第23話:巨大台風の弱体化作戦9

文字数 1,047文字

 ゴードン
「種は大西洋上の台風、エスターとビムラーそれに発達前のいくつかの台風にまいた。結果は発達前のものには、かなり効果があった。でも当時の飛行機は性能も観測機器も今と比べれば原始的だったので、やむをえない部分もあった。観測も機体に搭載した原始的なレーダに頼るしかなく種をまく前後の状態も実際に中を飛んで調べるという具合だった。でも実際にそれで観測した結果では台風の最大風速を弱める効果がある事が分った。」ウイログビは計画の打ち切りに関与している。しかしゴードンは打ち切るべきではなかったという。

 ゴードン
「計画は1982年に打ち切られたが、それは予算上の問題が原因であり成果が全くなかったからではない」。しかし、それから25年、ゴードンは種をまく技術や観測能力が進歩した今、計画を復活させるべきだと考えている。ヨウ化銀の種をつんだ2基のP3哨戒機が台風の下から3分の2の高さに北西の方角から飛び込む。そして飛びながら種をばら撒く。ヨウ化銀は雲の中の水滴を凍らせる。これにより目の外側の雲から熱が奪われアイウォール「目の壁」へのエネルギー供給が止まり、その結果、目が広がって勢力が衰える。

 ウイログビ
「大多数の台風の雲には種まきが効果を発揮するだけの水滴は含まれてない。たとえ勢力が弱くなってもそれが種まきの効果なのか、たまたま自然にそうなったのか区別できない。」

ゴードン
「計画が打ち切りになった当時は種まきをした結果の測定ができなかった。でも今ならできる。わざわざ一番危険な雲の帯の中に人間を送り込まなくても、無人機を飛ばして自動で種をまかせることもできる」。一方ビル・グレーにとって天候や台風を制御しようという計画は1970年代の初めに挫折した。当時アメリカ軍はベトナムでホーチミンルートを泥流に変えようとしていた。1980年代ウイログビやゴードンが台風に種をまいている間にソ連は台風の押さえ込みに取り組んでいた。

 ウラジミール・プドフはボルネオ沖のスラベス海で展開された極秘任務の中心人物。
プドフ
「あの海域は船も少ない、妨害されないという事で選ばれた。それにインドネシア近海は日差しがとても強く暖まった海面から盛んに海水が蒸発するのでテストの条件がそろっていた。」実験は油脂と尿素、そしてアルコールが主成分のカルミドルというドロっとした黄色い化学薬剤を10平方キロメートル海面に流すというものだった。他の方法論同様、カルミドルは環境に優しいものとはいえない。
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