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文字数 1,142文字

 鍵を開け、誰もいない部屋の明かりをつける。


  ――うん、やっぱり。


 男の人の一人暮らしって、部屋の中が雑然としているイメージがあるけれど、まさにその通りの空間だ。
 散らかっているというほどではないけれど、掃除もしばらくしていないみたいだし。しょうがないなぁと思いながらも、掃除してあげるのが少しうれしくもある。
 まぁ、一番うれしいのは、こうしてタケル君が留守の時にお世話してあげられることだけれど。明日は休みだし、急いで帰る必要もない。


  ――なんか、楽しい。


 今夜は三枝さんと一緒に飲みに行くって言ってたから、帰りは遅いよね。
 先輩に誘われたら断れないし。
 この時間にLineするのも迷惑だろうし、今夜は……ね。
 そう言えば、この前の会社の飲み会、タケル君はシャイな感じだったな。
 隣に座ったら真っ赤になってモジモジしちゃって。
 私、年下の男性()、可愛くて大好き。

 シャワーを浴びようかと思ったけれど、さすがにそれはいかにも……って感じだから止めた。
 キッチンのシンクに置きっぱなしになっている食器も洗っておく。コップもきれいに拭いておいた。
「そんなことだと思ったんだ」
 冷蔵庫を開けたらスカスカ。若い時からの食生活って大事なんだよ。ちゃんと栄養を取らなきゃダメじゃん。と、買ってきた牛乳をアイスコーヒーのパックの隣に、野菜室にはキャベツも入れる。


  ――かなり、満足。


 一通り片付いたし、帰ってくるまで何してようかな。
 掃除や片付け、洗い物は好きだし、いつでもやるから遠慮なく言って欲しい。本当にタケル君はシャイだから合鍵もくれないし。だから、この前、会社のコートに入ってたのを借りて、こっそり作っちゃった。
 洗面所に行き、緑色の歯ブラシの隣に、持ってきたオレンジの歯ブラシを置く。手を洗って、鏡に映った自分の顔を見る。


  ――喜んでくれるかな。


 何時に帰ってくるか分からないから、ファミレスでお茶していよう。
 あそこからなら、この部屋が見えるから。
 帰ってきたら、明かりで分かるしね。

 だめだ、うれしくてニヤけちゃう。
 もう、欲望に勝てない。
 待とう。





 夢を見ていた。
 こうして好きな人の腕に抱かれて眠ることを。
 暖かい陽だまりの中にいる気分。
 隣には、可愛い寝顔の彼が……
 温かいぬくもりが肌に伝わって……
 しっとりとした肌の感触が……
 ――あ、起こしちゃったかな?


 タケル君が目を覚ました。
 まだ寝て間もないのに、私に気付いてくれたんだろう。
 そして……
 こちらへ顔を向けて――

 驚いた顔も、超カワイイ。

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