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文字数 436文字



日差しが心地よくて
思わず遠回りして帰る
その道は少しきつめの上り坂
少し前までは避けて通っていた
しんどくて歩幅は狭まり
息が上がって視線は下を向く
途中で見上げると
どこまでも終わりのない
錯覚とわかっているのに
うんざりとした絶望感に
途方に暮れていた気がする
誰かにいつの間にか抜かされ
背負う荷物もいつもより
重く感じるのは
疲れからなのか焦りからなのか
わからないままに登り続ける
不甲斐なさを目の当たりにしながら
その心の葛藤の落とし所が
わからなくなって避けていた
たった一駅電車を使い
平な道を選んで歩いて
気がつけばそれでも息が上がる
歳のせいじゃない
体力のせいじゃない
そう思いたくなって
久しぶりに向かったその坂は
大して急でもなく長くもなく
むしろ歩きやすいくらいの
緩やかな道だった
そうか衰えていたのは
体ではなく心の中だった
逃げではなくトライすることすら
諦めていたいたその弱さだった
今じゃ遅いものももちろんあるけど
今からだって遅くないものも
同じくらいある事に気づいたら
目の前の坂道が少し楽しくなった
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