1日目の邂逅5 新事実!?宇宙人は隕石に乗ってやってくる!

文字数 5,432文字

 穴の中は明るくて周りを見渡すと星々が輝いていて宇宙のようになっていた。
 プラネタリウムって奴だ。僕の身体はゆっくり落下していく。
 僕が感心していると僕を明るい光が包む。
 次の瞬間風景が変わった。
 今度は彩色豊かな光の木に囲まれた森のような場所に出た。
 こうやって色々風景が変わるんだろうなと思っていると……。
あれ?
地面に足がついちゃったぞ?
 地面に足がついた。他の人はいない。僕一人だ。
 ……?
 この期に及んでミーラさんが悪戯をするとは思えない。
 こういう演出かな。
んー?
 神秘的な光の木々の奥から声が聞こえた気がした。
 すると僕が動いているのか地面が動いているのか左右の木々が後ろに消えていく。自動で前に進んでいるんだ。
 一瞬ビックリしたけどなかなか爽快感のある演出だ。
 そうこうしていると巨大な大樹が目の前に迫ってきた。
 その手前に誰かいる気がするけど眩しくなってきてよく分からない。

 ── おや めずらしい 人の形をしたものが 迷い込むとは

 ── それも これは 巫女ですらないとは

 ── なにようかな? 人の子よ

 よく分からないけど木々と合わせて幻想的な演出だと思う。付き合ってあげよう。
なんとかって空間からお家に帰るところですよ。
 ── ようはないと申すか それもよかろう
強いて言えばお家に帰りたい……かな?
 ── はははは では返してあげよう

 ── 取り次ぐ手間がなくて たすかることじゃの

 ── ふむ むむむむ

 少し戸惑ったような声が聞こえたと思うと 別の声が聞こえてくる。
 女性のような高い声だ。

 ── 人の子よ おまえは これから季節が移り変わり 循環するまでの間 様々なことを体験するだろう
あー。なんかそんな予感するね。宇宙人と一緒だと今日1日だけでも疲れちゃったよ。
 ── それは いやかい ?
うーん わかんないや!
危ない人のようにも感じたけど優しさも感じたし 今日だけじゃなんとも言えない。
 ── 人の子よ おまえは季節が巡った最後に 最後に1つ 大切なものを選ぶことになるだろう

 ── その時まで 体験を通じて じっくり考えるといい 自分にとって大切なものはなにかを
RPGのスタート画面みたいなこと言うなあ。
今のところゆずやお母さんやお父さんより大切なものはないと思う。
 ── 季節が巡った結果 同じ答えになったとしたら それもよいだろう

 ── ではおうちへ おかえり

 声がそういったかと思うと 辺りの木々が光の粒になって黒い空間に消えていった。
 と、僕はまたゆっくり落ちていく。
 そして光を抜けて僕はリビングのソファーにふわっと降りた。
おにいちゃんゆっくりだったねー!
お、おう。結構凝った演出だったな。
星の海でしょ!深海の海でしょ!オーロラの海でしょ!綺麗だったね!
 深海の海?オーロラの海?人によって違うのかな。
 宇宙人のやることだ。よく分からん。
切れた服や汚れは穴を通ったときに直ったと思うけド、変なところがあったら教えてね♡
 あっ。切れた部分も「ちびった」部分もなかったことになってる。
 よかった。これは正直助かったぜ。
ゆーたー?もう19時過ぎてるわよー!
さっき一度呼んだのよー!聞こえてるー?
遊んでないで夕ご飯食べにいらっしゃーい。
 階段の方からお母さんの声が聞こえる。
 もう19時過ぎてたのか。ゲームした上に闇の遊戯までしたからなあ。
 もっと時間が経っててもおかしくなかったくらいだ。
はーい!ごめんなさーーい!
今行くよー!
……さて。二人の分の夕ご飯も用意してもらってるんだけど、二人をなんて紹介しようかなー。
同級生じゃないしどっちも突っ込みどころ多い格好してるからなあ。
あらー!この星の手料理を食べさせてくれるのね!おねえさん楽しみー♡
ご家族には私たちのことを宇宙人ってバラしていいわヨ。
ニュポーニュポー!
調子いいんだから・・・!
正体隠そうって話じゃなくて信じて貰えそうにないって話だよ。
おにいちゃん。お母さんなら真面目に話したら信じてくれるよ!
……タコさんもいるし。
タコ見たら卒倒しそう……。
でも壊れた部屋の話もしなきゃいけないしとりあえず食べながら切り出すか。
ニュポー……。ニュポーン……。
 卒倒しそうと聞いてタコがショックを受けている。というかニュポニュポに戻ったな。
 謎だ。
また喋れなくなった?
ああ。キララはねエ。オルタナボールの翻訳機能と相性悪いのよ。
このタイプの宇宙人が無理に翻訳機を通すと身体に負担がかかるの。
オルタナボールじゃないもっと本格的な翻訳機だと違うんだけどそういうのは都会の星にしかないから。
普段使いは聴く機能だけで限界かな~。
そうなんだ。さっきは体に負担が合っても喋ってくれたんだな。
本当ありがとうな。タコ。
ん、あれ?ミーラさんはタコと喋れてない?
ん?ああ、私は普通にキララの星の言語喋れるし、キララも私の銀河の共用語分かるから。
はあ!?ニュポとしか聞こえねーよ!?
宇宙人すげーや。
 そんなことを話しながら僕らは1階のダイニングに向かった。
 まずタコを廊下に待たせて3人でダイニングに入る。
 ミーラさんを見たお母さんの第一声は……。
あーら!あらあら!外人さんかしら!?
とっても美人さん。こんな美人のお友達が来てるなんて思わなかったからびっくりしちゃったわ。
お母様もとっても美しいですヨ。ミーラと申します。
 いやお世辞はいいから……。
まあお世辞がお上手ね。
それにしてもこの服装すごいわね!?
コスプレってやつかしら?お母さんコスプレなんて初めて見るからテンション上がっちゃうわー。
えーと……う、宇宙人のミーラさんです。
あっはっはっは。宇宙人って設定なのねー。
 うん。そうなると思ったよ。
ははは。本当なのにねー。
ええーい!じゃあお母さん!こっちはどうだ!?
いっそ今のノリで受け入れてほしい!!
カモーーーーン!タコォ!
 僕が指パッチンをするとタコがダイニングに姿を現す!驚いて倒れなきゃいいが……!
きゃーーーーーー!
すっごーーーーーーーーーーーーい!
なにこれ人形!?きぐるみ!?中に人入ってるの!?
すごーーーい!
 きぐるみときたか。まあよし。倒れられるよりはマシだ。
 40歳にもなってすごいはしゃぎようだけど。
ねえこれ触ってもいい!?いいよね!
すごい質かーーーん!本物のタコみたい!タコのマスコットキャラなのかしら!?
でもこれじゃご飯食べれないわね。手伝ってあげるから脱いじゃいなさい。
ニュポ!??
チャックはどこかしら~?
 お母さんはタコの背中を触りながらチャックを探してる。
 ないのに。そんなものないのに……!
 ズポッ!
 え!?
 お母さんの手がタコの中に入った!
ニュポポォ!?
ああ!チャック式じゃないのね!これ高いんじゃないのー!?
あー待って下さい。待って下さい。
中には触られると困るものも入ってるので掴んだものを離してあげて下さーイ。
その……高いので♡
あらあら!ごめんなさい!
お母さん興奮して勝手に触りすぎちゃったわ。
 お母さんはそう言ってタコの背中から手を抜く。
 いやいやいや……。
 そういやミーラさんもタコの背中から道具出してたな。
 どうなってんだこいつの身体!?
ちょっとお行儀悪くなるけどこのままでも食べれるよ。
脱ぐのに時間かかるからいいよね。
まあ中の子が大丈夫ならいいけど。
きぐるみの中って暑いんでしょう?
無理しちゃだめよ。
 僕たちはテーブルについてカレーを食べ始める。
 自慢じゃないがうちのお母さんは料理が上手い。このカレーだって絶品だ。
 ミーラさんがオルタナボールで念のためカレーをチェックしていた。
 お母さんはなにそのハイテク器具ーって笑っていた。
 ミーラさんたちは少し変わったお祈り(?)の仕草をしてから食べ始めた。向こうなりの「いただきます」かもしれない。
おおおお。これはカレーというものなんですネ!とっても美味しいでーーーす!!
宇宙人の食事はガムやグミが主流なので手が込んだ料理というだけで嬉しいのにこの美味しさ♡
あらミーラさんの国じゃカレーは珍しいかしら。
喜んでくれるなら作った甲斐があったわ。
それに普段はレトルト食品(?)なのね。遠慮せず食べてね。
 お母さんはミーラさんやタコを宇宙人と思わずかなり受け入れている。
 受け入れてくれてることは嬉しいけど宇宙人って信じてもらわなくっちゃ。
 タコが触手からカレーをスポンと吸い取ってもすごーいって笑った人だ。強敵だぞ。
えーとそうだ。あれあれ。ミーラさんあれやってよ。
踊りの時やってた風景映すやつ。
あれ見たら流石に信じるでしょ?
おー。いいですヨ♡
 結果は……。
すごーーーーーーーい!
最新のスマホってすごいのね!
科学の進歩ってすごいわー。
 宇宙人の科学ですけどね。お母さん。
あーもう宇宙人だって信じてもらえなくていいや!
お母さん!ミーラさんたち実は行くところなくて困ってるんだよ!
しばらくうちに置いてくれない!?
はーい。ここを追い出されると餓死でース。グスン。
お願いしまーす。
ゆずからもお願い!お母さん!
もしかして家出?ダメよー、親御さん困らせたら。
でも変に追い出して危険な目にでも合ったら大変ね。
うちはちょうどお父さんが単身赴任中だし空き部屋はあるからしばらく居候しても構わないわよ。
おー!お母様、優しい方です!サクッと滞在許可を下さいましター♡
ふふふっ。ちゃんと落ち着いたら親御さんのところ帰るのよー。
でもこんな美人さんがお家に居候なんてワクワクするわね。
家事くらいは手伝ってもらうから覚悟してね!
はーい。いっぱいお手伝いしまーす!
ニュポポ!
 お母さんがうちにいていいって言ってくれたからもうこれでいいか。
 ああ。そうだ。もう一つ言うことがあったんだった。
 カレーを食べ終わってお皿を洗い場に運びながら僕が言う。
そうだ。お母さん。「ちょっと」壊しちゃったものがあってさ。
悪いんだけど洗い物終わったら二階のリビングに来てくれない?
なーにこの子ったら。なに壊したのー?
怖いわねー。
皿洗い終わったら行くわ。
お母さん!洗い物手伝うね!
おーじゃあ私もー!
今日の洗い物は少ないからミーラさんは大丈夫よ。
2階でゆっくりしてて。
わかりましたー!ごちそうさまでしタ!
 僕らは2階で闇の映写機スーパー4Kを見ながらお母さんを待つ。
 しばらくしてお母さんとゆずがやってきた。
なーに?なにが壊れたのー?
お母さん!見て驚かないでね!あそこが壊れたんだ!
 僕は崩壊したベランダと巨大な隕石を指差した!
………………………………。
お母さん?
 お母さんが倒れそうになる!
 わわわわ!
 僕とミーラさんが支えてなんとかなった。
大穴が空いてるぅ。まだローンがあるのにー。
ご、ごめんなさーイ。私たちがやりましたー!
ミーラさんたちの宇宙船が不時着したんだよ。信じてもらえないだろうけど!
えええええええええ。宇宙人!?本当に宇宙人!?
うーん。ガクッ。
 あー気を失っちゃった。ごめんよお母さん。
 …………そして。
うーーーん。はっ!大穴!
 横にして毛布をかけておいたお母さんの目が覚める。
ごめんなさーイ。気分は優れますか?
あの壊れた場所は私とキララが絶対直しまーす!約束しまーす!
………………………………。
 ヤバイ。また気を失っちゃうかな。それとも怒って出てけって言われたりして。
あっはっはっはっ。すごいわねー!
宇宙人って本当にいるのねー!

 流石に隕石を見て宇宙人の存在を認めたみたいだ。
はーい。宇宙人は隕石に乗ってやってきまーす。
隕石の姿をした宇宙船はバレにくいので。
……この部屋直せるのー?
はい!お時間をいただければ必ず!
お母さん。ミーラさんたち宇宙船が壊れて困ってるの。直すまで時間かかるんだって!
あはははは。少しおかしいとは思ってたのよねー。
いいえ、分かったわ。じゃあ宇宙船が直るまでここに住みなさい。
困っているのでしょう?少しびっくりしたけど宇宙人だからって追い出したりしないわ。
実家だと思ってゆっくりしていってね。美人の宇宙人さん。
おお!お母様本当に大好きでーす!
 ミーラさんはそう言ってお母さんに抱きつく。
ニュポオオオオオ!
 タコもお母さんに抱きつく。
わっ!?じゃあこれも本当の宇宙人……?
うーん。ガクッ。
お母さん!?
 ああ!タコを見てお母さんがまた気絶した!
 お母さん大丈夫!?
 タコのバカはショックで床に伏せているがこいつに構っている暇はない!!
タコは親しくない人に抱きつくの禁止な?
「佐藤家絶対遵守パーフェクトルール ~宇宙の項~」の第1条にすっからこれ!
 しばらく経って落ち着いたお母さんは少し談笑してから1階に戻っていった。
 僕はことの始まりになったベランダを見つめる。
宇宙人は隕石に乗ってやってくる……か。
そうねー。もしかしたら今まで見た隕石の中には宇宙人が乗ってたものもあるかもしれないワねー♡
マジか。隕石見かけたらもう全部撃ち落とすわ。
あらら、物騒ね♡
宇宙船といえば、オルタナボールのサーチが終わってないから断言はできないけど、宇宙船の損傷が結構酷いから直すのには1年ほど掛かるかもしれないわね。
1年……か。なんか何処かで聞いた気がするな。そんなこと。なんだったかな。
???
なにはともあれこれから1年よろしくね!ゆーたくん。
はい。よろしくー。
 僕はミーラさんと握手した。
あ、握手は分かるんだ?
これは共通の文化ね♡
 こうして僕の長い最初の1日は終わった。
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登場人物紹介

名前:佐藤 勇太
通称「ゆーた」。中学2年生。本編の主人公。
いわゆる中二病でなにごとも自分なりにカッコイイ呼び方で呼ぼうとする。考え方も中二病で偉大な正義や犠牲ある勝利に憧れているが、自分だけはズルをしても許されると考えている。
素直な気持ちを伝えることは恥ずかしくてできないが、家族のことは大好きである。

名前:佐藤 優澄(ゆずみ)
通称「ゆず」。小学5年生。
兄とは異なりしっかり者の女の子である。ゆーたが中二病ネーミングをすると「それは○○だよ、おにいちゃん!」と訂正してくれる。
まだ幼いため怖がりで人見知りな一面もある。

名前:ミーラ・シャーマリード・コットン・ゆるゆる
通称「ミーラ」。ふわふわ系宇宙人。羊のような角とふわふわな毛玉が特徴な宇宙人である。
ゆーたとゆずが出会った宇宙人の一人である。普段は優しく余裕を持ったおねーさんの立ち振舞をしているが、怒ると何をするかわからない。
宇宙宗教「リブレス」の信徒で神への祈りとして華麗な舞を舞うことができる。

名前:雲母(きらら)
通称「タコ」。タコ型宇宙人。まるで地球のタコのような見た目の宇宙人である。
ゆーたとゆずが出会った宇宙人の一人である。見た目に反して乙女でとっても優しい。
宇宙宗教「リブレス」の信徒でミーラの親友。

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