたわ
え? 感じちゃったの? 何処が?
意味が違うから。変な方向に捉えるの止めてよ
 ああっ、魔樹がそんな風に言うから思わず突っ込んじゃっただけです。


 くくっと笑う魔樹でしたが、すぐに真面目な顔を突きつけてきました。

だけど! 黒澤と二人きりになったからって、決して油断しちゃダメだからね。


それだけは分かってよ。お願いだから……

うにゅ!

 黒澤くんの言うとおり、魔優は私のことを心配してくれているのだと思いました。


 だって、魔優の顔が「お願い魔優」のお顔になってたから。本気のお願いモードなのです。 



 と、そこでお話が終わると次第にニヤニヤした顔になる魔優。

 目の前まで顔を持ってくると、こんな事を言うのです。

ねぇ美優。もしかして黒澤にトキめいちゃったの?
 冗談なのは分かっています。分かっていますが……
そ、それは……

 歯切れの悪い返事が出ちゃうと、私のテンションは急降下してしまいます。


 そういうお話。私は苦手なのです。

違います。私は……黒澤くんは良い人ってだけで……どんなに良い人でも私の正体を知ったら、きっと幻滅するよ
 私のヘコヘコ顔に、魔優も同じような顔になっていました。
…………

魔樹は何も言いませんでした。

だけど同じ気持ちなのは分かる。

彼は良い人。それでいい。それ以上の関係にはならない。


ううん。それ以上の関係には……なれないよ

 男になったり女になったりするこの身体。

 きっと誰も……理解できない。


 もし、男の人を好きになったとしても……

 この入れ替わり体質を知ってしまえば、誰だって……私を女の子だと、思ってくれない。



 だから私達は昔から人を好きになった事がありません。

 好きになったとしても、きっと……受け入れてくれないのが分かっているから。



 私も魔優もそうやって今まで生きてきた。

 

 だけど私達だって……

 このままではいけないのは分かってます。



 だから私と魔優は、この入れ替わり体質を暴露しても大丈夫そうな……そんな人間を探しているのです。


 



 

 ※


 私は自分の部屋に戻ると、魔優も一緒に付いてきます。



 黒澤くんには申し訳ございませんが、あなたの素敵なワンダーワールドを魔優にも分かってもらいたいと思いまして、あっさりと、ごくあっさりと紹介してしまいました。



 だって。読めば絶対面白いと思うからなのです。

へぇ~~結構しっかりとした文章ね
絶対内緒なのです! これわ聖奈ちゃんも知らないトップシークレットなのですよ

分かってるわよ。

こんな事喋っちゃうと、美優の信頼に関わってくるし、あいつきっと……キレちゃうかも

 とは言うものの、黒澤君の小説の画面に釘付けになってる魔優でした。
でもさ、黒澤と美神さんって……何であんなに仲がいいんだろうね

 ですよね。不思議ちゃんな関係です。

 

 だけど、黒澤くんって本当に優しいし、喋ってても楽しいのでぇ、何となく聖奈ちゃんが仲良くやってるのも分かってきた気がするのです。



 それにしても……ただならぬ仲な気もするし、本当にそれだけなのかな? とは思いますけど。

ねぇ魔優。私は思うのですが、聖奈ちゃんにはカミングアウトしても良いと思うのです
それは私も賛成だけど……やっぱり怖いよね

 この話は、以前から挙がっていましたが、やっぱり……怖いという感情が先にきてしまい、結局は実行できずにいました。



 学校でも一番良く喋ってくれるし、体力テストの時はとっても助けられたし、一緒に遊びに行ってくれて、凄く楽しかったから、私の一押しの聖奈ちゃんなのです。



 とはいえ、知り合って一カ月も経ってないから、まだ様子見をしようと言うのが私達の結論なのでした。

そいえばね、私は楓蓮さんも良いと思うのよね
あひ! それは初耳だよ。
バイトでも良く私のこと聞いてくれるし、とっても優しいし、じいじだってお母さんだって……みーんな大好きだし
うにゅ! 私も楓蓮さん大好きだよ

 私の家族で大ブレイクな楓蓮さん。

 みんなでご飯食べてる時も話題に上がるし、ママは「彼女を射止めなさい」とか変な事言ったりするくらいです。

今度、お母さんにも相談しても良いと思う
そですよね? ママがいいよって言ってくれたら……
 正直に喋るのは怖いけども……ママも協力してくれるなら、何とかなるかもしれない。


 と、いいますか。

 魔優が家族以外の人でこんな風に言うなんて珍しいのです。

魔優は楓蓮さんすきーなの?
と、冗談っぽくニヤけ顔で言ってみますと……

あ、ちが、違うわよ。だけど……

なんていうのかな? 彼女は凄い美人だし……この前だって凄く綺麗だったし

 え? あれ? あれれ? 魔樹?
私。女の子なのに……彼女見てると、何だか変になる時があるの
え? 魔優はそっちになっちゃったのです?
違うから! だけど……
 あわわわ。ま、魔優がめっちゃ恥ずかしそうな赤ら顔になっちゃってます!
私は女だけどね、男でもあるわけだし……もしその、楓蓮さんにカミングアウトしても、大丈夫なら……
あひっ! 魔樹? そっちから攻めるのでしか?
攻めてないってもうっ! ちょっと……そう思っただけよ!

魔樹はもしかして、おにゃのことしても男の子としても……ヤルつもりなのですか?


私だって負けてませぬ! 私は聖奈ちゃんを美樹で、ちょめちょめしたいです!

勝負じゃないってば! じゃなくって……美神さんと美樹が?


くくっ! 何だかすぐに主導権握られそう

握られていいんです! むしろ握って、ニギニギ 「美樹ちん」を握られたいですっ!
もうっ! シモネタは止めて。気持ち悪いっ!

 魔優はとっても潔癖さんなので、この手のお話をノリノリで語れる人が欲しいと思う美優なのでした。




 そして魔優のジト目にえへへと笑うと「お風呂でも入ろう」と言い残し出て行ってしまいました。




 ついでに。私がお土産で買ってきたニコラ×アルフレッドの十八禁の同人誌も持って行きましたね。

 さっきは「こんな破廉恥なニコラなんてありえない」とか言ってたのにねー。ちゃっかり持って行ってます。



 乙女ゲームに夢中な魔優。

 ゲームセンターでニコラが欲しいと言ったのは私じゃなくて魔優なのでし。


 うん。そうだよ。

 魔優は超分かりやすいツンデレさんなのです。



 ※


 部屋から出て行った魔優。

 きっとこの後お風呂するのです。


 さてここから私は美樹になると、部屋のドアに張り付いて魔優がお風呂さんに向かうのを確かめます。


 ふんふ~んと鼻歌交じりにお風呂に向かう魔優。

 あふっ。完全に油断してますね。いい感じですよぉ。





 今の内に脱いでおきましょう。  

 私もお風呂に乱入するべく、すっぽんぽんになります。



 魔優とはわりと一緒にお風呂に入りますが、最近ハマってるのが魔優と美樹の組み合わせでして……色々とお触りしたり、それはもう色々と……あはっ。



 だけど、この前から「美樹で入って来ないで」とダメだしされちゃいましたけど……楽しくて止められなくて……




 ちなみに今、お風呂場に向かってはダメなのです。

 魔優はめちゃ強いので「変態」とか言われて返り討ちにあってしまいます。



 なのでぇ。魔優が髪の毛を洗うタイミングを見計らって突撃するわけですね。これならきっと魔優もどうする事もできませぬ。



 うはっ。ちょっと考えただけで「美樹ちん」がピクっと動きました。




 や~んもう。この変態ちゃん。

 双子で姉妹なのに、何勝手に発情しちゃってるのですかもおっ。


 全裸のまま部屋のベッド正座する事五分少々。

 そろそろ討ち入りの時間ですね。 


 部屋から勢い良く飛び出すと、お風呂場までダッシュなのです。すりガラス越しに見える魔優の背中が見えると、辛抱たまらん私は一気にドアを開けました。



 すると、ピンクの髪の毛をわしゃわしゃする魔優は「え?」と漏らします。

 めちゃくちゃチャンスなのです!


 私は容赦なく背中から抱きつきました。

ま、ゆ、うっ!
きゃ! ちょっと! もうっ!

 すかさず魔優のおぱーいを揉みしだき……プリプリのお尻に……


 その瞬間、額にもの凄い衝撃を受けてしまいました。

がふっ! あひっ!
何すんのよもうっ! 変態っ!
 いだだだだだっ。お腹を足でグリグリされてしまいますと、あっという間にダウンしてしまいました。
美樹、いい加減にしてよ! 自分の触ってればいいじゃない
自分の触っても面白くないのです。それよりも魔優は妹なのに勘違いしちゃっておっきする「美樹ちん」がとっても微笑ましくて
き、気持ち悪いから見せないでよっ!

 ううっ魔優ってばキツいのでし。

 同じものが魔樹にもあるって言うのに……


 プリプリ怒る魔優は髪の毛の泡を洗い流していました。その様子をぼけーっと見ていると、また「美樹ちん」が反応しちゃってます。

あふっ。大きくなった。お馬鹿さんなのでし

本当に自分の意志とは関係なく、おっきしちゃってまし

変態っ!
あれ? 魔優に詰(なじ)られると更にむくっとしたよ? うはっ。面白……痛っ! はぁ~~~~うう!
「美樹ちん」の弱点な玉袋をグリグリされると、私は死を覚悟するような激痛に……悶えまくります。
ひどひ! 美樹が種無しさんになっちゃうのです!

 じゃなくって、本当に痛い! 痛すぎて顔が歪みます。

 男の人って……こんな弱点をブラブラしてるのってどうなんですか? 

ふんっ! 馬鹿なことばっかり言うからよっ!
 魔優はそう言いながら、手に持っているモノを見せびらかします。 
ちょと! 魔優? 何ですかこれ
もう大人しくしなさい

 私の両腕に嵌められたのは、玩具の手錠でした。

 ああっ。外れないでし! プラスチックなのに取れなひ!

ふぅ……
 魔優は浴槽に入ると一息付いてました。
た、助けてください~! もう悪さしませぬ
い~~や! 私が出るまで、そうしてれば?
きゅ~んきゅ~んきゅ~ん
そんな声出してもダメだから

 お目目をウルウルさせても無視する魔優でした。


 しょ、しょんな……

 今までですと「しょうがないわね」とか言いながらお願いを聞いてくれたのに。

魔優。これはスキンシップの一環じゃないですか。そんなにプリプリ怒らないで下さいな
どこがスキンシップよ! 気持ち悪いの見せないでって何度いったら分かるのよっ!
えへへ。もうっ。魔優ったら本当に男の人のお身体さんはダメなのですね? もし好きな人が出来ちゃって、さぁこれからという時に困るのですよ

 本当に男の人のお身体に弱い魔優。

 体育の時間とかの着替えとか、彼女にとっては地獄らしいです。

そんな人いないから!

それとも、楓蓮さんとベッドインした時の為にも、ちゃんと勉強するべきだと思うのでし。男の子の身体を……


あ、あの。ごめんなさい。冗談でしゅ

 すっごい怒ってるお顔です。


 あわてて「ごめんなさい」すると、再び溜息を吐いてから浴槽から出てまいりました。

魔優。て、手錠外してくださひ
ちょっとそのまま反省すれば?

 あっふ……外してもらって一気にタッチしようと思ったのに。見抜かれていたようです。



 魔優は髪を乾かす作業を終えてから手錠を外そうとしてくれますが、ここで思わぬハプニングが起きます。

あれ? 鍵がない
あひ! ちょっと魔優! どうするんですか!
すると、魔優は両手に力を込めると、一瞬で玩具の手錠が粉々に砕け散りました。
これでいいでしょ。ちゃんと身体洗いなさいよ
 魔優は女の子でもめちゃ馬鹿力なのでした。
隙ありぃっ!
 その時、魔優のバスタオルをひっぺがそうとすると、グーパンチで顔面を殴られました。
いい? 今度、美樹でお風呂に入ってきたら、容赦しないから
は、はひ……

 私は魔優と仲良くお風呂に入りたいだけなのに……


 その中に、ちょっとお触りとか、そ、そーいうコミニュケーションがある方がきっと楽しいと思うのに、何で魔優は分かってくれないのでしょうか。


 小さい頃は一緒に入ってくれたのに……

 お兄ちゃんである美樹はとっても寂しいのです。  

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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