初鳴き -7月13日-

文字数 338文字

 遂に、来てしまった。この季節が……。
 
 「ジージリジリジリ……」
 夕方、外に出ると声が聞こえました。

 蝉

 声は好きです。
 夏を感じるアブラゼミの合唱も。
 声を張る、ミンミンゼミの唱和も。
 朝夕を彩る、ヒグラシの独唱も。
 
 あの数センチの体から発せられる、パワフルな音に感動しながら耳を傾けます。


 しかし、音は良いのですが、本体はとても苦手です。
 家のドアの前に蝉がいたら、中に入れません。
 万一体にとまったら、恐怖で泣きます。
 なにをされたという訳でも、蝉が害をなすものではないと分かっていても、只々怖い。 
 ゴロンとした体に、カサカサした羽、飛ぶと手あたり次第に突進する所が、恐ろしくてなりません。
 
 今夏も、音だけのお付き合いをお願いしたいなぁ、なんて思ってしまいます。
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登場人物紹介

あづき


歴史とロマンスと甘味を好む小さな生き物です。

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