第2話 ふたりだからこそ

文字数 1,396文字

翌日の放課後、ニカの校内用スマホと、リュカの校内用スマホが光った。担任のクロエ先生からである。
用件は、すぐに応接室に来てほしい、とのこと。
リュカとニカは、とっさに、職員室でなく"応接室"ということは、他の生徒に知られてはならないということなのだろうと察し、ひとりずつ時間をずらして行くことにした。
リュカが先にクロエ先生の居る応接室に着くと、間隔を5分ほどあけてニカが入室した。
「これでふたりとも揃ったわね」
「「はい」」
「じゃあ、話を始めるから、よく聞いてね」
「「はい」」
クロエ先生によれば、最近、闇属性を悪用した魔法使いと妖精のコンビが、ロンドンを混乱に陥れようとしているという。
「その闇の魔法使いの名前とか、性別はわかってるんですか?」
リュカが聞く。
「えぇ。今わかっているのは、先ず魔法使いの名前なんだけど、ヒュー・ザックといって、名前だけ聞くと男みたいだなって思うでしょうけれど、どうも女のようでね。性格は、まぁ、魔法を悪用するぐらいだからね、結構いびつで、嫌がらせをしたり、悪事を悪事と知りながらやることに快感を覚えるらしいのよ」
「事件とかは?」
「ないわね。あっても軽犯罪。つかまらない程度に楽しんでるみたいよ。腹立たしいわね」
「ちなみに、その女の年齢は?」
「27歳らしいわよ。ロンドン市警の捜査によれば」
「27でそんなことしてるなんて・・・・・・。情けなく思わないのかしら、その、ザックとかいう女の人」
憤るリュカ。
「それにしても、そのザックって女の人の話と、わたしたち、何の関係があって、今日はこの部屋に呼ばれたのでしょう?」
「あなたたちの、互いにないものを補い合うスタイルと、その強い絆で、ロンドンの平和を一緒に守ってほしいって、実はあなたたちを呼び出すまでタナカ警部と話していたのよ」
「タナカ警部は何とおっしゃっていたのですか?」
「警部はね、"我々ロンドン市警だけではいたちごっこのままで、いつまで経ってもらちがあかないから、二人が有能なら是非とも手伝ってほしい"って、言ってたわよ」
有能、という言葉に、リュカが反応する。
「待って。私、有能じゃないわ。良くて普通ぐらいの成績と頭脳しかないのに」
「でも、実技で怪我したときにリュカお手製の魔法薬塗ったら、すぐ直ったわよ」
すかさず、ニカがフォローする。
「少なくとも、魔法薬学の知識と技術は確かだと思うわよ」
「私の微々たる知識と技術が活きるなら・・・・・・」
俯きがちに、リュカが言った。
「決まりね! じゃあ、これからここへ向かってくれる?」
クロエ先生は、スーツジャケットの内ポケットから、小さな白い紙を取り出し、広げてふたりに見せてくれた。
場所は、ロンドン市内の、元々はレストランだった店の廃墟。
「ここですか・・・・・・」
ニカは白い紙に書かれた住所を見ながら呟く。
「まだここがレストランだった頃、フィッシュアンドチップスを食べた記憶がありますね。店内は掃除が行き届いていて、内装自体、とてもオシャレで素敵だったなぁ。店の名前も"フィッシュ・アンド・チップス"だったし」
「じゃ、ニカは知ってるみたいだから、リュカはニカに着いていく形で、よろしくお願いね」
そして、ふたりの生徒と担任の先生の会議は終わった。
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