第36話 槍剣魔法(さんゆうしゃ)

文字数 2,333文字

バキバキィ

ガッガッガッ

「キィッ、キィッー」

密林の木々をなぎ倒しながら追いかけてくる。
四本の角、歩みを進めるため、残るのは、圧倒的な力によって壊された木々の道。

姿は暴食のリンネと同じだが、その実体は魔獣シンビジウムやフリージアがなんらかの原因で生存するために互いを捕食し続け、一体となった魔獣とされている。
その理由の一つとしては、その魔獣が現れた途端に黒の密林にたびたび目撃のあったシンビジウムやフリージアの姿がなくなったからである。

この都市のギルドではその魔獣をリンネや始生物よりも一段階下の討伐クラスを9とし、正式名称をとある神話に登場する破滅の女神から取り暴食魔獣アテと決定した。

話しは戻るがシウコアトルは長らく戦争が起きていない地域のため軍隊が少なく都市のため、その都市の長から魔獣を倒した実績のある俺ら三人に緊急でお願いしてきたのである。
ちなみに四英雄のモーガンさんは、北の大陸で最強の魔獣の動きが活性化しており、それを監視する為にこの地域から一時的に留守にした。

その為、現在俺たちはその魔獣アテと戦っている。

ガパァッ

四本の角で目の前の俺を挟み込もうとした。
上下、左右の四方向から迫り来る角、リンネならまだしも魔獣なら強者のマギアも通用する。

ぐぅいん

ガンッ

バキッ

マギアを展開したと同時に挟み込んだ左右の角が砕け散った。
やっぱり、確実にまだこの魔獣は成長しきっていない、ここで倒さないと。

ガッガッガッ

魔獣アテは、何かを感じたのか、六本の足を使い、こちらに背を向けた。

「マコト、逃げるぞ」

「分かっていますアスラさん、ハァッ!!!」

ぐぅいん

ガンッ
 バサササッ

自身のマギアを使って、バリアを張り巡らし上手く閉じ込められた。
魔獣から分離したリンネと似ているがあちらの方はバッタでこちらはイナゴに似た姿の魔獣は、逃げ場がなくて中で暴れ回っている。
よし、上手くできた。

「マーニ、僕たちも行くぞ」

「えぇ、アタシに任せて」

カランッ
「業火さえも凍らせる氷の絶技、コキュートス・ゼノ!!!」

「光の残響、散りゆく花に罪の調べをアルティマ・デリート!!!」

放たれる氷の魔術と光の魔術が重なり、一本の光り輝く槍となって、閉じ込められた魔獣達に襲いかかった。

バリアを突き破ると瞬時に氷と光の槍が爆発し、魔獣達を光で焼き焦がし、その後氷で凍りつかせた。

残ったものは、凍りつき黒く焦げたアテだけだった。

後悔はしないが、かわいそうな生物かもしれない。
魔獣という世界の生態系を根底から破壊する存在じゃなければ、彼らもまたこの星で生きれた仲間になのかもしれない。

自分たちもいつかリンネになれば、この魔獣と同じ存在になるのだろう、もし少しでも感情が残っているなら、誰かに倒されても憎しみを持たないと心の中で誓った。

✳︎✳︎✳︎

そしてその夜、街に戻りギルドの食堂で魔獣アテ討伐のお祝いをした。
テーブルの上には、アルゼンニワトリの丸焼きやジルブラ牛のハバーダと言われる見た目は肉じゃがのようなものなど様々な料理が置かれていた。
ギルドが魔獣を倒してくれたお礼とのことらしい。
でも、食べ切れるかな?

料理を持ってきた獣人のコックの人にこの料理を聞くと、この料理の作り方はジルブラ牛とじゃがいもと玉ねぎをトロトロになるまで煮込み、牛の尻尾の肉部分であるテールのスープで味付けされているようでこの地域の家庭料理らしい。
見た目からおいしそうだし、いつか作ろうと。

「かんぱ〜い!!!」

カーンッ

俺たちは金属のコップをぶつけて鳴らし、お祝いの始まりの合図を出した。

「いやぁ、やっぱり二人とも凄いよね。
マコトの強者のマギアのバリアやアスラの氷魔術にしろ、いやぁアタシも負けないようにしないとね」

「ありがとう、でもマーニさんも今回やこの前、魔獣シンビジウムやフリージアと戦ったのは凄かったじゃないですか」

「マコト、魔獣であったシンビジウムやフリージアがいたのですか」

あっ、しまったそうだった、これ内緒にしないといけないことだった。

「あっ、ごめんなさい、アスラさん」

ガチャ

すると彼女は立ち上がり、頭を下げた。
「アスラ、これはアタシのほうから謝る、ごめん。
ちょっと眠れなくなって、暇つぶしでクエストに行っちゃったの、マコトもちょうど起きていたから、アタシのほうから誘ったの。
だから全部、アタシが悪いの」

「マーニさん、俺も悪いんですよ」

すると、アスラさんはため息を一息ついたが、その後少し微笑みながら話した。
ちょっと、アスラさんの顔が整っているからかわいいなと思ってしまった。
って、何を思っているんだ自分は。

「まぁ、自分も厳しくしすぎた部分もあったと思う。
でも、本当は早く言ってもよかったかな、僕だって仲間なんだから」

「うん、ごめん」

「もう終わったことだから、気にしなくていいよ。
早く料理が冷めないうちに食べよう」

「アスラ、結構、カワイイわね」

「いきなり、何を言っているんですか」
あっ、マーニさんも悪気があって言ったつもりじゃないけど少し空気が悪くなってきてる、何か何か言わないと。

「でもアスラさんにも見せたかったな、本当に凄かったんだよ、刀剣をフルスイングしてシンビジウムを打ち飛ばしたり、フリージアにアルティマ・デリートで倒したりね」

「ーーそうですか、それは僕も見たかったですね。
あっ、ちょっとマーニ、肩にごみが着いていますよ」

「あっ、ありがとうね」

「アナタもかわいいですね」

「んっ、いきなりそんなこと言わないでよ」
アスラさんにそう言われた彼女の顔は少し赤らめ目線を別の方向に移した。

「おかえしだよ」

そんな冗談を言い合いながら、俺たちの絆はさらに強くなった気がする。
辛い時もあったけど、この旅が長く続けばいいとずっと思っていた。



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