第9話 ナンテン教授の見ている世界

文字数 1,760文字

チャイさん、私でお役に立てることがあれば、なんなりとお申し付けください。
教授、お力を貸してください。


実は僕たち、いわゆる体制側から追われる身となりましてね……

チャイさんが!? 信じがたい。

私と一緒じゃないですか。


私のようなアウトローとは違って、なにか訳がお有りなのでしょうね(笑)

僕たちの討伐隊なんてものも、作られる始末ですよ。

テレビ放送されているのご存じですか?

テレビは昔から閲覧していないのですよ。

テレビや新聞などは、闇の勢力に完全に取り込まれてしまっていますから。


お嬢さん方はこんな話はご存じかな?

太古の昔、大天使戦争で敗れたルシファーが悪魔に身を堕としたのです。そして悪魔という形態で今でも裏側から上層部をコントロールしています。

お嬢さん方も感じているはずです、格差社会が固定して州国は冷え切ってしまった。

既得利権を手放したくない上級州国民と州国上層部は、既に悪魔の手先です。


私はずっと警告していたのです。

そのせいですっかりこんな閑職に追いやられてしまいましたが(笑)

(あー……始まっちゃった。ナンテン教授って優秀だったのに、突き抜けすぎてスピリチュアルの人になっちゃったんだよねー。みんなポカン顔してる、引いちゃうよね)
ナンテン教授! 私達って、もしかして悪魔軍団と戦っているの? (興味津々)
やっぱりね! 私もそうじゃないかと思っていた。

そうじゃないと辻褄合わないもん。やっぱり運営は悪魔の手先ね。

じゃあ私達、天使軍団……ってこと?
おやっさん、だいぶ楽になったぜ。

詳しく聞かせてくれよ、その激アツ話。

さすがチャイさん、柔軟な思考の若者を連れていらっしゃる。


わかりやすく天使と悪魔と言いましたが、概念ですね。光と影など表裏一体のもの。

天使と悪魔は入れ替わるので固定観念は禁物。

……そうですね、皆さんは宗教に頼ってはいけません。コントロールされてしまいますよ。

自分の心の舵取りは自分でしないとね。

ちょっと待った! 一気に言わないでくれ。はっきり言ってここにいる4人は勉強が苦手なんだ。


大事なこと言っているっぽいのは感じた。あとでメモらせてくれよ。

利口な振りして流さないところが、君、見所があります。


その違和感はきっと君を助けるでしょう。

まあね、カルダモンちゃんは情報屋なんだよ。感度いいんだ。


(……ツッコミ入れまくりの男子と、冷静で懐疑的なクローブ&ヒノキがいなくて丁度よかったかも)
それでね、ナンテン教授、私達一緒に戦ってくれるメンバー募集中なの!

レアスキル発掘キャラバン隊として、こうして回っているってわけ。

そこで追われている身としては陸地は危険なので、教授の力を借り、海からカットインしたいのですが。
『海上水路(チョーク・ポイント)』ですか? お安い御用ですよ。
教授がいればどこでも安全地帯ですから。
任せてください。

他にも、『攪乱(セイレーン)』『共倒れ(オフショア・バランシング)』『人事異動(カースト・リバース)』『緩衝地帯(バッファー・ゾーン)』などもお役に立てると思います。

(教授ノリノリだ)

なんて頼もしい。シーパワー、ランドパワーに詳しい教授にすべてお任せします。

(カースト・リバース? ふーん……)


ねえ、おやっさんもアタシ達のアジトに一緒に行こうぜ! メンバーになってくれよ。

賛成!!
うん。仲間に教授がいたら心強い。
教授の天使と悪魔の話、ネットドラマの第1回みたい。続きが気になる~
私はいっこうに構いませんよ。ここでの仕事は私がいなくても回りますし。

体調不良で静養するとでも言っておきますよ。


実は久し振りに自分のスキルを試したくなって、ワクワクしています。

(え!!? マジ? ナンテン教授が加入?)
 女の子を集めるような流れだったキャラバン隊、2人目のメンバーはまさかのナンテン教授。

なぜかチャイが上司のような関係性は謎だけど……



 何の変哲も無いある日の昼下がり、大学のテラスで珈琲を飲んでいたところ、上空にまばゆい光が現れ、不意に啓示がドッと降りてきてスピリチュアルに染まったナンテン教授。


そのときスキルも一緒に降ってきて感覚が一変、元の生活に戻れなくなった。

スキルは両刃の剣、いわゆるオッサン版ジャンヌ・ダルク。


……ですが、元来理論屋なので奇跡を全方位から解体し、いまだ考察の旅の途中です。

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