文字数 786文字

 冒険とは、何なんだろう。

 この哲学じみの考えはずっと俺の脳内に巡りに巡って、離れられない。

 俺は今、夜番をしている。夜間の警備をしつつ、考え事をする。

 魔物は襲来しないため、正直、楽な仕事だ。今までの「冒険」もこんな感じだった……

 でも、だからだろうか、逆に不安しか思わない。風も吹いてないのに、たき火はゆらゆらと揺らいでいる。まるで俺の心境を表している。

 アンデッドになってから、思考を含めて、色々変わったことがある。

 例えば、アンデッドは日の出の時に弱い。最初彼女に出会った時に鈍いと感じたのはこれである。

 更に例えば、アンデッドは夜の時に元気が出る。夜番をし続ける理由もこれである。もっと言えば、アンデッドは五感が正常でも、五感だけ頼る必要はない。食事なしでも、睡眠なしでも生きていける。まさに夜番に務める相応しい存在だ。

 死霊術師である彼女は俺にさせる一つ一つの行動は、「ちゃんと理由がある」。少なくとも彼女に疑問を問いかけた際、ちゃんと答えてくれる……

 故に、不安しか感じられない。

 なぜ、「俺なんだろう」?

 なぜ、何も聞かずに俺の話を信じてくれたのだろう?

 もし便利なアンデッドを探しているだけなら、俺より便利で強いアンデッドがいるはずだろう?

 なぜ、俺は選ばれる?

 彼女が最初の時に言ってた「未練」は、一体、なんなんだろうと。

 そして、いろいろ考えているうち、思考が少しずつ跳躍し、最後は、「冒険とはなんなんだろう」と。

「ふん」と、俺は自分が考えていた事に冷笑した。

 お前が考えすぎただけだ、農夫であるお前には似合わねえよ――と、普通なら、俺は自分にそう告げたい……そう、告げたかった。

 しかし、就寝している彼女の側にあるものを見てみたら、俺は――

 ****

 これは、とある観察記録である。

 ……

 ****

 ――ああ……

 そうか……

 結局、そういうことか。
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