第48話 心理カウンセラーの力量

文字数 499文字

 十一月八日。
 臨床心理士に完全に失望した一週間後。
 心理臨床センターでカウンセラーに発達障害について尋ねた。当時、私には発達障害の知識がなかった。
 唯一、気になっていたのは、娘が一歳の頃のこと。私から見れば、いかにも幼児らしい普通の子だったが、妻は何度も「発達障害じゃないか」と心配していた。
「奥さん自身、何か思い当たるところがあるのかもしれませんね」
 カウンセラーの返答から、今までの疑問がすべてそこに結び付く気がした。妻の心配の種は、幼い頃の自分にあったのではないか。
 再度、妻についてカウンセリングでシナプスを結び直していくという説明を受けた。精神保健福祉センターの担当者が「精神病と神経症の中間の可能性がある」と言っていたことを伝えた。
「それは、重く見積もっていると思います。もし境界性人格障害だとしたら、もう私どもの手に負えません。
 現在では、感情のコントロールが効かない点も発達障害ということで説明できます。薬を飲まなければいけない場合も、奥さんのほうの担当者が時期を見て話をすると思います。」
 残念だけど、もし妻が発達障害だったとしても、ここでは手に負えなかった。
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