【読書日記】山尾悠子 歪み真珠

文字数 512文字

ことさらに山尾悠子のファンというわけではないが作品数も少ないので実は結構読んでいる作家さん。

日本の現代幻想文学の大家である彼女の作品の魅力は荒唐無稽のダイナミズム。言うまでもないが、とにかく文体が硬質で美しい。しかし、物語の構造は繊細というより力強さを感じるのだ。

歪み真珠のなかの美神の通過ではヴィーナスが荒野にあらわれるときいた街の女性たちが荒野に殺到する。しかし、あらわれた美神は大理石の台座に座っており、台座に当たると怪我するので急いで逃げ惑う。遠くから見ていた人も肝心のヴィーナスの姿がいまいち曖昧模糊としていて、思ってたのと違う感を抱えたまま荒野は静かさを取り戻し物語が終わっていく。ヴィーナスは神なので仕方ないです。

僕が個人的に好きなのはマクスとベルガマスク。美少年と美少女の兄妹は互いに衣服を交換し合う仲。美しいことに性別は関係ない。男か女かよく分からないものはなんでこんなに美しいのか。踊る二人と白タイツに包まれた足が交錯する。二人は古い音楽のなかに逃げ込む。彼らもしくは彼女らはその登場人物なのだ。死をも超越した美しさは世界を置き去りにする。ああロマン。こういう作品は本当に性癖なのであったら教えて欲しい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み