6、ヒスイの戯れ
文字数 731文字
ヒスイの両脇に押し付けられていた柔らかいものが同時に離れた。
右手で添い寝していた豊満な体つきの美女はベラルーシ語しか話せず、もうひとりの左手で転寝をするスレンダーな美女はルーマニア語しか話せなかった。
「ダメだ。またあの時のやり取りがおぼろげに……パーク。なんとかパークが完成するって……でも思い出せない」
日本語でつぶやく赤ら顔のヒスイを、ふたりは不思議そうに見ていた。
片方がルーマニア語で「恐い夢でも見たの?」と訊き、もう片方はベラルーシ語で「この村がいけないのよ」とつぶやいた。
ヒスイは、彼女たちの母国語で流暢に「幼少期の不思議な体験をよく夢で見るんだ。でも、肝心な部分は思い出せないまま」と答えた。
彼の女ったらしは伊達ではない。
美女を口説くためならば、見知らぬ言語もあっという間に習得する。
もはやそれはヒスイにだけ与えられた特別な才能だった。
ルーマニア出身の美女は、透き通るような白くて長い右腕をヒスイの首に絡めた。
次に、ベラルーシ出身の美女が、真っ赤な口紅で塗られた唇をヒスイの胸元に滑らせた。
己の肉体美をひけらかさなくとも、ふたりの女はギリシャ彫刻のような彼の身体に吸いつくように離れなかった。
やがて、ヒスイの敏感な部分を長い舌で交互に這わせ始めた。
今度はヒスイの番だった。
その欲望に応えるようにして、ふたりの女の身体をより激しくまさぐった。
局部が湿り気を帯びてゆくと、美女たちは喘ぎ声を出した。
「淫乱な女ども!」
性欲に溺れる三人は、物見櫓がそびえたつ庭の方へと場所を移した。
すっかり酔いも醒め、惜しまれた夢についても忘れて甘い夜を愉しんだ。