第5話(6)

エピソード文字数 1,825文字

「にゅむっ、いっきまーすっ。てやっ」

 陣形は、定番の輪っか。地球人2と異世界人3で円を作り、レミアが手首を使ってボールを飛ばす。

「ボール先生、こっちに来たぜよ! とりゃぁっ!」

 フュルはバク転しながらキックするという無駄に高度な技を繰り出し、今度は育月の方に落下する。

「育月ちゃん、いったよーっ。打ち返せーっ」
「は、は……ぃっ。えっ、えいっ……ですっっ」

 スポーツ万能完璧超人の従妹は、適度に下手糞を演じてトス。この子は、こんな時でも手を抜きません。

「に、兄様、いきま……したっ。ふぁっ、ファイト……ですっ」
「オッケーっ。やっ!」

 兄様は華麗にレシーブして、変な人ことシズナに回す。
 ふふふふふ、これで一周した。俺は、キチンと気遣える人なのだ(キリッ)。

「……従兄くんからの愛を受け止めたいけど、我慢ねっ。フュルさん塵になりなさい!!
「うわあ矢庭に全力で打ちやがった!?

 コイツらは化け物なので、正確には全力ではないのだが――。プロのバレーボール選手張りのアタックをしやがった。
 おおおおおぃ! こっ、これ大丈夫なのかっ?

「残念やけど、ワシは塵にはならんきねっ! レミア先生にダイレクトボレーぜよ!」

 なんとフュルは右足でビーチボールを蹴り、今迄以上の速度でにゅむ星人に飛ぶ。
 のわあああああああ! 今度こそ大丈夫じゃないだろっ!?

「中心を捉えられた……! レミア先生、KOされや!!
「にゅむっ、お断りだよーっ。ミラクルレシーブー!」

 レミアは後方に飛んで勢いを殺しながら両手で弾き、見事に対応。ボールはポーンと、育月のもとに飛んでった。

「育月さんチャンスよっ。本能の赴くままに、誰かに叩き込んで!」
「ぇ……ぁ。はい……ですっ」

 従妹は言われままに動いたフリをして、たーんと跳躍。以前バレー好きの父さんを唸らせた強烈なアタックが放たれ、


 ドゴッ
 ビーチボールが、僕の顔面にヒットした。


「か、は……。クリーン、ヒットだ……」

 痛恨っぽい一撃を喰らった俺はクラッとなり、真後ろにバッタリ倒れる。
 な、どうなって、るん、だ……? 俺らは、楽しく、ビーチバレーを、してたんじゃ、なかったのか……?

「ご、ごめん……なさいっ。正面に居たので、つい飛ばしてしまい……ました」

 育月が密かに、『ど真ん中に当たったわっ。あははははっ』と言わんばかりの顔をして駆け寄ってくる。
 うん。どう考えても、コイツが魔王です。

「兄……様っ。ご無事、です……か?」
「ぅ。どうにか、な」

 俺は時間をかけて起き上がり、ギロリ。楽しい遊びを危険な遊びに変えたバカを、これでもかと睨め付ける。

「シズナよ。なあシズナよ。な・ぜ、あんなマネをしたんだ?」

 コイツが普通にやってたら、あんな流れにはならなかった。返答次第では、昼飯抜きにするぞ。

「……ごめんなさい、従兄くん。あれは儀式だったの」
「ぎしきぃ? なんの?」
「………………家内安全?」
「なんで疑問形なんだよ」

 自分が言いだしたんだろ。断言しなさい。

「………………かっ、家内安全なのよ!」
「こら、底の浅い嘘を吐くな。ど・う・し・て、あんなマネをしたんですか?」
「………………。テンションが上がって、暴走してしまいました……」
「はーい飯抜きー。夜までお水でお過ごしくださーい」
「そんなっ。だっ、だったら続いたフュルさんも裁かれるべきよっ!」

 魔法使い魔王、大呼。親友を道ずれにしようとする。

「私がやっても、フュルさんが止めていたら何も起きてないのっ。そちらにも非はあるわっ」
「そ、それは……。そうながやけど……」
「だから罰を二等分して、せめておにぎりは食べさせて頂戴っ」(実を言うと朝ご飯に虫が入っていて、大半を異空間に捨ててたのよっ)

 田舎は、虫さん多いもんねぇ。やけに食べ終わるのが早かったのは、ソレのせいだったのか。

(……はぁー。伯父さん伯母さんに気を遣った点に免じて、許してやりましょう)「ランチは皆でします。けど昼時で混んでるだろうから、空く時間まで適当に遊んでてねー」

 俺は大きく息を吐き、ビーチバレーは嫌になったから独りで――訂正。目で制したのについて来た元凶・虹橋シズナと共に、少し離れた場所に腰を落とした。
 にゅむ。ゆーせー君は休むにゅむ。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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