3.初めてのストリップ
文字数 7,301文字
1977年、俺は工業高校を卒業し、鉄工所に就職した。
浦和の郊外、畑の中に小規模の鉄工所が点在している中の一軒、従業員は俺を含めて7人の小さな鉄工所だった。
正直、さほど勤労意欲に燃えていたわけではない。
中学、高校を通じて部活に打ち込むではなく、悪さをするわけでもなく、そしてもちろん勉学にいそしむわけでもなく、のんべんだらりと過してきた。
高校の卒業を控え、無論大学受験などするはずもなく、何か取りたい資格があるわけでもないので専門学校にも行く気はない、そう決めたら就職する他はない、勉強は出来ないから基本的に肉体労働、高校では建築学科だったから大工、鉄筋工、鳶などになる友達が多い中、屋外での仕事が比較的少ないという理由だけで選んだ仕事だった。
その年にその鉄鋼所に入ったのは俺一人だけ、随分と久しぶりの採用だったらしく、先輩達は一番若くて28、その次が33、その上となると50代ばかりだった。
28と33の先輩はどちらも独身で気も合うらしく、二人してよく遊んでいた、入社して最初の週末、二人に誘われた俺は二つ返事で応じ夜の街に繰り出した。
夕食を兼ねて居酒屋で一杯、スナックに場所を移してまた一杯。
未成年と言っても酒を飲んだことがないわけではなかったが、さほど慣れてはいない、ビールをジョッキ一杯、水割りを二杯、それですっかり酔っ払ってしまった。
「なんだ、もうグロッキーか? 酒はここまでか、じゃ、趣向を変えるか、付いて来いよ」
そう言われて先輩に連れて行かれたのが『浦和ミュージックホール』だった。
かなり酔っていて劇場に入った時の事はあまり良く憶えていないが、既に始まっていたショーが目に入って来た瞬間、酔いはいっぺんに吹っ飛んで行った。
ステージでは俺とあまり歳が変らないように見える女の子が、既に全裸になって客席にせり出した小さな円形舞台で踊っていた。
「お、初めて見る娘だな、かなり若そうだな」
週末の夜とあってかなり混みあっていた客席の後方の席に座った。
俺の目は舞台に釘づけになった、全裸で踊っている時の股間の繁みにさえ目を見張ったのだが、舞台の縁に腰を降ろした女の子が大きく脚を開いて全てを露わにした時、脳天に電気が走ったような気がした。
「なんだ、ストリップは初めてか?」
そう聞かれたのは憶えているがどう答えたのかは良く憶えていない、しかし女の子の表情は恥ずかしさを堪えるあまりか泣き出しそうだったのは今でも良く憶えている、それほど引き込まれた。
女の子が一礼して舞台から下がるとアナウンスがあった。
「高校を卒業したばかりの18歳、今週デビューしたてのリリーちゃんでした、応援よろしくお願いします……お待ちかね次の踊り娘は……」
高校を卒業したばかり……俺と同じだ。
のんべんだらりと過ごしていても女の子への興味は人一倍あった、一般向けの男性誌に飽き足らずに、少ない小遣いの中から当時出始めたばかりのビニ本などもこっそりと買って、モロに性器が写っている写真などは穴があくほど見ていた。
しかし、工業高校というのは制度上共学でも女子は極端に少ない、スポーツで目立ったわけでなく、勉強も出来ずルックスも人並みの俺ではもてる筈もなかった、もっと積極的に遊び歩いたり暴走族に入ったりしていれば女の子と触れ合う機会もあったのかもしれないがそんな度胸もない、当時の俺としては人類の半分は女性だというのがピンと来ないような境遇にあった。
同年代の女の子というのは通学途中の電車や駅でチラチラと眺めるだけの存在、その制服の下に隠されている体に想像をめぐらす事はしょっちゅうだったが生身の女体を拝んだ事はなかった。
そう言ういわば憧れの女体を生で拝めただけでなく、脚までぱっくりと開いて……俺にとってはカルチャーショックと言ってもよかった。
「へえ、お前と同い年だってよ」
「ホントですかね、サバ読んでたりしないかな」
「ありえなくもないけど、ちゃんとそう見えたぜ」
「確かにそうですね……おい、いいもの見れたな」
先輩たちに声をかけられても上の空だった。
やけにグラマーなコロンビア人、やけに細身のフィリピン人の舞台が続いた後、中途半端な声援を浴びて出てきた踊り子は「内藤 蘭」、アイドルグループの人気者に引っ掛けた芸名である事はすぐにわかる、そして本物には及ばないまでも面差しが似ている中々の美形……本物の方のファンでもあった俺にはまぶしく見えるほどだった……。
流行のディスコ・ミュージックに乗り、華やかな衣装を身につけての激しいダンス、そして衣装の下から現れたまばゆい体、その体に薄布を纏って「見えそうで見えない」男の興味を惹きつけるポージング。
そして円形舞台に進み出た「蘭」ちゃんは薄布をパッと投げ捨て全てを露わにした。
「同級生」の方はただじっと脚を広げているだけだったが、「蘭」ちゃんは舞台が電動で一周する度にポーズを変え、指で広げて見せたりお尻をふって見せたり……見せるツボを心得たテクニックで男たちの歓心を誘う。
そのアイドルの水着姿の写真に向って何度も「飛ばした」ことのある俺にとっては嘘のような光景だった……しかし、股間は痛いほどに硬直し、頭に血が上っていたものの、心の奥で少し嫌な気分もないではなかった、グラビア写真の中のアイドルはその瞬間だけは俺のもの……想像の中でだけだが……しかし舞台で回っている」「蘭」ちゃんは観客全部に彼女の全てを晒してしまっているのだ……目は釘付けになっているものの、ほんの少しだが幻滅も感じていた……。
そんな思いを拭い去ってくれたのはラストを飾る、劇場専属の看板踊り子、『みどり』だった。
先輩達も何度か見たことがあるらしく、みどりの名前がアナウンスされると声援を送り、客席全体のボルテージもぐんと上がる。
「次の人、美人なんですか?」
劇場に入って初めて自分から口をきいた。
「いや、そんなでもないな、歳ももう40近いんだろうな、普通の格好で街を歩いてたらただのおばさんにしか見えないな、きっと」
「でも、さっきの『内藤 蘭』より後に出るんですよね、それに随分と人気があるみたいじゃないですか」
「ああ、見てればわかるさ、なんとも色っぽいんだな、これが、お、お出ましだぞ」
観客の目が舞台に現れた襦袢姿の女性一人に注がれる、先輩達も大きな声をかけて手を叩いている。
ストリップというのは略語だ、正しくはストリップティーズ、ティーズには焦らすという意味がある、ただ股を開いて見せていれば良いというのもではないのだ。
その時はそんな言葉の意味までは知らなかったが、なるほど惹き付けられた。
ゆったりと優雅な踊り……襟足を、胸元を、白い脚を小出しに見せて行く……襟足は背中のラインを、胸元は豊かな乳房を、白い脚はそれに続く繁みを……想像を掻き立てるのだ。
40近いと言えばお袋と大して歳は違わない、しかしお袋が湯上りにバスタオル一枚で扇風機を抱えている光景にはまるで感じない「女」がそこにはいた……。
襦袢をスルリと肩から落とすと腰巻姿、女性特有の柔らかなラインが表れる……「蘭」ちゃんと比べれば太目で全体にうっすらと浮いている脂も感じられるが、それは却って「女」を強調し、豊かな乳房は張りこそ失われつつあるが底なしの柔らかさを思わせる。
上半身裸になってなお、みどりは乳首を露骨に見せはしない、手で覆っているわけではなく体の向きや腕の角度で巧妙に隠すのだ、それゆえ角度によってチラリと見えたりする、それがまたエロティックなのだ、自分だけに見せてくれているような錯覚を覚える。
腰巻から覗く脚も然り、内腿まで露わにするポーズをとりつつ、肝心の部分は見せずに想像を掻き立てるのだ。
そしてみどりは円形舞台に進み出て腰巻をスルリと落とし、初めて観客に全てを露わにした。
全てを露わにしてしまうとみどりは大胆に変る、かぶりつきの客に対して腰を突き出して体を微妙によじらせる……まるで本当にセックスしているかのよう、黒々とした繁みの中から赤い肉がチラリと覗く度にそこへ突進して行きたい衝動に駆られる。
息をつめていた観客がほうっと息をついて舞台が終わり、みどりは再び襦袢を纏った。
「ただいまよりまな板ショーに移ります、ご希望の方は……」
アナウンスが入ると次々に手が挙がる。
「おい、お前も手を挙げろよ」
先輩にうながされるまま、まな板ショーの意味もわからず手を挙げた。
「じゃんけん、ポン」
みどりが声をかける、意味もわからずじゃんけんに参加する羽目になった。
「先輩、これ、なんですか?」
「いいから勝てよ」
「勝てよと言われても……じゃんけんですから」
「それもそうだな……おーい、みどり、こいつを筆下ししてやってくれよ」
先輩が声を張り上げるとみどりの視線がこちらに向いた。
「あら、童貞さんなの?」
「高校出たばっかり、18だ、18」
「先輩!……」
確かにその通り童貞だったが、何も言いふらさなくても……。
「お前な、勝てばみどりとエッチできるんだぞ」
「え?……でも、あの上で?」
「当たり前だよ、ショーだからな」
「先輩、それはちょっと……」
「みどりぐらい良い女に筆下ししてもらえれば男冥利というもんだ、俺も安ソープで筆下ろしするんじゃなかったって後悔してるくらいだよ」
客席は静まってしまっていてそのやり取りは劇場中に聞こえてしまっていた。
「皆さん、よろしいこと? よろしかったら手を下して……」
みどりがそう言うと挙がっていた手はパラパラと下がって行った。
「どうぞ、こちらへ」
みどりにそう言われてもなかなか腰は上がらない。
「おい、何やってんだよ、水を指す気か?」
「そうだよ、据え膳なんだぜ、食わないなら男じゃない」
先輩にそう言われ、観客の視線も集まってしまっている、後には引くに引けない雰囲気に押されて腰を上げさせられた。
少し狼狽しながらも舞台に上がってしまったが、とてもそういう気分ではない、にもかかわらず股間はつっぱってしまっているままだ。
「若いのね、こんなに元気」
「あ……」
みどりに股間を触られ思わず腰を引いてしまった。
「大丈夫よ、あたしがリードしてあげるから……気を楽にしてて」
俺の前に片膝を付いたみどりが見上げて言う……緩くはおっただけの襦袢の胸元から乳房が覗き、白い太腿も露わになっている、それを見せ付けられては怒張が収まる筈もない……俺は覚悟を決めた。
ベルトが解かれ、ファスナーが下げられ……一気にトランクスまでズボンと一緒に下げられてしまった。
「腰、引かないで」
みどりはさっとペニスをおしぼりで包んで隠してくれた。
「恥ずかしがらなくていいわよ、普通より立派よ、それに硬いし、この角度はおじさんたちには保てないわ」
みどりは見上げて微笑みながら囁く、飛びぬけて美人と言うわけではない、しかし男の気持ちを和らげて惹き付ける柔らかな笑顔。
「出したい時に出しちゃっていいわよ」
「早過ぎると恥ずかしいな」
「皆そうだったのよ、大丈夫、二回くらい楽勝でしょ?」
確かにオナニーでは連続射精も可能だが……。
「出しちゃってもすぐにまた硬くしてあげる、それだっておじさんたちには羨ましいことなのよ」
「あ……」
言うが早いか俺のペニスはみどりの唇の中に収められた……。
「おおおお……おおお……」
口の中で俺のペニスは舌で転がされ、翻弄された……。
「出ちゃうよ……」
みどりは俺の腰に掴まる様にして顔を前後に振り始めた、根元まで飲み込まれるとペニスの先は喉まで……。
「ううううっ……」
思わず射精してしまうと、みどりの喉がごくん、と動いた。
「ごめん、口の中に……」
「大丈夫よ、若い人のは生臭くないし……それよりさすがに元気ね、全然しぼまないわ」
「うん……」
「横になって……」
促されるままに横になると襦袢の前を開いて包み込むようにしてみどりに跨られた。
「お……」
「いかがかしら? これが女よ、女の中」
「あったかくてすごく柔らかい……」
「そうなの、それが女よ……」
みどりが腰を使い始める、目の前で揺れる乳房、そしてペニスを包む柔らかい肉……俺の興奮は瞬く間に頂点に達したが、射精したばかりの精巣はまだ精液の製造が間に合わないようだ、みどりは腰を振り続け、俺は女の感触を思う存分味わうことが出来た。
「すごいわ……硬さが全然変らない……ああ……」
みどりがため息とともに天を仰ぐと余裕のない中にも自信らしきものが芽生え、俺は腰を使い始めた。
「そ……そうよ……もっと突き上げて……ああ……」
みどりは両手を俺の横について前屈みになる……俺の目の前には揺れる乳房が……。
「ああああ……あなた、本当に初めて?……すごいわ……感じる……」
肘を曲げ、俺に覆いかぶさって来た、俺はみどりの体を抱きしめた。
「上になって……」
言われるままに体を反転させ、正常位に……。
「膝に肘をかけて……思い切り突き下ろして頂戴」
みどりは自分で膝を上げ、俺が肘をかけやすくしてくれる、俺はみどりを二つ折りにするようにして思い切り突き下ろした……下腹から厚い塊が湧きあがりペニスめがけて進んで来るのがわかる。
「ああああああああああああああ……いいわ……逝く……一緒に来て……」
「うおおおおお…………」
熱い精液が迸り、みどりの中に飛び散った……。
「肘を……」
言われて初めて気が付いた……肘を外すとみどりは俺に抱き付いてきた……みどりの胸は荒い息と共に上下し、乳房がつぶれる柔らかい感触を存分に味わうことが出来た。
「舞台でこんなに感じちゃったの、久しぶり……ありがとう」
みどりは俺の胸をそっと押し戻し、ショーは終わった……。
「やるじゃないか」
先輩に思い切り背中を叩かれた。
「みどり、すげえ喘いでたぜ、フェラじゃすぐ抜かれたけど本番じゃがんばったな」
「出したばかりだったんで」
「それでしぼまないのがすげえよな、羨ましいぜ」
みどりが言っていた通りの事を……。
「あんなに喘いでるみどり、久しぶりに見たよ」
「演技ってことはないですかね」
「違うな、息が荒かったからな、俺が上がった時はあんなには出来なかった」
「先輩も上がったんですか?」
「ああ、こいつも上がったことあるぜ、ははは、俺たちは兄弟分だな」
「ストリップでああいうことまで出来るとは知りませんでした」
「お前、本当に初めてだったのか?」
「先輩がそう叫んでたくせに……口惜しいけどそうですよ」
「素質があるのかもな、それに初めての女がみどりってのも幸運だよな、俺も結構自信つけさせてもらったもんな」
「そうなんですか?」
「ああ、ちょっと年増だけど良い女だよな、みどりのまな板が失敗すること滅多にないもんな、男を上手く持ち上げてくれるからだろうな、だからあの歳になってもトップなんだよ」
「そうかもしれませんね……」
女と言う性を少し理解できたような気がした。
翌日の土曜、一日中みどりと蘭、そして同い年のリリーの事を考え続け、日曜の朝、なけなしの金を握り締めてもう一度劇場に向った。
日曜とは言え第一回目のショーは昼前から始まる、観客はまだまばら……金曜までの俺ならなんとなく気恥ずかしかったのだろうが、まな板に上がりみどりや先輩に褒められた自信なのだろうか、落ち着いてショーを鑑賞することが出来た。
少し落ち着いた目で見ると「蘭」のショーは金曜ほどには魅力的ではない。
スタイルは良いし、踊りも上手い、円形舞台に進み出してからのオナニーショーは金曜の客も見入っていただけあって見せるツボを心得たもの。
しかし、落ち着いて見ればそれほど本物に似ているわけではない、髪型や化粧でごまかしているのが見えてきてしまうとちょっとしらけた気分になってしまった。
逆にリリーのショーには惹かれた。
金曜は終盤からだったのでダンスは見ていなかった、もちろんリリーのダンスはぎこちない、一生懸命振り付けを覚えて間違わないように踊るのが精一杯、と言う感じだ、しかしむしろそこに惹かれる、ストリップも余裕がなく、踊りながらと言うわけには行かない、脱ぐ時は動きがなくなってしまうし、下着を取る時はちょっと息を飲み込んで覚悟を決め、体から無理やり引き剥がすかのよう……年齢にサバを読んではいないようだ。
そして、オープンの時の表情……泣きたいほど恥ずかしいのにそれに耐えている表情に俺は胸を締め付けられたが、その気持地とは裏腹に股間を熱くしてしまった……。
その後の外人のショーには余り興味を惹かれなかった……その間、ずっとリリーのことが気になっていたのだ。
一週間前まで俺と同じ高校生だった彼女がどういう経緯でストリップに出ているのか、どんな高校生活を送っていたのか、そしてこれからどうなっていくのか……頭の中で想像は駆け巡る……。
しかし、みどりのショーが始まると頭の中はみどり一色になってしまう、ショーの構成や振り付けは二日前と全く同じ、それでも惹き付けられる……初体験の相手という事を差し引いてもこの熟女は俺を惹きつけて止まない。
まな板ショーとなっても一回目の公演でまばらな観客から手は挙がらない、俺は上がりたいのは山々だったが二日前に上がったばかり、遠慮して手を挙げなかったのだが、みどりの方から目ざとく目を付けられてウインクされた……そうなれば遠慮はいらない、勇んで舞台に上がるとみどりはそっと抱きついてきて耳元で囁いた。
「うれしいわ、また来てくれたのね、今日もうんと感じさせてね……」
浦和の郊外、畑の中に小規模の鉄工所が点在している中の一軒、従業員は俺を含めて7人の小さな鉄工所だった。
正直、さほど勤労意欲に燃えていたわけではない。
中学、高校を通じて部活に打ち込むではなく、悪さをするわけでもなく、そしてもちろん勉学にいそしむわけでもなく、のんべんだらりと過してきた。
高校の卒業を控え、無論大学受験などするはずもなく、何か取りたい資格があるわけでもないので専門学校にも行く気はない、そう決めたら就職する他はない、勉強は出来ないから基本的に肉体労働、高校では建築学科だったから大工、鉄筋工、鳶などになる友達が多い中、屋外での仕事が比較的少ないという理由だけで選んだ仕事だった。
その年にその鉄鋼所に入ったのは俺一人だけ、随分と久しぶりの採用だったらしく、先輩達は一番若くて28、その次が33、その上となると50代ばかりだった。
28と33の先輩はどちらも独身で気も合うらしく、二人してよく遊んでいた、入社して最初の週末、二人に誘われた俺は二つ返事で応じ夜の街に繰り出した。
夕食を兼ねて居酒屋で一杯、スナックに場所を移してまた一杯。
未成年と言っても酒を飲んだことがないわけではなかったが、さほど慣れてはいない、ビールをジョッキ一杯、水割りを二杯、それですっかり酔っ払ってしまった。
「なんだ、もうグロッキーか? 酒はここまでか、じゃ、趣向を変えるか、付いて来いよ」
そう言われて先輩に連れて行かれたのが『浦和ミュージックホール』だった。
かなり酔っていて劇場に入った時の事はあまり良く憶えていないが、既に始まっていたショーが目に入って来た瞬間、酔いはいっぺんに吹っ飛んで行った。
ステージでは俺とあまり歳が変らないように見える女の子が、既に全裸になって客席にせり出した小さな円形舞台で踊っていた。
「お、初めて見る娘だな、かなり若そうだな」
週末の夜とあってかなり混みあっていた客席の後方の席に座った。
俺の目は舞台に釘づけになった、全裸で踊っている時の股間の繁みにさえ目を見張ったのだが、舞台の縁に腰を降ろした女の子が大きく脚を開いて全てを露わにした時、脳天に電気が走ったような気がした。
「なんだ、ストリップは初めてか?」
そう聞かれたのは憶えているがどう答えたのかは良く憶えていない、しかし女の子の表情は恥ずかしさを堪えるあまりか泣き出しそうだったのは今でも良く憶えている、それほど引き込まれた。
女の子が一礼して舞台から下がるとアナウンスがあった。
「高校を卒業したばかりの18歳、今週デビューしたてのリリーちゃんでした、応援よろしくお願いします……お待ちかね次の踊り娘は……」
高校を卒業したばかり……俺と同じだ。
のんべんだらりと過ごしていても女の子への興味は人一倍あった、一般向けの男性誌に飽き足らずに、少ない小遣いの中から当時出始めたばかりのビニ本などもこっそりと買って、モロに性器が写っている写真などは穴があくほど見ていた。
しかし、工業高校というのは制度上共学でも女子は極端に少ない、スポーツで目立ったわけでなく、勉強も出来ずルックスも人並みの俺ではもてる筈もなかった、もっと積極的に遊び歩いたり暴走族に入ったりしていれば女の子と触れ合う機会もあったのかもしれないがそんな度胸もない、当時の俺としては人類の半分は女性だというのがピンと来ないような境遇にあった。
同年代の女の子というのは通学途中の電車や駅でチラチラと眺めるだけの存在、その制服の下に隠されている体に想像をめぐらす事はしょっちゅうだったが生身の女体を拝んだ事はなかった。
そう言ういわば憧れの女体を生で拝めただけでなく、脚までぱっくりと開いて……俺にとってはカルチャーショックと言ってもよかった。
「へえ、お前と同い年だってよ」
「ホントですかね、サバ読んでたりしないかな」
「ありえなくもないけど、ちゃんとそう見えたぜ」
「確かにそうですね……おい、いいもの見れたな」
先輩たちに声をかけられても上の空だった。
やけにグラマーなコロンビア人、やけに細身のフィリピン人の舞台が続いた後、中途半端な声援を浴びて出てきた踊り子は「内藤 蘭」、アイドルグループの人気者に引っ掛けた芸名である事はすぐにわかる、そして本物には及ばないまでも面差しが似ている中々の美形……本物の方のファンでもあった俺にはまぶしく見えるほどだった……。
流行のディスコ・ミュージックに乗り、華やかな衣装を身につけての激しいダンス、そして衣装の下から現れたまばゆい体、その体に薄布を纏って「見えそうで見えない」男の興味を惹きつけるポージング。
そして円形舞台に進み出た「蘭」ちゃんは薄布をパッと投げ捨て全てを露わにした。
「同級生」の方はただじっと脚を広げているだけだったが、「蘭」ちゃんは舞台が電動で一周する度にポーズを変え、指で広げて見せたりお尻をふって見せたり……見せるツボを心得たテクニックで男たちの歓心を誘う。
そのアイドルの水着姿の写真に向って何度も「飛ばした」ことのある俺にとっては嘘のような光景だった……しかし、股間は痛いほどに硬直し、頭に血が上っていたものの、心の奥で少し嫌な気分もないではなかった、グラビア写真の中のアイドルはその瞬間だけは俺のもの……想像の中でだけだが……しかし舞台で回っている」「蘭」ちゃんは観客全部に彼女の全てを晒してしまっているのだ……目は釘付けになっているものの、ほんの少しだが幻滅も感じていた……。
そんな思いを拭い去ってくれたのはラストを飾る、劇場専属の看板踊り子、『みどり』だった。
先輩達も何度か見たことがあるらしく、みどりの名前がアナウンスされると声援を送り、客席全体のボルテージもぐんと上がる。
「次の人、美人なんですか?」
劇場に入って初めて自分から口をきいた。
「いや、そんなでもないな、歳ももう40近いんだろうな、普通の格好で街を歩いてたらただのおばさんにしか見えないな、きっと」
「でも、さっきの『内藤 蘭』より後に出るんですよね、それに随分と人気があるみたいじゃないですか」
「ああ、見てればわかるさ、なんとも色っぽいんだな、これが、お、お出ましだぞ」
観客の目が舞台に現れた襦袢姿の女性一人に注がれる、先輩達も大きな声をかけて手を叩いている。
ストリップというのは略語だ、正しくはストリップティーズ、ティーズには焦らすという意味がある、ただ股を開いて見せていれば良いというのもではないのだ。
その時はそんな言葉の意味までは知らなかったが、なるほど惹き付けられた。
ゆったりと優雅な踊り……襟足を、胸元を、白い脚を小出しに見せて行く……襟足は背中のラインを、胸元は豊かな乳房を、白い脚はそれに続く繁みを……想像を掻き立てるのだ。
40近いと言えばお袋と大して歳は違わない、しかしお袋が湯上りにバスタオル一枚で扇風機を抱えている光景にはまるで感じない「女」がそこにはいた……。
襦袢をスルリと肩から落とすと腰巻姿、女性特有の柔らかなラインが表れる……「蘭」ちゃんと比べれば太目で全体にうっすらと浮いている脂も感じられるが、それは却って「女」を強調し、豊かな乳房は張りこそ失われつつあるが底なしの柔らかさを思わせる。
上半身裸になってなお、みどりは乳首を露骨に見せはしない、手で覆っているわけではなく体の向きや腕の角度で巧妙に隠すのだ、それゆえ角度によってチラリと見えたりする、それがまたエロティックなのだ、自分だけに見せてくれているような錯覚を覚える。
腰巻から覗く脚も然り、内腿まで露わにするポーズをとりつつ、肝心の部分は見せずに想像を掻き立てるのだ。
そしてみどりは円形舞台に進み出て腰巻をスルリと落とし、初めて観客に全てを露わにした。
全てを露わにしてしまうとみどりは大胆に変る、かぶりつきの客に対して腰を突き出して体を微妙によじらせる……まるで本当にセックスしているかのよう、黒々とした繁みの中から赤い肉がチラリと覗く度にそこへ突進して行きたい衝動に駆られる。
息をつめていた観客がほうっと息をついて舞台が終わり、みどりは再び襦袢を纏った。
「ただいまよりまな板ショーに移ります、ご希望の方は……」
アナウンスが入ると次々に手が挙がる。
「おい、お前も手を挙げろよ」
先輩にうながされるまま、まな板ショーの意味もわからず手を挙げた。
「じゃんけん、ポン」
みどりが声をかける、意味もわからずじゃんけんに参加する羽目になった。
「先輩、これ、なんですか?」
「いいから勝てよ」
「勝てよと言われても……じゃんけんですから」
「それもそうだな……おーい、みどり、こいつを筆下ししてやってくれよ」
先輩が声を張り上げるとみどりの視線がこちらに向いた。
「あら、童貞さんなの?」
「高校出たばっかり、18だ、18」
「先輩!……」
確かにその通り童貞だったが、何も言いふらさなくても……。
「お前な、勝てばみどりとエッチできるんだぞ」
「え?……でも、あの上で?」
「当たり前だよ、ショーだからな」
「先輩、それはちょっと……」
「みどりぐらい良い女に筆下ししてもらえれば男冥利というもんだ、俺も安ソープで筆下ろしするんじゃなかったって後悔してるくらいだよ」
客席は静まってしまっていてそのやり取りは劇場中に聞こえてしまっていた。
「皆さん、よろしいこと? よろしかったら手を下して……」
みどりがそう言うと挙がっていた手はパラパラと下がって行った。
「どうぞ、こちらへ」
みどりにそう言われてもなかなか腰は上がらない。
「おい、何やってんだよ、水を指す気か?」
「そうだよ、据え膳なんだぜ、食わないなら男じゃない」
先輩にそう言われ、観客の視線も集まってしまっている、後には引くに引けない雰囲気に押されて腰を上げさせられた。
少し狼狽しながらも舞台に上がってしまったが、とてもそういう気分ではない、にもかかわらず股間はつっぱってしまっているままだ。
「若いのね、こんなに元気」
「あ……」
みどりに股間を触られ思わず腰を引いてしまった。
「大丈夫よ、あたしがリードしてあげるから……気を楽にしてて」
俺の前に片膝を付いたみどりが見上げて言う……緩くはおっただけの襦袢の胸元から乳房が覗き、白い太腿も露わになっている、それを見せ付けられては怒張が収まる筈もない……俺は覚悟を決めた。
ベルトが解かれ、ファスナーが下げられ……一気にトランクスまでズボンと一緒に下げられてしまった。
「腰、引かないで」
みどりはさっとペニスをおしぼりで包んで隠してくれた。
「恥ずかしがらなくていいわよ、普通より立派よ、それに硬いし、この角度はおじさんたちには保てないわ」
みどりは見上げて微笑みながら囁く、飛びぬけて美人と言うわけではない、しかし男の気持ちを和らげて惹き付ける柔らかな笑顔。
「出したい時に出しちゃっていいわよ」
「早過ぎると恥ずかしいな」
「皆そうだったのよ、大丈夫、二回くらい楽勝でしょ?」
確かにオナニーでは連続射精も可能だが……。
「出しちゃってもすぐにまた硬くしてあげる、それだっておじさんたちには羨ましいことなのよ」
「あ……」
言うが早いか俺のペニスはみどりの唇の中に収められた……。
「おおおお……おおお……」
口の中で俺のペニスは舌で転がされ、翻弄された……。
「出ちゃうよ……」
みどりは俺の腰に掴まる様にして顔を前後に振り始めた、根元まで飲み込まれるとペニスの先は喉まで……。
「ううううっ……」
思わず射精してしまうと、みどりの喉がごくん、と動いた。
「ごめん、口の中に……」
「大丈夫よ、若い人のは生臭くないし……それよりさすがに元気ね、全然しぼまないわ」
「うん……」
「横になって……」
促されるままに横になると襦袢の前を開いて包み込むようにしてみどりに跨られた。
「お……」
「いかがかしら? これが女よ、女の中」
「あったかくてすごく柔らかい……」
「そうなの、それが女よ……」
みどりが腰を使い始める、目の前で揺れる乳房、そしてペニスを包む柔らかい肉……俺の興奮は瞬く間に頂点に達したが、射精したばかりの精巣はまだ精液の製造が間に合わないようだ、みどりは腰を振り続け、俺は女の感触を思う存分味わうことが出来た。
「すごいわ……硬さが全然変らない……ああ……」
みどりがため息とともに天を仰ぐと余裕のない中にも自信らしきものが芽生え、俺は腰を使い始めた。
「そ……そうよ……もっと突き上げて……ああ……」
みどりは両手を俺の横について前屈みになる……俺の目の前には揺れる乳房が……。
「ああああ……あなた、本当に初めて?……すごいわ……感じる……」
肘を曲げ、俺に覆いかぶさって来た、俺はみどりの体を抱きしめた。
「上になって……」
言われるままに体を反転させ、正常位に……。
「膝に肘をかけて……思い切り突き下ろして頂戴」
みどりは自分で膝を上げ、俺が肘をかけやすくしてくれる、俺はみどりを二つ折りにするようにして思い切り突き下ろした……下腹から厚い塊が湧きあがりペニスめがけて進んで来るのがわかる。
「ああああああああああああああ……いいわ……逝く……一緒に来て……」
「うおおおおお…………」
熱い精液が迸り、みどりの中に飛び散った……。
「肘を……」
言われて初めて気が付いた……肘を外すとみどりは俺に抱き付いてきた……みどりの胸は荒い息と共に上下し、乳房がつぶれる柔らかい感触を存分に味わうことが出来た。
「舞台でこんなに感じちゃったの、久しぶり……ありがとう」
みどりは俺の胸をそっと押し戻し、ショーは終わった……。
「やるじゃないか」
先輩に思い切り背中を叩かれた。
「みどり、すげえ喘いでたぜ、フェラじゃすぐ抜かれたけど本番じゃがんばったな」
「出したばかりだったんで」
「それでしぼまないのがすげえよな、羨ましいぜ」
みどりが言っていた通りの事を……。
「あんなに喘いでるみどり、久しぶりに見たよ」
「演技ってことはないですかね」
「違うな、息が荒かったからな、俺が上がった時はあんなには出来なかった」
「先輩も上がったんですか?」
「ああ、こいつも上がったことあるぜ、ははは、俺たちは兄弟分だな」
「ストリップでああいうことまで出来るとは知りませんでした」
「お前、本当に初めてだったのか?」
「先輩がそう叫んでたくせに……口惜しいけどそうですよ」
「素質があるのかもな、それに初めての女がみどりってのも幸運だよな、俺も結構自信つけさせてもらったもんな」
「そうなんですか?」
「ああ、ちょっと年増だけど良い女だよな、みどりのまな板が失敗すること滅多にないもんな、男を上手く持ち上げてくれるからだろうな、だからあの歳になってもトップなんだよ」
「そうかもしれませんね……」
女と言う性を少し理解できたような気がした。
翌日の土曜、一日中みどりと蘭、そして同い年のリリーの事を考え続け、日曜の朝、なけなしの金を握り締めてもう一度劇場に向った。
日曜とは言え第一回目のショーは昼前から始まる、観客はまだまばら……金曜までの俺ならなんとなく気恥ずかしかったのだろうが、まな板に上がりみどりや先輩に褒められた自信なのだろうか、落ち着いてショーを鑑賞することが出来た。
少し落ち着いた目で見ると「蘭」のショーは金曜ほどには魅力的ではない。
スタイルは良いし、踊りも上手い、円形舞台に進み出してからのオナニーショーは金曜の客も見入っていただけあって見せるツボを心得たもの。
しかし、落ち着いて見ればそれほど本物に似ているわけではない、髪型や化粧でごまかしているのが見えてきてしまうとちょっとしらけた気分になってしまった。
逆にリリーのショーには惹かれた。
金曜は終盤からだったのでダンスは見ていなかった、もちろんリリーのダンスはぎこちない、一生懸命振り付けを覚えて間違わないように踊るのが精一杯、と言う感じだ、しかしむしろそこに惹かれる、ストリップも余裕がなく、踊りながらと言うわけには行かない、脱ぐ時は動きがなくなってしまうし、下着を取る時はちょっと息を飲み込んで覚悟を決め、体から無理やり引き剥がすかのよう……年齢にサバを読んではいないようだ。
そして、オープンの時の表情……泣きたいほど恥ずかしいのにそれに耐えている表情に俺は胸を締め付けられたが、その気持地とは裏腹に股間を熱くしてしまった……。
その後の外人のショーには余り興味を惹かれなかった……その間、ずっとリリーのことが気になっていたのだ。
一週間前まで俺と同じ高校生だった彼女がどういう経緯でストリップに出ているのか、どんな高校生活を送っていたのか、そしてこれからどうなっていくのか……頭の中で想像は駆け巡る……。
しかし、みどりのショーが始まると頭の中はみどり一色になってしまう、ショーの構成や振り付けは二日前と全く同じ、それでも惹き付けられる……初体験の相手という事を差し引いてもこの熟女は俺を惹きつけて止まない。
まな板ショーとなっても一回目の公演でまばらな観客から手は挙がらない、俺は上がりたいのは山々だったが二日前に上がったばかり、遠慮して手を挙げなかったのだが、みどりの方から目ざとく目を付けられてウインクされた……そうなれば遠慮はいらない、勇んで舞台に上がるとみどりはそっと抱きついてきて耳元で囁いた。
「うれしいわ、また来てくれたのね、今日もうんと感じさせてね……」