第3話 左側一世死す!
文字数 2,366文字
穴の中に入ると真っ暗で何も見えなかった。でもおじさんがどこにいるのかはなんとなくわかった。これも白の宝珠の力なのだろうか。しばらく進むと光が見えた。
その先は何かの建物の中だった。
「気をつけなさい光一郎くん。ここは敵の根城だ。どこから何が襲ってくるかわからない。」
おじさんがそう言った次の瞬間、何処からか矢のようなものが飛んできた。
あたりを見渡すと既に囲まれていたらしい。
「おじさん。こんなにも化け物がいるよ。だ、大丈夫なの。」
「心配ないよ光一郎くん。君に渡したその白の宝珠は先程も言ったかもしれないが、神の力をもつ。すなわちそれを手にした人間は神の如き力を手にすることができる。
君の思う正義を心に描きたまえ。そうすればこんな奴らなど軽く一掃できる。」
おじさんは穏やかだった。
だが、それは僕に対してだけだ。敵には容赦なく力を解放し、100はいる怪物たちを圧倒した。
「神雷閃!」「神・剛焼剣!」「退魔斬!」
と叫びながら敵を斬り倒した。
どうやらおじさんは必殺技の名前を叫ぶタイプの人だったようだ。
僕が何もしないまま、いつのまにか周りの敵全てが斬られていた。
「ふう。久しぶりに敵の大軍と戦って年甲斐もなく興奮してしまったわい。光一郎くん。このまま敵の親玉の所へ向かおうか。」
もしかして僕はいなくても良かったんじゃないだろうか。おじさんだけで敵を全員やっつけちゃえるんじゃないの。
そう思っていた。
奴に出逢うまでは。
僕とおじさんは大きな扉の前に来た。寒気を感じさせるその扉の向こうに僕らの倒すべき奴がいる。
どれだけ恐ろしいのかはおじさんの表情で分かった。
「光一郎くん。覚悟はいいかね。まだ子供の君には酷なことだが、今から対峙する敵はさっきの雑魚どもとは比べ物にならん程の強さをほこる。
正直生きて帰ることができるだけで運が良かったと言えるだろう。」
僕は頷いた。怖いけど戦うんだ。力を持たない他の人達が酷い目に会う前に。
扉は開いた………………………
中に入ると扉は勝手に閉じた。暗闇の中を進むと不意に明かりがついた。
僕らの周りを無数のロウソクの火が囲んだ。そして目の前に黒い影が現れた。
そいつを目の前にした時の悪寒といったらない。
自分に神と同じ力があるといったって、まだ何もしていないから分からないし例え宝珠の力を使ったとしても勝てないだろう。
おそらくではない。
黒い影の姿はローブをまとったドクロの男となった。
「我が城にようこそ、左側一世。そして初めましてと言うべきかな、人間の子よ。
我が名は妖魔帝王ミルベウス。君たちを支配するものだ。」
その声はおぞましかった。穏やかであるのに少しの暖かさも感じさせない、真冬の氷のようであった。
「何が支配するものだ!我々はそれを阻止すべく、宝珠を取り返すべくここへ来たのだ。貴様の企みもここまでよ。」
そう言っておじさんはミルベウスに斬りかかり、無数の剣撃を浴びせた。
だが剣が空振った音が虚しく響いただけであった。
「どうした左側一世。そんな速さではこのローブにかすりさえもしないぞ。まさかわざわざここまで芸を見せに来たのか?」
敵の余裕におじさんは舌打ちをした。
「光一郎くん、離れていなさい!」おじさんは再びミルベウスに斬りかかった。
そこからの攻防は凄まじかった。2人の動きを目で追うことができない。小学生の僕にとっては正に神々の戦いであった。
だけど、僕にも敵と戦う力はある、あるけれど戦えない。恐ろしかった。
ミルベウスの放つ吐き気がするまでものプレッシャーも、先程までの穏やかだったおじさんの見せる表情も。
必死さの為か、おじさんは必殺技を叫ばなかった。
勝負の決着がついた。ミルベウスがおじさんを締め上げて動きを止めたからだった。
「ふん。なかなかに手強かったが左側一世、貴様も所詮この私の敵ではない。」
左側一世の身体はボロボロであった。例えここでミルベウスが死んだとしても無事に地上へ戻ることができるとは言えない程に。
「こ…光一郎くん、白の宝珠の力を放つんだ…。君はその力を使うことができるんだ。勇気を持て…。」
「ほう、まだ息があるようだな。どれ、叫び声を上げることができるか試してやろう。」
ミルベウスは息を切らしながら僕を励ましてくれるおじさんの足を折った。
「うぐぅっ」という唸り声を聞いて僕は我慢ができなくなった。
「でももし宝珠のパワーを使えたとしてもおじさんも巻き込んでしまうよ。」
「安心せい…、白の宝珠の攻撃を食らってもわしは死なん!…撃て。お前の正義をこいつにぶつけるんだ…。」
「ふふふ、例え撃ったところで何も変わらん。貴様らが死ぬだけよ。」
僕は白の宝珠を握りしめてミルベウスの不敵な笑み目掛けて撃った。それは白い光線だった。
だが奴は片手でそれを弾き返してしまった。
「所詮は人間のガキよ。左側一世とともに砕け散るがいい!」
奴の腕から放たれた赤い光はおじさんの身体を貫いた。
「ふふふふ、私の目的は宝珠を全て揃えることだが左側一世、私に近い力を持つ貴様を殺すことは我が目標の一歩なのだ。死ね!!」
「光一郎くん、安心するがいい。私は死ぬことはない。これから君は成長する。きっとわしを超えるだろう。」
そう言っておじさんは無数の光の球となって消えた。
「必殺技の名前を考えたまえ。結構楽しいぞ。」
その言葉を最後におじさんの声は二度と聞こえなくなった。
「これから成長するだと?それはない。小僧も死ぬからだ。」
ここは声がよく響く。奴の冷たい声が僕の全身を凍らせた。
その先は何かの建物の中だった。
「気をつけなさい光一郎くん。ここは敵の根城だ。どこから何が襲ってくるかわからない。」
おじさんがそう言った次の瞬間、何処からか矢のようなものが飛んできた。
あたりを見渡すと既に囲まれていたらしい。
「おじさん。こんなにも化け物がいるよ。だ、大丈夫なの。」
「心配ないよ光一郎くん。君に渡したその白の宝珠は先程も言ったかもしれないが、神の力をもつ。すなわちそれを手にした人間は神の如き力を手にすることができる。
君の思う正義を心に描きたまえ。そうすればこんな奴らなど軽く一掃できる。」
おじさんは穏やかだった。
だが、それは僕に対してだけだ。敵には容赦なく力を解放し、100はいる怪物たちを圧倒した。
「神雷閃!」「神・剛焼剣!」「退魔斬!」
と叫びながら敵を斬り倒した。
どうやらおじさんは必殺技の名前を叫ぶタイプの人だったようだ。
僕が何もしないまま、いつのまにか周りの敵全てが斬られていた。
「ふう。久しぶりに敵の大軍と戦って年甲斐もなく興奮してしまったわい。光一郎くん。このまま敵の親玉の所へ向かおうか。」
もしかして僕はいなくても良かったんじゃないだろうか。おじさんだけで敵を全員やっつけちゃえるんじゃないの。
そう思っていた。
奴に出逢うまでは。
僕とおじさんは大きな扉の前に来た。寒気を感じさせるその扉の向こうに僕らの倒すべき奴がいる。
どれだけ恐ろしいのかはおじさんの表情で分かった。
「光一郎くん。覚悟はいいかね。まだ子供の君には酷なことだが、今から対峙する敵はさっきの雑魚どもとは比べ物にならん程の強さをほこる。
正直生きて帰ることができるだけで運が良かったと言えるだろう。」
僕は頷いた。怖いけど戦うんだ。力を持たない他の人達が酷い目に会う前に。
扉は開いた………………………
中に入ると扉は勝手に閉じた。暗闇の中を進むと不意に明かりがついた。
僕らの周りを無数のロウソクの火が囲んだ。そして目の前に黒い影が現れた。
そいつを目の前にした時の悪寒といったらない。
自分に神と同じ力があるといったって、まだ何もしていないから分からないし例え宝珠の力を使ったとしても勝てないだろう。
おそらくではない。
黒い影の姿はローブをまとったドクロの男となった。
「我が城にようこそ、左側一世。そして初めましてと言うべきかな、人間の子よ。
我が名は妖魔帝王ミルベウス。君たちを支配するものだ。」
その声はおぞましかった。穏やかであるのに少しの暖かさも感じさせない、真冬の氷のようであった。
「何が支配するものだ!我々はそれを阻止すべく、宝珠を取り返すべくここへ来たのだ。貴様の企みもここまでよ。」
そう言っておじさんはミルベウスに斬りかかり、無数の剣撃を浴びせた。
だが剣が空振った音が虚しく響いただけであった。
「どうした左側一世。そんな速さではこのローブにかすりさえもしないぞ。まさかわざわざここまで芸を見せに来たのか?」
敵の余裕におじさんは舌打ちをした。
「光一郎くん、離れていなさい!」おじさんは再びミルベウスに斬りかかった。
そこからの攻防は凄まじかった。2人の動きを目で追うことができない。小学生の僕にとっては正に神々の戦いであった。
だけど、僕にも敵と戦う力はある、あるけれど戦えない。恐ろしかった。
ミルベウスの放つ吐き気がするまでものプレッシャーも、先程までの穏やかだったおじさんの見せる表情も。
必死さの為か、おじさんは必殺技を叫ばなかった。
勝負の決着がついた。ミルベウスがおじさんを締め上げて動きを止めたからだった。
「ふん。なかなかに手強かったが左側一世、貴様も所詮この私の敵ではない。」
左側一世の身体はボロボロであった。例えここでミルベウスが死んだとしても無事に地上へ戻ることができるとは言えない程に。
「こ…光一郎くん、白の宝珠の力を放つんだ…。君はその力を使うことができるんだ。勇気を持て…。」
「ほう、まだ息があるようだな。どれ、叫び声を上げることができるか試してやろう。」
ミルベウスは息を切らしながら僕を励ましてくれるおじさんの足を折った。
「うぐぅっ」という唸り声を聞いて僕は我慢ができなくなった。
「でももし宝珠のパワーを使えたとしてもおじさんも巻き込んでしまうよ。」
「安心せい…、白の宝珠の攻撃を食らってもわしは死なん!…撃て。お前の正義をこいつにぶつけるんだ…。」
「ふふふ、例え撃ったところで何も変わらん。貴様らが死ぬだけよ。」
僕は白の宝珠を握りしめてミルベウスの不敵な笑み目掛けて撃った。それは白い光線だった。
だが奴は片手でそれを弾き返してしまった。
「所詮は人間のガキよ。左側一世とともに砕け散るがいい!」
奴の腕から放たれた赤い光はおじさんの身体を貫いた。
「ふふふふ、私の目的は宝珠を全て揃えることだが左側一世、私に近い力を持つ貴様を殺すことは我が目標の一歩なのだ。死ね!!」
「光一郎くん、安心するがいい。私は死ぬことはない。これから君は成長する。きっとわしを超えるだろう。」
そう言っておじさんは無数の光の球となって消えた。
「必殺技の名前を考えたまえ。結構楽しいぞ。」
その言葉を最後におじさんの声は二度と聞こえなくなった。
「これから成長するだと?それはない。小僧も死ぬからだ。」
ここは声がよく響く。奴の冷たい声が僕の全身を凍らせた。