(2) しずくの小鳥

文字数 935文字

 小さな、小さな鳥が、そこにいました。
 透明な小鳥です。ガラスのように。

 つばさをちょっとひろげて、ふるふるっと身ぶるい。
 そしてすぐにつばさをたたみ、まっすぐみおを見つめました。
 まるい目は、深い藍色(あいいろ)です。でも、頭のかざり羽と、つばさと、長い尾羽(おばね)は、まわりの色をうつしこんで、青にも、銀色にも見えました。

 小鳥が、かしこそうな顔でじっとしていて、それから小さなくちばしをあけたので、何を言うのかなと思って、みおはわくわくしました。
 すると小鳥は、よくよく考えたというふうに首をかしげて、水のつぶがころがるような、澄んだ声で言いました。

「だんすい」

 みおはふきだして、「知ってる」と言いました。すると小鳥がまた言いました。
「どうして断水になったか、知ってる?」
「雨がふらなくて、お水がたりなくなったんでしょ」
 みおが、お父さんから聞いたとおりを言うと、小鳥はうなずいて、また言いました。
「じゃ、お水はどこから来ると思う?」
「すいどうきょく」
 みおがいばって言うと、小鳥はまたまたうなずいて、
「その前は?」

 みおは、だんだんはらが立ってきました。小鳥がえらそうな話しかたをするからです。
 小さいくせに。

「知らない」みおはちょっぴり、つんとして言いました。「だいたい、あなたはだれ? よそのうちにかってに入ってきて」
「だって、わたしの道だもの」
 小鳥はおちつきはらって答えました。それからくすくす笑いだしました。ちっちゃな噴水(ふんすい)みたいに。
「やだなあ。やっぱり、お水は水道局(すいどうきょく)から来ると思ってるんだ」

「そうよ、水どうきょくの人たちが、雨をたくさんためて、みんなにくばってくれてるんでしょう。ちがうの?」
「ちょっとちがうんだな」小鳥は目をぱちっとさせて、言いました。「雨を集めてくれるのは、川なのよ。そして、川を育ててくれるのは、森なの」
 あつめる? そだてる?
 どういう、いみ?

 みおがあっけにとられていると、また小鳥が、ふるふるっと身ぶるいしました。そして――
 しゅっ!
 今度は、犬のすがたになったのです。
 耳がぴんとしてしっぽがくりっとした、りりしい犬です。やっぱり体が透きとおっていて、青にも銀色にも見えます。

「さあ、わたしの背なかに乗って」
「えっ?」
「いいから、乗って!」
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