第九話 魔王があまりに強すぎる
文字数 2,121文字
勇者、踏み台の上で首を釣るのを躊躇していた。
勇者は驚いて台から足を踏み外し、自分の首に縄が巻き付く。
魔法使い、斬撃魔法で縄を断ち切る。
そして3人は、床に落ちた勇者を取り囲む。
うち沈む勇者は、ぽつりぽつりと語り始めた。
その予想外の成り行きに、取り囲む3人は息をのむ。
仮に暗殺したあと永遠に雲隠れするつもりなら、おそらく追っ手からは逃げ延びられるだろう。だがその後の俺たちはもう公衆の面前に出られず、官憲に追われて暗がりで生き延びるだけの生活を余儀なくされるだろうな。
やっぱり、借りたお金は返さなくちゃ……なんですね。もちろん私が借りたわけじゃないですけど、武器屋『ドリームアームズ』がちゃんと銀行と契約を交わして背負った借金ならば、代表になってしまった以上、支払わなくてはならない義務がある……。勇者を任されている私としては、社会の決まりを反故にすることなんてできません……。