プロット

文字数 1,593文字

こんな担任は嫌だ、どんな担任? プロット

起)
 「自称進学校」と呼ばれるような、とある県立高校。この高校では4月から、県内でも偏差値下位のとある高校の進学実績を大きく伸ばしたと有名な教師が異動してくる。主人公のその教師の名は大澤真司、30歳。大澤は文系クラスの3年1組の担任をすることが決まった。1組の生徒たちは「今まで以上に宿題や小テストが増えるのかな…」と大きな不安を皆抱いていた。クラスの担任になって2週間ほどしたのち、大澤は「もう朝の小テストは廃止しましょう」と提案した。大澤は小テストの代わりに金曜日は読書、それ以外の曜日は大喜利を行うことを提案した。
 大喜利に懐疑的な顔をする生徒を見て、大澤は大喜利の意義を説明する。授業開始前に頭を柔らかくするため。そして何より、学校という閉塞的な社会で生きている子たちに、もっと外の大きな社会に関心を持ってもらうため。大喜利は世に溢れる莫大なワードの中から、お題にうまくハマるものを選ぶ。「ヤバい」「キモい」、そんな人間を脳死させるような言葉ではなく、もっと多様な言葉をたくさん覚えて欲しい。それが大澤の願いだった。

承)
 担任として3週間ほど生徒と過ごすうち、大澤は将来の夢は放送作家の前川という男の子が一部のクラスメイトからイジメを受けていることが分かった。前川は家庭が極めて貧乏であることを理由にイジメられていた。一方で、その前川の大喜利の解答は秀逸で、素晴らしいワードセンスや発想力を持っていた。大澤は彼の長所でもある大喜利を使ってイジメを無くすことを決意する。大澤はクラスの中で優秀な大喜利の解答をいくつか発表する場を設けることにし、前川の解答の凄さをしっかり伝えた。最初はいじめられっ子の解答ということもあり、微妙な反応のクラスメートたちだったが、いつしか前川の解答に自然に爆笑が生まれるようになった。前川は極度の人見知りだったが、なんとか居場所を掴んだ。

転)
 そんな前川だったが、進学資金がないため大学はもとより、専門学校にも行かず、高卒で放送作家を目指すと言い出した。大澤と前川の母親との三者面談にて、「将来のためにも、いい作家仲間を見つけるためにも進学したほうがいい」と、大澤は説得した。しかし前川家は代理人を立てられず奨学金を借りるのも厳しかった。自分のことは自分で解決する。前川はその意志を持ち、進学資金を貯めるべく、学校の許可を得てアルバイトを始めようとした。しかし、極度の人見知りが災いし、どのバイトも面接で落選してしまった。大澤に励まされ、前川は大喜利コンペへ多数参加することを決意。
 そんな中、前川には秘密裏に大澤と3年1組は、皆で校長に直談判しクラスの大喜利回答集を商業出版することを決める。前川の進学資金として集めるべく動いた。クラスの保護者を集め、事情を話す場を設けた。クラスの親の一部から「子供の勉強時間を奪わないで」など厳しい声もあったが、生徒たちのクラスメイトを助けたいという気持ちに押され、止む無く同意した。

結)
 前川は大喜利コンペの賞金を30万円ほど獲得したが、まだ専門学校の学費・入学金を考えると少し足りない。願書締切が迫り、落ち込む前川の前にクラスメイトが笑顔でやってくる。
「前川君には秘密でね、私たち3年1組の大喜利を本にして売り出してみたんだけど…結構売れちゃった!」。
 売上明細を確認した前川は泣いて喜んだ。
「ありがとう。本当にありがとう。あとは来年、自分で稼いで何とかできそうだよ」
「その前に、ちゃんと人見知り治しなよ!」
 
 そして十数年後、大澤は久しぶりに前川と街で会う。前川は、売れっ子放送作家兼テレビディレクターという2足のわらじで頑張っていた。
「こんな担任は嫌だ、どんな担任?」
 大澤の突然の問いに、前川は笑顔で答える。
「いきなり『大喜利やろう!』とか言いだす先生ですかね」

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