【ほろ苦ファンタジー】Take me to the emptiness.
文字数 364文字
気づくと見知らぬ街にいた。月明かりのない夜、目の前には煌びやかなメリーゴーランドが緩やかに回転している。その光景に、違和感を覚える。ああそうだ。このメリーゴーランドは無音で無人。誰も乗せず、誰も楽しませず、自身の意味を忘れて回っていた。
ふと、誰かに名前を呼ばれた。
こんばんは。僕はメリー。みんなを楽しませる達人だよ。
君もこれに乗りたいのかい。
いいよ。大丈夫さ、大人も乗れる。
でもどうして?君は笑い方を忘れちゃったの?
でもどうして?なぜここにいるの?
君は、
うん?何もかも忘れたいって?
そっか。じゃあ、ここで僕と一緒に自由を味わおうよ。
夢想という名の自由だよ。
乗りたいのなら、お好きにどうぞ。
僕は誰も拒みはしない。
さあ、一緒に笑おうよ。