第16話:雪道に苦戦とスキー合宿へ

文字数 1,570文字

 正月があけ、また仕事がはじまった。ところが十日町では、例の雪女さんは、現れなくなってた。そして、数週間が、過ぎた。スナックに、久しぶりに、顔を出したが、女はいない。スナックのママに、聞くと、何か事故にあって、休んでいる様子だった。村下は、そんな事、気にせずに、通常通りの仕事を、せっせとこなした。

 2月の末、まさに、厳寒期、十日町病院で、仕事をしてる時、廊下を、あの女が松葉杖をついて歩いているではないか。声をかける事もなく、軽く会釈するだけで通り過ぎた。それとなく、どうしたのですかと聞くと、昨年末に、スリップしてきた車が、足にぶつかってきたと話した。

 全治3ヶ月と言われたが、膝のなおりが、良くないらしい。自宅に帰っても、一人なので、長期入院となった様だ。そして、毎日、リハビリに励んでいると語った。厳寒期の新潟の峠道は、凍結の心配があり、今年は、特に寒かった。そのため、十日町から六日町までの、移動は発荷峠を通らずに、遠回して移動した。

 振り返ってみれば、歓迎の時に、山下先輩が言った事が、思い出された。
「ここは、都会みたいに甘くないぞ、冬になれば、わかるはずの意味が理解できた」
 3月になり、また、例のスナックへ顔を出すと、あの女がいた。うれしそうに、こっちを見ていた。隣に座り事の顛末を話してくれた。

 交通事故にあい、怪我をしたのだが、幸いに加害者が良い人で、費用全額と見舞金を出してくれた、との事だった。退院の時も、家まで車で送ってくれた様だ。確かに、新潟の人は優しい人が、多い気がする。それから、再び、そのスナックで飲むようになった。しかし、彼女は、雪女から普通の、おばさんに変わった。

しばらくすると、雪解けのシーズンが、また大変で、新潟の雪は、水分が多く、はいている靴が、びしょ、びしょになり、嫌な感じである。峠では、しばしば、小さな雪崩も起った。山道は、ゴールデンウイークには、開通し、通れるようになる。雪が消えると、あの雪女も消え、村下も仕事に集中して活動した。

 新潟に赴任して1年目の給料総額が、全部込みで600万円になった。横浜営業所の2年目、26才の時、売上高、伸び率全国一、ダブル受賞で臨時ボーナス100万円と報奨金50万円、給料240万円、ボーナス60万円、年収450万円に驚いた。

 しかし、村下は、妻帯者で子供3人になると、出張とその他の諸手当で、仕事は、きついが、年収600万円は30才にしては、多いのかも知れないと感じた。村下はスポーツマンでスキーも、若い頃から経験し、雪道は何度も走った経験があった。 

 しかし、今年の2月下旬の雪の朝、坂道を下っていた時に、怖い思いをした。営業車は当時マニュアル車であり、3速から2速、さらに、減速する時、1速に落とす様、指示されていた。その日の朝は、一部凍結していて、慎重に、2速で徐行していたが、自分の前の車が、路肩の雪壁に、当たり止まった。

 それを見て1速に落としたが、なかなか止まってくれない。その内に、バスが坂を上ってきた。対向車線を越えない様に注意したが、何せ自分の車が止まらないので、あせった。仕方なく、路肩の壁に、当てて止まった。幸いにも車が回転せずに事なきを得た。止まった時にはバスの乗客が、こっちを見て拍手していたのが見えて思わず、軽く会釈をした。

 雪国の厳しさって確かに、あるなと、しみじみ思う、村下だった。U病院の下田先生から、病院の恒例のスキー合宿に誘われた。山井先生と薬局の春子さんと康子さんの二人、看護婦三人、外科の若手二人の合計10人だった。

 下田先生から、指示連絡など手伝って欲しいと言われ了解した。後日部屋割りや、車に乗るメンバーなど、企画書を作成した。翌週の、金曜日から2泊3日、一部のメンバーは土日の1泊2と言う事で出かけた。
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