第23話
文字数 1,193文字
「来週は父の日……か……」
テレビ画面に映るニュースキャスターは笑顔でプレゼントの特集をする。高級ブランドのネクタイだとかゴルフボールだとか、父の日用に彩った店内で、楽しく紹介を始めていた。
「父の日ねぇ……」
お父さんに気持ちを伝えよう、というテロップを眺め、私は朝の支度をしていた。今日も、保育園で朝から仕事なのだ。富田先生を子供たちが待っている。
バタバタと支度を済ませ、私は運動靴を履き、ポニーテールにした髪の毛をポワンと弾ませて職場へと急いだ。
――――ガラガラガラ
「富田先生おはよ!」
扉を横に開けて、教室の中に入る。保育園に着くと、私の出勤時間よりも早く到着した園児が、クレヨンを片手に持ち、挨拶をしてくれた。
「おはよう!朝からお絵かきかな?」
クレヨンでぐるぐるに塗った、一枚の紙を見て、私は問いかけた。すると、笑顔で園児は描いている絵を、両手で掲げて自慢する。
「これね!僕のパパ!来週渡すの、パパの日!」
「そっか、それは素敵だね、喜ぶね!お父さん喜ぶよ」
私がそう言うと、喜んでまた描き始める。お父さんの事が純粋に大好きな園児を見ていたら、なんだか、羨ましく感じてしまった。
「お父さんに気持ちを伝える日……お父さん……」
無意識にそう呟くと、園児の男の子がまた話しかけてきたので、私は返す。
「富田先生のパパはすごい?」
「先生の……パパ?す、すごい?」
「うん、僕のパパ、お仕事してすごい!だから、ありがとうって言うんだよ!」
「そっか、パパはもっと大喜びだね!」
「うん!先生もありがとうしてきてね!」
笑顔で私にキラキラと純粋な目で話す男の子が、今日はとっても輝いて見えた。私に足りない、大切な何かを掘り起こしてくれた気もして、自分の心が動き出していた。
そして、今日は、いつも通り園児を出迎え、いつも通りお迎えが来るまで、忙しく通り過ぎた。沢山の園児たちへ手を振って、一日が無事終わったことに安堵する。
「富田先生、お疲れ様!ほんとにいつも助かってるよ。ありがとね」
年配の先生に、そう伝えられて、心が温かく膨れる。この職場は皆いい人たちばかりなのだ。
「ありがとうございます!毎日楽しいのは、先生たちのおかげです!」
「あら、やだ。そんなこと言っても、何も出ないんだから、ハハハ」
明るく楽しい、職場の先生が、今日も笑顔で仕事を締めてくれた。
「今日も楽しかったな、帰ったら課題をやらなきゃ」
私は帰り道、職場の最寄駅の地下にある、ショッピング街を通っていた。広い地下にたくさんのおしゃれなお店が並ぶのだが、数々のお店を通るたびに、父の日と書かれた旗が目に入っていた。
「お父さん、何が好きかな。何が嬉しいのかな」
きらりと揺れる父の日の旗は、私を眩しく照らすのだ。私に今が、伝えるチャンスなんだと、心から導いて動かしている。
そんな旗を見て私は勇気を出し、お店へと足を踏み入れた。
テレビ画面に映るニュースキャスターは笑顔でプレゼントの特集をする。高級ブランドのネクタイだとかゴルフボールだとか、父の日用に彩った店内で、楽しく紹介を始めていた。
「父の日ねぇ……」
お父さんに気持ちを伝えよう、というテロップを眺め、私は朝の支度をしていた。今日も、保育園で朝から仕事なのだ。富田先生を子供たちが待っている。
バタバタと支度を済ませ、私は運動靴を履き、ポニーテールにした髪の毛をポワンと弾ませて職場へと急いだ。
――――ガラガラガラ
「富田先生おはよ!」
扉を横に開けて、教室の中に入る。保育園に着くと、私の出勤時間よりも早く到着した園児が、クレヨンを片手に持ち、挨拶をしてくれた。
「おはよう!朝からお絵かきかな?」
クレヨンでぐるぐるに塗った、一枚の紙を見て、私は問いかけた。すると、笑顔で園児は描いている絵を、両手で掲げて自慢する。
「これね!僕のパパ!来週渡すの、パパの日!」
「そっか、それは素敵だね、喜ぶね!お父さん喜ぶよ」
私がそう言うと、喜んでまた描き始める。お父さんの事が純粋に大好きな園児を見ていたら、なんだか、羨ましく感じてしまった。
「お父さんに気持ちを伝える日……お父さん……」
無意識にそう呟くと、園児の男の子がまた話しかけてきたので、私は返す。
「富田先生のパパはすごい?」
「先生の……パパ?す、すごい?」
「うん、僕のパパ、お仕事してすごい!だから、ありがとうって言うんだよ!」
「そっか、パパはもっと大喜びだね!」
「うん!先生もありがとうしてきてね!」
笑顔で私にキラキラと純粋な目で話す男の子が、今日はとっても輝いて見えた。私に足りない、大切な何かを掘り起こしてくれた気もして、自分の心が動き出していた。
そして、今日は、いつも通り園児を出迎え、いつも通りお迎えが来るまで、忙しく通り過ぎた。沢山の園児たちへ手を振って、一日が無事終わったことに安堵する。
「富田先生、お疲れ様!ほんとにいつも助かってるよ。ありがとね」
年配の先生に、そう伝えられて、心が温かく膨れる。この職場は皆いい人たちばかりなのだ。
「ありがとうございます!毎日楽しいのは、先生たちのおかげです!」
「あら、やだ。そんなこと言っても、何も出ないんだから、ハハハ」
明るく楽しい、職場の先生が、今日も笑顔で仕事を締めてくれた。
「今日も楽しかったな、帰ったら課題をやらなきゃ」
私は帰り道、職場の最寄駅の地下にある、ショッピング街を通っていた。広い地下にたくさんのおしゃれなお店が並ぶのだが、数々のお店を通るたびに、父の日と書かれた旗が目に入っていた。
「お父さん、何が好きかな。何が嬉しいのかな」
きらりと揺れる父の日の旗は、私を眩しく照らすのだ。私に今が、伝えるチャンスなんだと、心から導いて動かしている。
そんな旗を見て私は勇気を出し、お店へと足を踏み入れた。