ハイゼンベルクの不確定性関係

文字数 575文字

「神さま、不確定性原理って何ですか?」

「不確定性『関係』って言ったほうが無難だな。あれは関係式だからな」

「いきなり難しいですね」

「興味あるの?」

「名前が有名ですから」

「ま、そうだろうな。不確定性関係は、ドイツの理論物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクが示した関係式で、位置の不確定性と速度の不確定性の積は、定数になるってやつだな」

「むむ……」

「早い話が、中学数学で習う反比例の式だ。なんかとなんかのかけ算は、一定の値になるってこと。そのなんかとなんかが、位置の不確定性と速度の不確定性ってわけ」

「その、二つの不確定性とは?」

「たとえばこうだ。異世界に転生してチート勇者になったおまえが、光に限りなく近い速度で振れる剣で無双してるとしよう。そのとき、剣を限りなく速く振ると、斬撃の瞬間、つまり位置は確認しづらくなり、逆に位置を確認できるくらいゆっくり振れば、今度は剣速は遅くなってしまう。どっちかが大きくなるとどっちかが小さくなり、逆もしかり。そのかけ算は一定の値になる。どうだ? 反比例の関係だろ?」

「今回はけっこうわかりやすいですね。具体的な数式はともかく」

「あくまでイメージとしてはだがな。さすがのおまえも、反比例くらいは知ってたか」

「うろ覚えですが」

「うん、まずは算数からだな」

「たはは……」

 こうして本屋でドリルを買ってきた中年男なのであった。
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