「そしてふたりは!!」
文字数 4,369文字
~~~新堂助 ~~~
目を覚ますと、見慣れた天井があった。
ガリオン号の中だった。
2段ベッドが4つある、乗組員用の寝室。
一番奥の一番上の、俺のベッドだ。
天井に無数の写真が貼ってある。
「家族」の写真だ。
お袋、親父、姉貴。姉貴の飼い猫のトーラ。
この数か月で、その枚数は一気に増えた。
「家族」の数が、一気に増えた。
シロ、妙子、御子神、カヤさん。
そして……。
「むにゃあああん……」
コクリコの鳴き声がした。
「ふみぃいいいん……」
すぐ近くだ。
超々至近距離から聞こえてきた。
抱き枕に抱き付くように、コクリコは俺に抱き付いていた。
「えっと……」
腕が首に、太ももが太ももに巻き付いている。
赤銅色の肌が、直接 俺の肌にひっついている。
服を着ていない。パイロットスーツどころか、下着すらも着けていない。
毛布をめくるまでもなく、それはわかった。
頬が頬に、胸が脇腹に、下腹部が腰に触れている。時々擦れる。
俺たちの間には、なんの障害物もなかった。
昨夜彼女との間に何があったかを思い出そうとした。
たしかパブでキスをして、しこたま呑んで、ふたりノリノリで、肩を組んで歌いながら船に帰ってきて……そこから……そこから……覚えていない。
えっと……俺たちはどこまで いった?
関係的にはどこまで 進んだんだ?
仲良い友達か、それとも……。
「なあコクリコ……?」
おそるおそる呼びかけたが、コクリコはぴくりともしない。
繰り返し呼んだ。
ぺたぺたと頬を触った。
「おい、起きてくれよ、色々と問題がある。由々しき事態だ」
「ふみゅうううん……?」
「こら、そういう色っぽい声を出すんじゃない。……こらこら、耳を噛もうとしない。……え、尻尾を動かしてそんな……? やめろ、なんだそのテクは!」
コクリコの尻尾が俺の俺 に絡みついてきたので、慌てて腰を引いた。
「ええい、とにかく起きろ!」
ガツンと、容赦なく頭突きをくれた。
「──いった~い!!!!!?」
さすがに目を覚ましたコクリコ。
涙目になりながらおでこを押えた。
「ひどいにゃタスクさん! なんてことするにゃ!?」
にゃあにゃあと文句を言ってくる。
「オッケオッケ、苦情はあとで聞く。あとでまとめて謝る。いまはとにかくそれどころじゃないんだ。可及的速やかに、この状況を理解してくれ」
百万言を費やすよりもわかりやすかろうと、俺はふたりを覆う毛布をめくった。
互いの裸身が露わになった。
「ひゃっ? 寒っ……なにするにゃ……って……え……え……え……? ──えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!?」
コクリコは慌てて胸を覆った。
下半身を隠そうと手を伸ばして……それが俺の俺 に触れそうになって、慌ててひっこめた。
「ふぎゃああああああああ!? なんで、なんで、なんでそんなことになってるのにゃ!?」
「いや、これ に関しては完全におまえのせいだ。おまえの尻尾が悪い」
「いやいやいや、なに冷静に語ってるにゃ! なんでちょっと男前な顔になってるにゃ! 賢者タイムか! 賢者タイムなのかにゃ!?」
俺から毛布を奪って体を隠したコクリコ。
つまり俺はいまだに全裸だ。
布一枚かけていない。生まれたままの姿だ。
「まあまあ落ち着け、コクリコ」
「これのどこをどう落ち着けっていうのにゃ!? むしろタスクさんはにゃんでそんにゃに落ち着いてるのにゃ!?」
「いやあなんというか……俺もさっきまではおまえと同じような状態だったんだけど、おまえが驚くのを見てたら、変に落ち着いちまった。なあ、そういうのってあるだろ?」
「わかるけどにゃ! たしかにそういうことあるけどにゃ! どう考えてもいまそうなるのはおかしいのにゃ! 落ち着いてる場合じゃないのにゃ! もっと隠すなりなんなりして欲しいのにゃ!」
「そうは言うがな。俺の体を覆う毛布はおまえが持っている。パイロットスーツはほれ、床の上だし」
そこにはふたりぶんのパイロットスーツが折り重なるようにして落ちていた。
周りには、やはりふたりぶんの服や下着が散乱している。
コクリコのチューブトップ、ミニスカート、下着類……。
「ふうううううっ!?」
その光景を目にして改めてショックを受けたのか、コクリコは全身の毛を逆立てた。
「下で脱いでから登ってきたのか、上で脱いでから下に投げ落としたのかはわからんけども……」
「そ、そそそ、そういう問題じゃないにゃ! 順番の問題じゃないにゃ!」
コクリコは、キッと強い目を俺に向けた。
「てーと?」
「わかってるのにゃ!? 本当はわかってるのにゃ!? タスクさん! みゃーたちはその……!」
「もう夫婦になっちまってるのかって?」
「オブラートに包んでほしいにゃ!」
「なんで殴るの!?」
コクリコは俺の頬をおもいきりぶん殴ると(グーで)、毛布で身を包んだまま、身軽に床下へと飛び降りた。
「た、たしかめてくるにゃ……!」
走って寝室の外へ出た。
「痛え……」
殴られた頬を押さえていると……。
「だ、大丈夫! 大丈夫にゃ!」
コクリコはすぐに戻ってきた。
「まだ平気だったにゃ!」
勝訴でしたっ、みたいに明るい顔で戻ってきた。
「まだ ってーと……。あ。なるほど。つまりコクリコって処じ……」
「それ以上言うと殺すにゃ!」
ばふっと、俺の顔面を布状の何かが直撃した。
黒い布状の何か。
おそらくはネコ族用の、下半身に身に着ける……。
「これっておまえのパ……?」
「く……う……っ!? そ、そ、それ以上言うと殺すにゃ! そいつは間違って投げたのにゃ! わかったら、さっさとみゃーに返すのにゃ!」
おそらくは、勢いのままに手近にあったものを拾って投げつけてきたのだろう。
間の悪いことに、そいつがよりによって自分の下着だったと。
……さて、ここでちょっと想像していただきたい。
赤銅色の肌のネコ耳女子が全裸に毛布1枚で、しかも全力で恥じらっているという絵面だ。
特別ケモナーでない人でも、けっこうくる ものがあるだろう?
少なくとも俺にはきた。
もっとこのままのコクリコを見ていたい。
羞恥に頬を染め、声を荒げる彼女の姿を見ていたい。
ムクムクと嗜虐心が湧き上がってくる。
「え? なにを返すって? コクリコ」
「それにゃそれ! いまタスクさんの手にあるものにゃ!」
「おお、これか……」
コクリコの下着を、俺は広げてみた。
電灯の明かりにあててみる。
材質はシルクだろうか。なめらかないい手触りだ。
丸い穴があいていて、穴の周りはレースで縁取りされている。
これはおそらく尻尾穴だろう。
ここからコクリコの尻尾が出入りするわけだ。
「なんでしげしげと眺めてるにゃ! いいからとっとと返すのにゃ!」
「いやあでもさあ、コクリコ。これが本当におまえのだっていう証拠はどこにあるの?」
「にゃにゃ!?」
コクリコは、「何を言い出すんだこいつは?」というような顔をした。
「だってそうだろう。これはあくまでガリオン号の床に落ちていたものだ。現状この船にはおまえ以外に5人の女性が出入りしている。シロ、御子神、妙子、カヤさん、セリさん。その中の誰かのものでないと、どうして断言できる。名前が書いてるわけでもないのに」
「何を言ってるにゃ! それを他の人が履くわけないにゃ! 尻尾が生えている人は他にいないにゃ!」
「ここにいる」
俺は自分自身を指さし、不敵に笑った。
「俺にも生えてるぞ? 尻尾」
「こ……この……っ、こんな状況でなんて下ネタを……!」
コクリコは全身を小刻みに震わせた。
おお、いいよー。
怒ってる怒ってる。
いい表情してるねえ。
そんな顔されたらお兄さん、ますます張り切ってしまうわ。
「なあコクリコ。地球の童話にさ、こんなお話があるんだ。シンデレラっていうんだけどさ。ある日貧しい娘が、魔法使いやみんなの助けで美しく着飾って、お城のパーティーに出席したんだ。魔法が解ける午前零時ぎりぎりまで遊び倒した娘は、帰りに焦ってガラスの靴を落とすんだ。娘に恋をした王子様は、靴を頼りに娘を探した。多くの人が試したが、ぴったり合ったのはその娘だけだった。この話の教訓、わかるかコクリコ。──そうだ。つまり、本人のものかどうかは履いてみないとわからない」
「待て! 待つにゃ! その足をいますぐ止めるにゃ!」
パンツに片足を通そうとした俺に、コクリコは慌てて制止の声をかけてきた。
「みゃーに履かせてほしいにゃ! タスクさんよりも先に!」
「いいぜ? だけど条件がある」
「……条件?」
「自己申告はNGにしよう。なぜなら、多少合わなくても無理やりぴったりだと言い張ることができるからだ。俺の目の前で履き、フィット感を確認させること。それが条件だ」
「は……履いてみせろと……っ? タスクさんの目の前で……?」
「いやなら先に俺が……」
「わかった! わかったにゃ!」
再び足を通そうとした俺を、コクリコが全力で止めた。
「じゃあ条件」
「わかったにゃっ。その……みゃーが履くのを……見ていればいいにゃ……」
「いればいい? ずいぶんと上から物を言うんだなあおまえは。ええ? お願いしてるのはどっちなんだっけ?」
「うぅ……見ていて……ください……にゃ」
唇を噛み、目を逸らして屈辱に耐えるコクリコ。
「……ふうん、そういうことならしかたないな」
にやりと俺は笑い、床へと飛び降りた。
一歩一歩、ゆっくりとコクリコに歩み寄る。
下着の尻尾穴に指をひっかけ、くるくると回しながら。
「おっと、いきなり攻撃してくるのはなしだぜ? そんなことしたら俺は容赦しないからな。ズボッと履いてやる。穴を広げて、二度とおまえが履けないようにしてやる」
「おのれ……なんという脅しを……っ。お気に入りにゃのに……っ」
涙目で悔しがるコクリコ。
その生殺与奪は、いままさに俺の手の内にある。
最高だ。最高の構図だ。
「くくっ、くくくくく……っ」
こみ上げてきた笑いに肩を震わせていると……。
──ガチャリと、どこかで何かが開く音がした。
目を覚ますと、見慣れた天井があった。
ガリオン号の中だった。
2段ベッドが4つある、乗組員用の寝室。
一番奥の一番上の、俺のベッドだ。
天井に無数の写真が貼ってある。
「家族」の写真だ。
お袋、親父、姉貴。姉貴の飼い猫のトーラ。
この数か月で、その枚数は一気に増えた。
「家族」の数が、一気に増えた。
シロ、妙子、御子神、カヤさん。
そして……。
「むにゃあああん……」
コクリコの鳴き声がした。
「ふみぃいいいん……」
すぐ近くだ。
超々至近距離から聞こえてきた。
抱き枕に抱き付くように、コクリコは俺に抱き付いていた。
「えっと……」
腕が首に、太ももが太ももに巻き付いている。
赤銅色の肌が、
服を着ていない。パイロットスーツどころか、下着すらも着けていない。
毛布をめくるまでもなく、それはわかった。
頬が頬に、胸が脇腹に、下腹部が腰に触れている。時々擦れる。
俺たちの間には、なんの障害物もなかった。
昨夜彼女との間に何があったかを思い出そうとした。
たしかパブでキスをして、しこたま呑んで、ふたりノリノリで、肩を組んで歌いながら船に帰ってきて……そこから……そこから……覚えていない。
えっと……俺たちは
関係的には
仲良い友達か、それとも……。
「なあコクリコ……?」
おそるおそる呼びかけたが、コクリコはぴくりともしない。
繰り返し呼んだ。
ぺたぺたと頬を触った。
「おい、起きてくれよ、色々と問題がある。由々しき事態だ」
「ふみゅうううん……?」
「こら、そういう色っぽい声を出すんじゃない。……こらこら、耳を噛もうとしない。……え、尻尾を動かしてそんな……? やめろ、なんだそのテクは!」
コクリコの尻尾が俺の
「ええい、とにかく起きろ!」
ガツンと、容赦なく頭突きをくれた。
「──いった~い!!!!!?」
さすがに目を覚ましたコクリコ。
涙目になりながらおでこを押えた。
「ひどいにゃタスクさん! なんてことするにゃ!?」
にゃあにゃあと文句を言ってくる。
「オッケオッケ、苦情はあとで聞く。あとでまとめて謝る。いまはとにかくそれどころじゃないんだ。可及的速やかに、この状況を理解してくれ」
百万言を費やすよりもわかりやすかろうと、俺はふたりを覆う毛布をめくった。
互いの裸身が露わになった。
「ひゃっ? 寒っ……なにするにゃ……って……え……え……え……? ──えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!?」
コクリコは慌てて胸を覆った。
下半身を隠そうと手を伸ばして……それが俺の
「ふぎゃああああああああ!? なんで、なんで、なんでそんなことになってるのにゃ!?」
「いや、
「いやいやいや、なに冷静に語ってるにゃ! なんでちょっと男前な顔になってるにゃ! 賢者タイムか! 賢者タイムなのかにゃ!?」
俺から毛布を奪って体を隠したコクリコ。
つまり俺はいまだに全裸だ。
布一枚かけていない。生まれたままの姿だ。
「まあまあ落ち着け、コクリコ」
「これのどこをどう落ち着けっていうのにゃ!? むしろタスクさんはにゃんでそんにゃに落ち着いてるのにゃ!?」
「いやあなんというか……俺もさっきまではおまえと同じような状態だったんだけど、おまえが驚くのを見てたら、変に落ち着いちまった。なあ、そういうのってあるだろ?」
「わかるけどにゃ! たしかにそういうことあるけどにゃ! どう考えてもいまそうなるのはおかしいのにゃ! 落ち着いてる場合じゃないのにゃ! もっと隠すなりなんなりして欲しいのにゃ!」
「そうは言うがな。俺の体を覆う毛布はおまえが持っている。パイロットスーツはほれ、床の上だし」
そこにはふたりぶんのパイロットスーツが折り重なるようにして落ちていた。
周りには、やはりふたりぶんの服や下着が散乱している。
コクリコのチューブトップ、ミニスカート、下着類……。
「ふうううううっ!?」
その光景を目にして改めてショックを受けたのか、コクリコは全身の毛を逆立てた。
「下で脱いでから登ってきたのか、上で脱いでから下に投げ落としたのかはわからんけども……」
「そ、そそそ、そういう問題じゃないにゃ! 順番の問題じゃないにゃ!」
コクリコは、キッと強い目を俺に向けた。
「てーと?」
「わかってるのにゃ!? 本当はわかってるのにゃ!? タスクさん! みゃーたちはその……!」
「もう夫婦になっちまってるのかって?」
「オブラートに包んでほしいにゃ!」
「なんで殴るの!?」
コクリコは俺の頬をおもいきりぶん殴ると(グーで)、毛布で身を包んだまま、身軽に床下へと飛び降りた。
「た、たしかめてくるにゃ……!」
走って寝室の外へ出た。
「痛え……」
殴られた頬を押さえていると……。
「だ、大丈夫! 大丈夫にゃ!」
コクリコはすぐに戻ってきた。
「まだ平気だったにゃ!」
勝訴でしたっ、みたいに明るい顔で戻ってきた。
「
「それ以上言うと殺すにゃ!」
ばふっと、俺の顔面を布状の何かが直撃した。
黒い布状の何か。
おそらくはネコ族用の、下半身に身に着ける……。
「これっておまえのパ……?」
「く……う……っ!? そ、そ、それ以上言うと殺すにゃ! そいつは間違って投げたのにゃ! わかったら、さっさとみゃーに返すのにゃ!」
おそらくは、勢いのままに手近にあったものを拾って投げつけてきたのだろう。
間の悪いことに、そいつがよりによって自分の下着だったと。
……さて、ここでちょっと想像していただきたい。
赤銅色の肌のネコ耳女子が全裸に毛布1枚で、しかも全力で恥じらっているという絵面だ。
特別ケモナーでない人でも、けっこう
少なくとも俺にはきた。
もっとこのままのコクリコを見ていたい。
羞恥に頬を染め、声を荒げる彼女の姿を見ていたい。
ムクムクと嗜虐心が湧き上がってくる。
「え? なにを返すって? コクリコ」
「それにゃそれ! いまタスクさんの手にあるものにゃ!」
「おお、これか……」
コクリコの下着を、俺は広げてみた。
電灯の明かりにあててみる。
材質はシルクだろうか。なめらかないい手触りだ。
丸い穴があいていて、穴の周りはレースで縁取りされている。
これはおそらく尻尾穴だろう。
ここからコクリコの尻尾が出入りするわけだ。
「なんでしげしげと眺めてるにゃ! いいからとっとと返すのにゃ!」
「いやあでもさあ、コクリコ。これが本当におまえのだっていう証拠はどこにあるの?」
「にゃにゃ!?」
コクリコは、「何を言い出すんだこいつは?」というような顔をした。
「だってそうだろう。これはあくまでガリオン号の床に落ちていたものだ。現状この船にはおまえ以外に5人の女性が出入りしている。シロ、御子神、妙子、カヤさん、セリさん。その中の誰かのものでないと、どうして断言できる。名前が書いてるわけでもないのに」
「何を言ってるにゃ! それを他の人が履くわけないにゃ! 尻尾が生えている人は他にいないにゃ!」
「ここにいる」
俺は自分自身を指さし、不敵に笑った。
「俺にも生えてるぞ? 尻尾」
「こ……この……っ、こんな状況でなんて下ネタを……!」
コクリコは全身を小刻みに震わせた。
おお、いいよー。
怒ってる怒ってる。
いい表情してるねえ。
そんな顔されたらお兄さん、ますます張り切ってしまうわ。
「なあコクリコ。地球の童話にさ、こんなお話があるんだ。シンデレラっていうんだけどさ。ある日貧しい娘が、魔法使いやみんなの助けで美しく着飾って、お城のパーティーに出席したんだ。魔法が解ける午前零時ぎりぎりまで遊び倒した娘は、帰りに焦ってガラスの靴を落とすんだ。娘に恋をした王子様は、靴を頼りに娘を探した。多くの人が試したが、ぴったり合ったのはその娘だけだった。この話の教訓、わかるかコクリコ。──そうだ。つまり、本人のものかどうかは履いてみないとわからない」
「待て! 待つにゃ! その足をいますぐ止めるにゃ!」
パンツに片足を通そうとした俺に、コクリコは慌てて制止の声をかけてきた。
「みゃーに履かせてほしいにゃ! タスクさんよりも先に!」
「いいぜ? だけど条件がある」
「……条件?」
「自己申告はNGにしよう。なぜなら、多少合わなくても無理やりぴったりだと言い張ることができるからだ。俺の目の前で履き、フィット感を確認させること。それが条件だ」
「は……履いてみせろと……っ? タスクさんの目の前で……?」
「いやなら先に俺が……」
「わかった! わかったにゃ!」
再び足を通そうとした俺を、コクリコが全力で止めた。
「じゃあ条件」
「わかったにゃっ。その……みゃーが履くのを……見ていればいいにゃ……」
「いればいい? ずいぶんと上から物を言うんだなあおまえは。ええ? お願いしてるのはどっちなんだっけ?」
「うぅ……見ていて……ください……にゃ」
唇を噛み、目を逸らして屈辱に耐えるコクリコ。
「……ふうん、そういうことならしかたないな」
にやりと俺は笑い、床へと飛び降りた。
一歩一歩、ゆっくりとコクリコに歩み寄る。
下着の尻尾穴に指をひっかけ、くるくると回しながら。
「おっと、いきなり攻撃してくるのはなしだぜ? そんなことしたら俺は容赦しないからな。ズボッと履いてやる。穴を広げて、二度とおまえが履けないようにしてやる」
「おのれ……なんという脅しを……っ。お気に入りにゃのに……っ」
涙目で悔しがるコクリコ。
その生殺与奪は、いままさに俺の手の内にある。
最高だ。最高の構図だ。
「くくっ、くくくくく……っ」
こみ上げてきた笑いに肩を震わせていると……。
──ガチャリと、どこかで何かが開く音がした。