番外編②-15 – 上司
文字数 2,752文字
「(ここは……D–3ビル地下4階の麻薬オークションが行われた会場か)」
藤村はステージ中央に佇み、ヴィンヤード形式のコンサートホール360度を見渡す。すると会場の照明から成される影から突如、複数のSHADOWが形成されて藤村に話しかける。
「あの2人、置いてきて大丈夫?」
「あぁ?」
藤村は大量のSHADOWを観察しながら答える。
「あの2人、確実にGOLEMに殺されるよ? 分かってたんだろう? "第六感 "使ってたみたいだし」
藤村はSHADOWの言葉を聞いた瞬間に鼻で笑って脱力し、煙草とライターを取り出して煙草に火をつけ、口に咥える。煙草を数回、蒸 した後に複数のSHADOWたちにその煙草を向けながらニッと笑って告げる。
「あいつらは負けねー。あんまり俺の部下をなめんなよ?」
––––ゴゴゴゴ……
藤村とSHADOWは互いにサイクスの出力を上げる。
「良い上司のフリ?」
SHADOWの小馬鹿にした質問に対して藤村は返答する。
「バーカ、良い上司なんだよ」
「はっ、面白い冗談」
大量のSHADOWが藤村に向けて襲いかかる。
––––数秒後
「(一体……何が起こった…… ?)」
SHADOWは藤村との問答を終えたその僅か数秒後、"深淵の入り口 "によって創り出した自身の影による分身34体が消え去った。
「(この僅か一瞬で? 30体以上を創り出したんだぞ!?)」
––––ピッ
その時、SHADOWの仮面の頬をサイクスのエネルギー弾が掠めてそこからパラパラと破片がこぼれ落ちる。その銃弾は仮面の中のSHADOWの頬に達しており、鋭い痛みがSHADOWに走り、そこから流れる血の感触が仮面の中のSHADOWの頬を伝う。
SHADOWは銃弾が飛んできた方向、即ち藤村の方を見る。
「おいおい、真面目に撃ってたら今ので死んでたぞ? お前」
余裕の表情で笑みを浮かべる藤村がSHADOWを挑発する。
「期待して本体は後回しにしてたのに、こんなんじゃあ期待外れも良いところだぞ?」
藤村は1度言葉を切り、右手に持った"八方美人 "の銃口を向けながら左手で咥えていた煙草を口元から外し、煙を吐いて再び話し始める。
「俺を楽しませてみろよ。不協の十二音さんよ。何も一方的に楽しむのがお前らの専売特許ってわけじゃないんだぜ?」
藤村のサイクスと捉えきれなかった彼の動きにたじろぎながらもそれ以上に藤村のその余裕に満ちた態度に怒りを覚えたSHADOWはステージ以外の照明を消し去る。
「安心しろよ。他にもリソースを割いてた分、フルパワーじゃないんだよ」
––––"深淵の入り口 "解除……!
SHADOWは藤村に対して全力で臨むためにD–1ビル、D–2ビル、本部ビルなど、これまで"深淵の入り口 "を発動していた場所を解除する。
それと同時にD–2ビルに突如6階が出現し (それまで5階までしかD–2ビルには存在していなかった)、別空間へと飛ばして匿 っていたDEEDの残党が出現する。(彼らは何が起こったのか理解できずに軽いパニックとなり、脱出のために階下へと向かう途中に花の"第六感 "に検知された)
「(藤村の超能力に関する情報収集? 冗談じゃない! 本気でやらなきゃこっちが殺される……!)」
SHADOWが全力で藤村を殺しにかかろうと決めた瞬間である。
藤村はそんなSHADOWに対しても自分のペースを崩さず、"八方美人 "を1度ホルスターに収納し、スーツの左の内ポケットからシリンダータイプの携帯灰皿に煙草をしまう。
「やけに余裕だね」
藤村は携帯灰皿を再び内ポケットにしまって新たな煙草に火をつけながら返答する。
「その辺に吸い殻を捨てんなってうるさいんだよ」
「現場で煙草吸ってるくせに何言ってんだか」
藤村はライターの蓋をキンッと音を立てながら閉めた後に答える。
「こりゃ1本取られたね」
藤村が言い終わらないうちにSHADOWは強力なサイクスを纏い、その周辺に影が渦巻く。
「さて、この煙草を俺が吸い終わるまでお前は耐えられるかな?」
藤村はSHADOWを挑発するかのように言い放つ。
#####
「はい、こちら月島。花さんどうされましたか?」
愛香は花からの着信を取って応答する。
「愛香、第三地区高等学校職員の身体刺激型超能力者は既にリスト化してあるのよね?」
「はい」
愛香はPCから第3地区高等学校のデータを検索しながら自身の記憶の中からリストを浮かべる。
「その中で政府に届出をしていない者は?」
「伊藤 戒 、内倉 祥一郎 、東 寿人 、窪田 蘭 、浮田 涼子 、門田 桜 の6人です」
愛香は花の質問に対して即答する。
「OK。その6人の名前、私の端末にも送っておいて」
その時、範囲を広げておいた"第六感 "がDEEDの残党を花の近くで検知した。
「(チッ、面倒ね)」
花は愛香にGOLEMに対して"私とあなたの秘密 "が発動しなかったことからGOLEMは第三地区高等学校の職員である可能性が高いことを説明する。
「愛香、今挙げてくれた6人の現在の居所を至急確認して! 私は突然出現したDEEDの残党を片付けながら情報収集に取り掛かる」
「了解」
愛香は電話を切った後に玲奈に経緯を説明する。
「学校機関は既に夏季休業に入っていて今日は土曜。職員の数は少ないわね」
愛香は記憶の中から部活動の顧問を務める職員をピックアップする。更に瑞希が高校から配布されたデータの中から8月17日に活動している部活動を特定する。
「伊藤、浮田、門田、内倉の4人は部活動の顧問を務めていて、伊藤と浮田が務めるサッカー部と吹奏楽部は今日活動してる」
その時、愛香と玲奈の背後から杉本が声をかける。
「月島さんさんは第三地区高校へ連絡して該当する2人が学校に来ているのかを確認。坂口さんは管理委員会にこの事を連絡して残り4人の登録IDへのアクセス許可申請をして下さい」
「了解です」
玲奈は直ぐさま管理委員会に連絡を入れに行く。
「月島さん、内倉祥一郎は妹さんが籍を置いている1年1組の担任の方ですね?」
「はい、そうです」
「恐らく妹さんは内倉先生の緊急連絡先をお持ちですね? そのデータ、月島さんはお持ちですか?」
「はい。私のプライベート端末の方に」
「僕の端末に送信して下さい」
愛香は直ぐに杉本の端末にデータを送信する。
「どうもありがとう。ここからそう遠くないですね。僕は内倉先生を尋ねましょう」
杉本は愛香の不安そうな表情を察して告げる。
「月島さんは高校への連絡を優先して下さい」
杉本はそう言うと部屋を後にした。
藤村はステージ中央に佇み、ヴィンヤード形式のコンサートホール360度を見渡す。すると会場の照明から成される影から突如、複数のSHADOWが形成されて藤村に話しかける。
「あの2人、置いてきて大丈夫?」
「あぁ?」
藤村は大量のSHADOWを観察しながら答える。
「あの2人、確実にGOLEMに殺されるよ? 分かってたんだろう? "
藤村はSHADOWの言葉を聞いた瞬間に鼻で笑って脱力し、煙草とライターを取り出して煙草に火をつけ、口に咥える。煙草を数回、
「あいつらは負けねー。あんまり俺の部下をなめんなよ?」
––––ゴゴゴゴ……
藤村とSHADOWは互いにサイクスの出力を上げる。
「良い上司のフリ?」
SHADOWの小馬鹿にした質問に対して藤村は返答する。
「バーカ、良い上司なんだよ」
「はっ、面白い冗談」
大量のSHADOWが藤村に向けて襲いかかる。
––––数秒後
「(一体……何が起こった…… ?)」
SHADOWは藤村との問答を終えたその僅か数秒後、"
「(この僅か一瞬で? 30体以上を創り出したんだぞ!?)」
––––ピッ
その時、SHADOWの仮面の頬をサイクスのエネルギー弾が掠めてそこからパラパラと破片がこぼれ落ちる。その銃弾は仮面の中のSHADOWの頬に達しており、鋭い痛みがSHADOWに走り、そこから流れる血の感触が仮面の中のSHADOWの頬を伝う。
SHADOWは銃弾が飛んできた方向、即ち藤村の方を見る。
「おいおい、真面目に撃ってたら今ので死んでたぞ? お前」
余裕の表情で笑みを浮かべる藤村がSHADOWを挑発する。
「期待して本体は後回しにしてたのに、こんなんじゃあ期待外れも良いところだぞ?」
藤村は1度言葉を切り、右手に持った"
「俺を楽しませてみろよ。不協の十二音さんよ。何も一方的に楽しむのがお前らの専売特許ってわけじゃないんだぜ?」
藤村のサイクスと捉えきれなかった彼の動きにたじろぎながらもそれ以上に藤村のその余裕に満ちた態度に怒りを覚えたSHADOWはステージ以外の照明を消し去る。
「安心しろよ。他にもリソースを割いてた分、フルパワーじゃないんだよ」
––––"
SHADOWは藤村に対して全力で臨むためにD–1ビル、D–2ビル、本部ビルなど、これまで"
それと同時にD–2ビルに突如6階が出現し (それまで5階までしかD–2ビルには存在していなかった)、別空間へと飛ばして
「(藤村の超能力に関する情報収集? 冗談じゃない! 本気でやらなきゃこっちが殺される……!)」
SHADOWが全力で藤村を殺しにかかろうと決めた瞬間である。
藤村はそんなSHADOWに対しても自分のペースを崩さず、"
「やけに余裕だね」
藤村は携帯灰皿を再び内ポケットにしまって新たな煙草に火をつけながら返答する。
「その辺に吸い殻を捨てんなってうるさいんだよ」
「現場で煙草吸ってるくせに何言ってんだか」
藤村はライターの蓋をキンッと音を立てながら閉めた後に答える。
「こりゃ1本取られたね」
藤村が言い終わらないうちにSHADOWは強力なサイクスを纏い、その周辺に影が渦巻く。
「さて、この煙草を俺が吸い終わるまでお前は耐えられるかな?」
藤村はSHADOWを挑発するかのように言い放つ。
#####
「はい、こちら月島。花さんどうされましたか?」
愛香は花からの着信を取って応答する。
「愛香、第三地区高等学校職員の身体刺激型超能力者は既にリスト化してあるのよね?」
「はい」
愛香はPCから第3地区高等学校のデータを検索しながら自身の記憶の中からリストを浮かべる。
「その中で政府に届出をしていない者は?」
「
愛香は花の質問に対して即答する。
「OK。その6人の名前、私の端末にも送っておいて」
その時、範囲を広げておいた"
「(チッ、面倒ね)」
花は愛香にGOLEMに対して"
「愛香、今挙げてくれた6人の現在の居所を至急確認して! 私は突然出現したDEEDの残党を片付けながら情報収集に取り掛かる」
「了解」
愛香は電話を切った後に玲奈に経緯を説明する。
「学校機関は既に夏季休業に入っていて今日は土曜。職員の数は少ないわね」
愛香は記憶の中から部活動の顧問を務める職員をピックアップする。更に瑞希が高校から配布されたデータの中から8月17日に活動している部活動を特定する。
「伊藤、浮田、門田、内倉の4人は部活動の顧問を務めていて、伊藤と浮田が務めるサッカー部と吹奏楽部は今日活動してる」
その時、愛香と玲奈の背後から杉本が声をかける。
「月島さんさんは第三地区高校へ連絡して該当する2人が学校に来ているのかを確認。坂口さんは管理委員会にこの事を連絡して残り4人の登録IDへのアクセス許可申請をして下さい」
「了解です」
玲奈は直ぐさま管理委員会に連絡を入れに行く。
「月島さん、内倉祥一郎は妹さんが籍を置いている1年1組の担任の方ですね?」
「はい、そうです」
「恐らく妹さんは内倉先生の緊急連絡先をお持ちですね? そのデータ、月島さんはお持ちですか?」
「はい。私のプライベート端末の方に」
「僕の端末に送信して下さい」
愛香は直ぐに杉本の端末にデータを送信する。
「どうもありがとう。ここからそう遠くないですね。僕は内倉先生を尋ねましょう」
杉本は愛香の不安そうな表情を察して告げる。
「月島さんは高校への連絡を優先して下さい」
杉本はそう言うと部屋を後にした。