第10話 ジョン・レノンのクリスマスソング

文字数 1,063文字

 80年代、イギリスで「バンド・エイド」が「Do They Know It's Christmas?」を歌った。エチオピアの飢餓に対する訴えのような楽曲。アメリカでも「We Are The World」をミュージシャンが集まって、やはり同じようなテーマを歌にのせた。

 前者ではボーイ・ジョージが幅を利かせ、後者ではブルース・スプリングスティーン、シンディ・ローパー、ボブ・ディランが印象的だった。
 同じ平和を求める曲だが、イギリスのそれの方が、こじんまりしていて暖かく、優しい気持ちになれる。アメリカはどうも強さを求めるというか、対外的なところに重きを置く感があるのは、政治が私に植えつけた印象だろうか。

 家の暖炉を囲んで内輪で温め合い、英国人たちが優しみをもって微笑みながら、しかし真剣に歌った──「Do They Know…」を聴いていると、そんな気がして、ほんわかした心地になれる。肩肘を張らない。強さ弱さは関係ない。ぼくらは歌う、彼らを忘れない… メロディも柔らかく、落ち着いている。そこにU2のボーノのボーカルが突如入って、ハッとさせられる…

 ワム!なんかも商店街のスピーカーからよく流れているが、次いで流れるのはジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」だろうか。
 この曲は、実に真実を歌っている。「戦争はなくなるよ、あなたがそれを求めるならば」みたいな単純な歌。真実は、単純な中にある。複雑にさせる必要はない。ひとりひとりが、ただそれを望めば、戦争はなくなる。

 国家間の戦争に限った話ではない。日常生活の対人関係でムッとすることがあっても、争いはしたくない。ひとりひとりからそれは始まるのだから、とりあえず私は争わない。そんな気持ちにさせられる。怒ったりするより、穏やかな心がいい。

 頭で分かっていても、怒ったりイライラしたりする。でも、とりとめのない心の中に1つ、あのメロディが流れる余地があるだけで、だいぶ違う。ひとりの時に、嫌な感情は増大する。ひとりの時に、その感情を和らげることもできる。

 You Tubeで、戦地の映像ばかりを流しながら、この「ハッピー・クリスマス」が聴ける動画があった。平和的なアニメや何かの画像を通して聴くのより、よほど心に沁みた。
 平和は、忘れないことにあるようだ。過去のあやまち、悲惨な、いやな思いをしたこと。幸せなことばかりを望んでは、平和が遠くへ置き去りにされてしまう気がする。
 自分の中でぐらい、それを忘れず、現在に生かしていく。そのために、今を生きているような…
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