第9話 二等兵 志村菊次郎 その3
文字数 677文字
つまり、本部は、誰からかわからぬ実弾射撃と、行方不明者捜索の二点を元に中国側と交渉したのである。
再び 数発の銃声
今度は、はっきり竜王廟からの射撃であった。
時の連隊長は、後にインパール作戦を指揮する、あの悪名高い牟田口廉也である。
そもそも、実弾を発射したのは誰?
中国軍、或いは、日本軍の謀略か?
または、八路軍(共産軍)の仕業か?
何故、志村二等兵は排便に20分も掛かったのか?
公衆便所を探していたわけでもなく、
夜間の荒野での野グソに20分も掛かることはないだろう。
或いは、彼は道に迷ったか?
銃撃が収まるまで、退避していたか?
さらに何故、志村二等兵無事帰還の報告が遅れたのか?
志村二等兵が、排便をしなければ・・・
タイミングよく、実弾射撃が発生しなければ・・・
本部への報告が遅れていなければ・・・
連隊長が牟田口でなかったら・・・
それが本人にとって幸せであったかどうかは、また別の問題である。