創作秘話:孤独の吸血姫

文字数 4,345文字


 私の代表作にして小説創作の原点は、何はなくとも『孤独の吸血姫』になります。
 そしてまた、主人公〝カリナ・ノヴェール〟こそが、私の世界観に於ける〝真の主役格〟にして〝シンボリックキャラクター〟と呼べるでしょう。

 そもそもはネット環境や端末も所有していなかった時期に、それでも「いつかは公表するタイミングが来る! その時のためにも!」と信じて『創作成功への夢』に打ち込んでデジタルメモ帳にて書き溜めていたオフライン執筆作品になります。
 そうした時期には『アナログ原稿のコンテスト応募』も視野に入れていました。
 ただ、アナログでの清書&推敲は洒落にならない大手間でしたし、出版社毎に枚数(文字数)や原稿規定の企画が違う(つまり選考に落ちたとしてもなっても他社に使い回せない仕組みになっている)。何よりも、そうした基準に合わせると物語の半分以上を削らなくてはならなくて、中身スカスカと化す……結果として『陳腐に廉価した別物』になってしまうのです。
 ええ、もう、それは〝ただのコンセプトPRプロット〟にしかなりません。
 なので「こちとら〈物語創作者〉であって〈一攫千金狙いの企画売り込み屋〉じゃねえ!」と憤りながらに断念。
 完全版で発表したい……本来の物語で皆に読んでほしい……そうでなければ〈カリナ・ノヴェール〉の魅力は伝わらない……そうしたジレンマで長い月日を悶々とする中で、ようやく2018年末にデジタル端末を得ました。
 それによりフリーWi-Fiスポットを利用できる環境となり『WEB小説投稿』というスタイルに巡り会えたのです。
 そうして、ようやく本作も陽の目を見ました。
 同時に、私にとっては〝挑みたくても環境的に出来ないで悶々としていた創作家への夢〟へと踏み出す第一歩となったのです。
 ちなみに連載当時〈アルファポリス〉での好戦績は〝ホラー部門:1414件〟内で〝3位/6位/8位〟とベスト10入りを三回果たさせて頂きました(有り難いです)。
 うん、そこそこ〈怪物〉──と、手前味噌に浸ったところで、今回は、そんな『孤独の吸血姫』誕生経緯について少々語ってみたいと思います。



 まず本作誕生秘話を語る上で外せないのが、ネット環境が出来なかった当時『シミュレーションRPGツクール』で作成していた『天上天下 大剣斬』というロボット作品でした。
 この時期は〝自分に適した創作表現〟を模索していて、そうした理由から〈ゲーム〉にも着目したのです(フリーゲーム創作が過度期でしたし)。
 つまり『大剣斬』も「創作者として成功したい!」という夢に賭けた作品でした。
 が、独りで大作ゲームを作るというのは、想像以上にとんでもない労力(グラフィック&アニメパターン&背景&音楽&シナリオ&構成&打ち込み&デバッグ&数値バランス調整etc)でして、第四話完成時点で断念……無念ながらに頓挫しました。
 この辺りの詳細は『創作秘話:天上天下 大剣斬』の方に綴っていますので、興味のある方はそちらを参照にして下さい。

 この『大剣斬』は〝日本妖怪+昭和年代風王道スーパーロボット〟というコンセプトだったのですが、脳内シリーズ化で第二弾として構想していたのが〝西洋妖怪+平成年代風スーパーロボット作品(萌パイロット)〟という対比コンセプトの『紅蓮のアルマギア』──コレが『孤独~』の遠因的な雛形になります。
 ただし作品としては、全くの別物です。
 ちなみに第三弾コンセプトは『宇宙人+ガンダム風リアルロボット(萌パイロットチーム)』だったので、こちらは遠因的ながら『vs,SJK』『G-MoMo』の〈FSF シリーズ〉に新生したとも言えるでしょう。


 この段階で主人公〝カリナ〟は誕生したのですが、容姿と性格以外は全然異なる設定でした。
 そもそも、この頃のカリナは〈モンスターハンター:人間〉──洋画『ヴァン・ヘルシング』の少女版だったのです(つまり〈吸血鬼〉ではなく〈狩る側〉だったワケですね)。

 ただし、現カリナとどっこいの酷い運命を負わせてはおり、それ故に彼女は〈不老体質〉となっています(不死ではありません)。
 ちなみに、これらの没設定は闇暦第三作『獣吼の咎者』の主人公〝夜神冴子〟へと転用されました。
 そして、聖騎士型ロボット〈アルマギア〉を駆って、巨大モンスター(ドラゴンやサイクロプスなど)と戦う……と。
 しかし、先述の『大剣斬』が第四話完成時点で労力的にドロップアウト……ゲームは独りで作るもんじゃないと痛感。
 第一作にあたる『大剣斬』がポシャった事で、自然と『アルマギア』も御蔵入りとなりました。

 ところが、新たな自己世界表現として『小説』に魅入られた私は「あの子に陽の目を浴びせてあげたいなぁ」という親バカ動機で『アルマギア』を再構築。
 より小説媒体に適した世界観へと全面的に作り直したのです。
 ちなみに世界観再構築の理由は「文字媒体では『巨大ロボットもの』の面白味は伝わり難い&描写し辛い」と判断したためになります。



 とはいえ、それですぐに『孤独~』へと新生したワケではありません。
 タイトルも『紅蓮のアルマギア』のまま、カリナの〈モンスターハンター〉としての活躍を描く第二案があったのです。
 ロボットが出てこなくなったので、これは早い話『妖怪退治もの』ですね(西洋妖怪限定の『ゲゲゲの鬼太郎』とか『デビルマン』『妖怪人間ベム』の萌少女版というか)。
 ちなみに〈アルマギア〉は、カリナが所有する聖銃の名前になりました。
 基礎プロットは私なりの独自性を織り込んだ特異な設定でしたが……秘密にさせて頂きますw
 結構気に入っていた設定なので、他作品流用も考えていますから……。

 さて、では何故この企画案が没になったかというと……理由は簡単。
『妖怪退治作品』は世に鉄板と溢れ、新味が無いからです(私的には大好物ですけれど)。
 仮に目新しく感じる独自性が設定に織り込まれていたとしても、ジャンル大別的に『妖怪退治もの』では初見に抜きん出た印象を与え難いでしょう。
 それでは新参者である私の小説は、読者の興味を惹けない──という判断でした。
 小説初挑戦の私にしてみれば、如何に読者から「コレ面白い!」と興味を抱いてもらえるかは肝であり勝負処でした。周りは私なんかよりも文才のある猛者ばかりなのですから。
 かといって身の丈に合わない世界観設定にしても、背伸びに無理すれば描ききれずに作品崩壊するのは目に見えている(書き手が自然体でノっているというのは、作品の活きに左右する──というのが、浅はかながらも私的な持論ですので)。
「もっと私らしい世界観……私ならではの独創性がある世界観は造れないか」と、悩みました。
 その模索の末『闇暦世界』という設定が生まれるのです。


 この『紅蓮のアルマギア』の舞台背景は〝現代〟でした。
 ところが、自分の過去作品プロットを鑑みて、はたと気付いたのです。
「そういえば『現代劇』が多いな」と。
 まあ『ファンタジー』や『近未来SF』を題材とした他作品プロットもありましたが、多くは〝現代舞台〟だったのです。殊に『バケモノが登場するアクション作風』の場合は(ヒーローものが多かったですしね)。
 で〝現代〟は〝現代〟でも「荒廃した世界観ってやった事ないな」と。
 例えば『北斗の拳』とか『バイオレンスジャック』みたいな。
「この舞台設定なら怪物が大手を振って跋扈する世界も不自然じゃなくなるし、そうなれば『ありきたりな妖怪退治もの』からも脱却できるんじゃないか?」と思い立ったワケですね。
 そもそもは〈吸血鬼〉に限定した作品ではなく、種々雑多な怪物が登場する世界観大系を描きたかったので、これは理想的な着眼でした(自画自賛w)。

 世界荒廃の原因(『北斗』の核戦争や『ジャック』の関東地獄地震に該当する要素)は〈ノストラダムスの大予言〉で決定。その方が、いかにもオカルト王道っぽい。
 世の無秩序を象徴する雑兵(『北斗』の〈ヒャッハー〉に該当)は〈リビング・デッド:近年型ゾンビ〉以外にない(ただし、誤認混同されている本来の〈ゾンビ〉と差別化するため〈デッド〉と呼称しました)。
 怪物が我が物顔の世界ならば、明るい世界ではおかしい……いっそ慢性的に夜闇の現世魔界にしてしまおう。
 ユニバーサル映画やハマー映画といった『クラシックホラー』が基盤だから〈濃霧〉は欠かせない鉄板演出要素。
 この世界の〝混沌と独自性〟の象徴として、大好きな西洋妖怪〈バックベアード〉を天空に据える事にもなりました──作中で〈黒月〉とされている存在ですね(これは〝水木しげるが確立した設定〟ではありますが〈バックベアード〉の巨悪的なインパクトは絶大ですから)。

 不思議な事に糸口を見つけると、結構トントン拍子で決まっていきました。


 そして、作品世界観が大きく変更された事により、カリナも〈吸血姫〉へと変更。
 それに伴い、大きなイメージチェンジが適用されます。
 彼女のマストリアクションである〝柘榴かじり〟は、この直前の作品プロットで決まっていました(理由も)。
 実は別系統で『女性向け恋愛シミュレーション』として『イケメン化けしたモンスターとの悲恋的ラブロマンス』も考えていまして、そこから転用したのです。
 小説のネタバレに繋がるので細かくは書きませんが、カリナ以前から「吸血鬼キャラの無害な共存は実現できないものか?」を模索していて、その結果辿り着いたアイデアでした(林檎かじりみたいで画的にも締まりますし)。
 それを彼女に流用したのですね。

 一方で〝子供連れ〟となったのは『孤独の吸血姫』としての基礎設定が固まってからです。
 流浪する事は決まっていたのですが〝マントを靡かせてカッコよく流浪〟だけでは、ありきたりでインパクトが薄い。
 そこでヒントになったのは、実は名作時代劇『子連れ狼』なのでした。
 凄腕流浪剣士が子供を守り連れて剣を奮う──この気高くもカッコイイ個性を、美少女キャラで優美可憐にやりたかったのです。

 〝キザな柘榴かじり〟〝子連れの母性〟〝孤高の流浪戦士〟と、彼女の独自性はこうして固まりました。


 この『孤独の吸血姫』及び『闇暦戦史』については、まだ諸々の語りたいところがあるのですが、とりあえずはまたの機会へ譲るとしましょうか……。
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✒小説『孤独の吸血姫』✒

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